令和7年10月6日、第3回IERセミナーを開催しました <大学院生、コルニヨン外国人客員研究者>

日時2025年10月6日(月)13:30~15:00
場所環境放射能研究所本棟6F大会議室/オンライン(Zoom)
発表者菅野遥登(共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻 博士前期課程2年)
吉田旭(共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻 博士前期課程2年)
アマリス・コルニヨン外国人客員研究者
(発表順)
演題海域~河川を行き来する部分回遊魚スズキの移動生態と放射性セシウム取込経路の解明(菅野)
大気輸送モデルを用いた東アジア域におけるRn-222の輸送メカニズム解明のための研究(吉田)
再生可能エネルギーに向けて:震災後の福島における地域のエネルギー移行のケーススタディ(コルニヨン)
参加人数22名

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

10月6日(月)に開催した令和7年度の第3回IERセミナーでは、環境放射能学専攻博士前期課程2年生2名とアマリス・コルニヨン外国人客員研究者が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら22名が参加しました。

和田研究室の菅野さんは、スズキの部分回遊生態と137Csの関係について発表しました。セミナーでは、いわき沖で85.5 Bq/kgが検出されたスズキを例に、耳石Sr/Ca・安定同位体・137Csを統合解析して移動履歴と採餌起源を評価しました。スズキにおいては稚魚期に汽水・河川利用を行うことで137Csが蓄積しやすくなりますが、稚魚期に河川を利用した個体であっても成長に伴い沿岸域を使うため、成魚期には137Csの濃度が下がることが報告されました。

平尾研究室の吉田さんは、「大気輸送モデルを用いた東アジア域におけるRn-222の輸送メカニズム解明のための研究」について発表しました。本研究には理研が開発している大気輸送モデルSCALE-RMを用い、得られた計算値について観測値や航空機モニタリングによって得られた先行研究の推定値との比較結果について報告しました。その結果、地表付近のRn-222濃度の時間変化について計算値は観測値と似た挙動を示した一方、上空のRn-222壊変生成物濃度については、計算値が推定値よりも低いことを示しました。これらの結果から、用いた大気輸送モデルは地表付近のRn-222濃度変動を再現できる一方で、上空での計算値、推定値ともに不確かさを持っており、引き続き検証が必要であることが示唆されました。

コルニヨン外国人客員研究者は、ご自身の研究の指針となる理論的枠組みを提示しました。彼のプロジェクトは、いくつかの重要なケーススタディを通じて、特定の地域状況における再生可能エネルギーへの移行について理解を深めることを目指しています。そのため、彼の研究は産業生態学や地域生態学、エネルギー人類学から着想を得た理論的枠組みを基盤としています。この学際的な枠組みの中で、地域は人間同士、人間と非人間、非人間同士の関わりと流れから成る代謝システムであると考えられています。エネルギー(電気を含む)は、一次的ニーズを満たし、暖房や照明といった付随する活動を支えることによって、この代謝の機能を維持しています。今回の発表では、福島市の吾妻山にある太陽光発電所と浪江町にあるFH2R複合施設(福島水素エネルギー研究フィールド)という2つのプロジェクトの代謝分析を通じて、このような論点が取り上げられました。

各発表後には、参加者からさまざまな質問やコメントが挙がりました。

菅野さんが発表している様子
吉田さんが発表している様子
コルニヨン外国人客員研究者が発表している様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子