「放射能環境動態・影響評価ネットワーク共同研究拠点」
が始動、研究テーマの公募受付開始
国立大学法人筑波大学 アイソトープ環境動態研究センター(CRiED)、福島大学 環境放射能研究所(IER)、弘前大学 被ばく医療総合研究所(IREM)、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 福島研究開発部門福島環境安全センター(JAEA福島環境安全センター)、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門高度被ばく医療センター福島再生支援研究部(QST福島再生支援研究部)、国立研究開発法人国立環境研究所 福島支部(国環研福島支部)の6つの研究機関は、放射性物質の移行過程の研究解明とその影響を評価するとともに、福島の環境回復の様々な課題の解決に資することを目的とした、機関横断的連携による「放射能環境動態・影響評価ネットワーク共同研究拠点(以下、「共同研究拠点」)」を設置し、文部科学大臣の認定を受け、2019年4月1日から活動を開始することとなりました。
共同研究拠点の取り組みとして、国内外の研究員の受け入れおよび公募を通じて、研究の推進や若手研究者の育成を行うことにより、世界的な環境放射能研究のハブとしての機能を担います。これらの活動を行うために、4月10日より共同研究の公募を開始します。
2011年3月11日の大地震および津波を契機として、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所事故(以下、「原発事故」)が発生し、原子炉施設から放出された放射性物質は、東日本の広域に飛散・沈着しました。原発事故から8年過ぎましたが、放射性物質の河川、湖沼、海洋や、農作物、魚類等への移行過程等についての学問的な課題は依然として残されています。未だに多くの方々が避難生活を余儀なくされていることや、農林水畜産物への風評被害など、福島の環境回復に関する正確な情報発信を継続していく必要性は、むしろ高まっていると考えられ、これらも含め、原発事故の知見を国際的に発信することが、国際社会における我が国の責務であると言えます。
そこで、陸域及び海域、さらには生態系における放射性物質の拡散・輸送・沈着・移行過程を同定し、その実態とメカニズムを解明すること、およびそれに基づいて長期的な汚染状況の予測とその影響の解明に関して、関係機関が横断的に取り組むことにより、学問的な深化や、成果の強力な発信を可能にするため、当該研究を推進してきた主要な6機関が共同研究拠点を形成しました。
共同研究拠点を形成するCRiED、IER、IREM、JAEA福島環境安全センター、QST福島再生支援研究部、及び国環研福島支部は、放射性物質の移行過程研究に関して、各機関それぞれの得意分野を有しています。
CRiEDは大気、水、土砂の移動を総合的に扱い、原発事故由来の放射性物質の今後の環境移行を研究、IERは現場に近いという地の利を生かし様々なフィールド研究を行うとともに、環境・生物・農業分野の総合的研究を、IREMは放射線被ばく医療に関する基礎研究推進と、健康管理や緊急被ばく事故に対応できる専門的人材の育成を、JAEA福島環境安全センターでは森林から河川、貯水池を経由して河口・沿岸に移動する放射性物質の動態調査と、時空間的な変化を数値解析するためのモデル化に関わる研究を、QST福島再生支援研究部においては、環境中の放射性物質の動態や移行パラメーターに関する研究や放射線による環境への影響に関する研究を、国環研福島支部は、森林・河川等への移行と生物・生態系影響評価、大気環境での動態評価等の研究を通じて、被災地の環境回復に向けた取り組みや、地元自治体と連携した復興まちづくりの支援等を行っています。
これらの得意分野を融合させることにより、福島の環境回復に向けた課題解決にあたって、これまでにないシナジー効果を生み出すことが期待されます。
放射能環境動態・影響評価に関する国内・国際共同研究の推進、海外から研究員の受け入れ、IAEA等との連携による海外への情報発信、および公募を通じて若手研究者の育成を行うことにより、世界的な環境放射能研究のハブとして機能させます。具体的には、
(1) 研究テーマの公募
本共同研究拠点が原発事故に係る放射性物質の移行過程研究に関する中核としての機能を果たすため、国内外の研究者を対象として、広く共同利用・共同研究のテーマを公募し、それらの研究を推進します。共同研究の推進を通して、研究者コミュニティや研究ネットワークの形成、各コミュニティ等の発展に貢献します。
(2) 若手研究者育成
放射性物質の移行過程の解明と影響評価に関する研究者を育成するためには、学際的な網羅的・俯瞰的な知見が必要です。そのため、自らの研究を深めるとともに、他分野における研究を体感する必要があり、異なる研究者コミュニティを背景として持つネットワークの各研究機関との共同研究は意義深いものとなります。そこで、特に若手の研究者を育成するため、若手研究者の研究テーマを積極的に採用していきます。
(3) 成果の発信
本共同研究拠点において得られた研究成果については、国内外の論文や学会を通して、広く発信するとともに、福島県の皆様等が参加可能な報告会を開催するなど、より多くの方々に福島の環境回復の現状を理解いただくための取り組みを行います。また、IAEA等の国際機関への情報発信を強化することにより、国際社会に対して正確な理解の促進に努めます。
▼ 研究テーマの公募
本共同研究拠点では、放射能環境動態・影響評価に関する研究テーマを公募します。概要は以下の通りです。
2021年度共同研究テーマの公募開始についてのお知らせ(〆切:2021年2月22日)
●募集要項および申請フォームは以下のERANウェブサイトに掲載しております。
http://www.ied.tsukuba.ac.jp/ernc/entry/