令和7年10月27日、第5回IERセミナーを開催しました <角間研究員、和田教授、トミキフ博士>

日時2025年10月27日(月)13:30~15:00
場所環境放射能研究所本棟6F大会議室/オンライン(Zoom)
発表者角間海七渡研究員(プロジェクト)
和田敏裕教授
エフゲニア・トミキフ博士(ノルウェー生命科学大学、研究者)
(発表順)
演題森林-河川生態系における放射性セシウム移行:淡水魚類と造網性クモからの知見(角間)
広塩性魚をモデルとした魚類の放射性セシウム汚染メカニズムの解明(和田)
原子力緊急事態におけるリスクコミュニケーション: 複雑さを受け入れる(トミキフ)
参加人数33名

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

10月27日(月)に開催した令和7年度の第5回IERセミナーでは、まずIERの角間海七渡研究員、和田敏裕教授による発表が行われました。また、F-REI国際シンポジウム参加のために来日中のエフゲニア・トミキフ博士をお招きして発表いただきました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら33名が参加しました。

角間研究員は、森林-河川生態系における放射性セシウムの移行過程について発表しました。福島第一原子力発電所事故後の森林および河川域で採取した淡水魚や造網性クモを対象に、放射性セシウム濃度の測定、安定同位体比分析、DNAメタバーコーディングを組み合わせ、陸域と水域をつなぐ生態系間の物質移動が放射性物質の動態に与える影響を明らかにしました。森林由来の餌資源が魚の汚染を高めること、また河畔域のクモが河川環境の汚染を反映することを示しました。

和田教授は、ヌマガレイの飼育試験の結果をもとに、異なる塩分条件下(淡水、汽水、海水)における魚類の放射性セシウムの取込と排出について発表しました。一連の飼育試験の結果、餌からの137Csの取込は、淡水と汽水で海水に比べて早い一方、水からの137Csの取込は海水で早いことを明らかにしました。137Csの排出は、海水で早いことも明らかにしました。これらの生理的背景が、原発事故後の淡水魚と海水魚の137Cs動態に大きく影響を及ぼしていることを説明しました。

トミキフ博士は、放射線リスクは生物学的影響にとどまらず、経済的・社会的・倫理的側面を含む複雑な問題であると指摘しました。リスク認知は、不本意性や制御不能性などの心理的要因と、組織への信頼や過去の危機対応経験などの社会的要因に影響されます。効果的なリスク管理には、専門家による一方的な説明ではなく、市民との継続的な対話と相互理解に基づく参加型コミュニケーションが不可欠であると強調しました。

各発表後には、参加者からさまざまな質問やコメントが挙がりました。

角間研究員が発表している様子
和田教授が発表している様子
トミキフ博士が発表している様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子