帰還困難区域でアカネズミの試料採取・調査を行いました。

令和4年8月30日、石庭寛子特任講師が帰還困難区域にてアカネズミ試料採取・調査を行いました。

石庭特任講師は、主にげっ歯類(ネズミのなかま)など野生動物を対象に、放射線被ばくの影響について研究を行っています。今回調査対象としたアカネズミは日本の固有種で、北海道から九州まで広く生息しています。福島第一原発事故による避難指示区域は縮小しつつありますが、放射線への不安は払しょくしきれません。帰還困難区域に生息するこうした野生動物を調査することで、人への影響リスクを予測したり、判断基準を提供することができます。

なお試料採取・調査は共同研究機関の協力のもと、自治体・土地所有者の許可を得て実施されました。

調査地に到着したら、はじめにネズミを捕獲するためのわなを準備します。ネズミをおびき寄せるためわなの中に用意するえさは、ひまわりのタネなどを使用することもあるそうですが、今回は小さく切った食パンをピーナッツバターで炒めたものを使用しました。

わなにえさを入れている様子。

わなを仕掛ける際は、各場所の環境の特徴として放射線量を計測・記録します。記録した放射線量から各場所の平均値を算出します。
調査地は平たんな場所もあれば、道がないようなとても険しい山道を歩くこともありましたが、小雨で涼しい気温の中、共同研究者と分担しながら効率よく作業は進められました。
帰還困難区域内の数か所にわなを設置し、この日の作業は終了です。

石庭特任講師がわなを仕掛けている様子。
放射線量を計測している様子。

ネズミは夜行性であるため、夜間に活動して罠に入ります。そのため捕獲状況の確認は、翌日に行います。ネズミがかかっているかを確認しながらわなを回収し、研究所にて解剖を行いました。

回収してきたわな。ピンクの札にはわなの設置場所が記録されている。

解剖は体長・足の大きさ・体重・各部位の重さなど様々な計測を行いながら進められ、採取されたサンプル(各部位や血液)は、冷凍やホルマリン漬けなど今後の解析に適した方法で保存します。今後、各サンプルは放射性セシウムの蓄積や放射線被ばくによる影響を調べるためのDNA解析などに使用されます。

体長を計測している様子。
記録用の撮影の様子。

石庭特任講師のアカネズミ試料採取・解剖をご紹介しました。
今後、他の先生方の研究や調査の様子なども紹介していきます。