令和7年10月20日、第4回IERセミナーを開催しました <大学院生>

日時2025年10月20日(月)13:30~15:00
場所環境放射能研究所本棟6F大会議室/オンライン(Zoom)
発表者星笙太(共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻 博士前期課程2年)
益子惇(共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻 博士前期課程2年)
鈴木信弘(共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻 博士後期課程3年)
(発表順)
演題ヤマメの137Cs濃度と食性の季節変動:2河川の周年調査による解明(星)
河川河口域から中流域におけるニホンウナギの137Cs濃度に影響を及ぼす環境要因の評価(益子)
増水時の阿武隈川における懸濁態137Csの濃度変化(鈴木)
参加人数21名

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

10月20日(月)に開催した令和7年度の第4回IERセミナーでは、環境放射能学専攻の博士前期課程2年生2名と博士後期課程3年生1名が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら21名が参加しました。

和田研究室の星さんは、ヤマメの食性と137Cs濃度の季節変動について、請戸川水系の2河川で実施した季節別の周年調査の結果を発表しました。ヤマメを採捕し、胃内容物の分類と137Cs濃度を測定した結果、主な餌生物は夏秋では陸生昆虫、冬春では水生昆虫でした。魚体の137Cs濃度は小出谷川に比べて大柿下で高く、両河川ともに夏~秋に上昇し、秋~春に低下し、春~夏に再上昇する共通パターンを示し、食性変化が濃度変動に関与していることが示唆されました。

和田研究室の益子さんは、河川河口域から中流域におけるニホンウナギの137Cs濃度に影響を及ぼす環境要因の評価について発表しました。本種の持つ広塩性や定位性などの生態特性は、環境の指標種となることが言われています。したがって、本種を指標種として、水や河床堆積物、付着藻類などの環境要因からの137Csの魚類への移行を評価しました。結果として、河川の汚染度を表す河床堆積物の137Cs濃度、河川生態系の栄養源となる付着藻類の137Cs濃度が本種の137Cs濃度に影響を及ぼしていることが示唆されました。

脇山研究室の鈴木さんは、増水時の阿武隈川における懸濁態137Csの濃度変化について発表しました。阿武隈川上の5地点で、懸濁物質の137Cs濃度・窒素安定同位体比(δ15N)・重金属類との比較を行いました。森林面積率が高いほど137Cs濃度が低くなる傾向が見られ、δ15Nとの関係から、農地・都市域起源の懸濁物質が多いほど137Cs濃度が高くなる傾向が示唆されました。これは、浜通り河川と対照的で、両地域の懸濁態137Csの濃度変動要因に差異がある事が考えられます。重金属類は、各地点におけるPb含量平均値が都市面積率及び137Cs濃度と正の相関を示す地点が見られた事から、都市域起源の懸濁物質の流出寄与率を評価するトレーサーとなりうる事が示唆されました。

各発表後には、参加者からさまざまな質問やコメントが挙がりました。

星さんが発表している様子
益子さんが発表している様子
鈴木さんが発表している様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子