令和5年11月27日  第6回IERセミナーを開催しました。<辰野研究員、金指研究員、難波所長>

日時2023年11月27日(月) 13:30~15:00
場所環境放射能研究所本棟6F大会議室/オンライン(Zoom)
発表者辰野宇大 プロジェクト研究員
金指努 プロジェクト研究員
難波謙二 所長
(発表順)
演題・土壌環境における高濃度放射性セシウム含有微粒子の分布(辰野)
・森林から渓流への放射性セシウム輸送:落葉、水生昆虫およびその排泄物の関係(金指)
・人新世、環境、環境放射能(難波)

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

1127日(月)に開催した令和5年度の第6IERセミナーでは、辰野宇大プロジェクト研究員、金指努プロジェクト研究員、難波謙二所長が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら25名が参加しました。

辰野研究員は、福島県内で採取した土壌における高濃度放射性セシウム含有微粒子について,土壌深さ方向および谷間地形の斜面における分布の調査結果を発表しました

金指研究員は、森林生態系から渓流生態系への放射性セシウムの移動に関して、生物的な関与について研究しています。今回の発表では、森林から渓流に落下し、堆積した落葉リターを、水生昆虫のカクツツトビケラ科幼虫が食べることにより、落葉から水生昆虫へ、そして水生昆虫が排泄する微細有機物へと放射性セシウムが移動するプロセスを発表しました

難波所長は、新たに提唱されている人新世という地質時代区分について発表しました。そもそも地質時代は絶滅を伴う生物相の変化など地層に化石などとして残され現在も将来も読み取れる過去の変化をもとに設定されます。ヒトによる農耕の開始、産業革命後の化石燃料の使用拡大等に起因して起きる変化も地層から読み取れますが、特に1950年以降は世界の人口の急激な増加、化学肥料の使用、プラスチックの生産等が急激に拡大した「大加速」と言われる時代です。これらの変化は地球上の物質循環にも変化をもたらしています。地質時代区分にはKey site模式地が指定されますが、このような変化が顕著に記録された場所として日本からは別府湾が提案されていました。国際地質科学連合(IUGS)ではカナダのトロントとグエルフの間の生物圏保護区内にあるクローフォード湖という2.4ha最深部24mの湖を2023年夏に選定したようです。環境中の放射能や同位体を対象とした研究から物質循環の変化や古環境を知ることができる可能性があります。また、SDGsに掲げられるようなヒトが暮らせる環境を維持するという観点でも貢献できる研究があると思います。

各発表後には、IER教授陣から様々な質問やコメントが挙がりました。

辰野研究員が発表している様子
金指研究員が発表している様子
難波所長が発表している様子