ナイジェリアの持続可能エネルギーの未来: NECAL 2050による低炭素パスウェイのシミュレーション
研究員(プロジェクト)ムヨワ・マイケル・オロスン
発表概要
本研究では、NECAL 2050モデルを用いて、ナイジェリアにおける7つの異なるエネルギーシナリオを分析しました。分析対象は、現状維持のシナリオから野心的な低炭素戦略まで多岐にわたります。研究の結果、シナリオ2とシナリオ4が最適なパスウェイであることが特定されました。これらは、高比率の再生可能エネルギー、広範なエネルギー効率化対策、持続可能なバイオエネルギー利用を組み合わせ、最小限から中程度の原子力統合を実現するものです。これらのシナリオは、現在の推移と比較して温室効果ガス排出量が54~55%削減され、有害大気汚染物質が75~76%削減されるという顕著な成果を示しました。
本研究結果は、ナイジェリアがパリ協定のコミットメントを履行しつつ、エネルギーアクセスを拡大し、経済発展を推進するためのエビデンスに基づくロードマップを提供します。本研究は、単一のエネルギー源に依存するのではなく、再生可能エネルギーとエネルギー効率化を優先する多角的戦略が成功の鍵であることを強調しています。また本研究は、政策立案者にとって重要な知見を提供するとともに、日本などの国際的パートナーが技術移転やクリーンエネルギーインフラへの投資を通じてナイジェリアのエネルギー移行を支援する重要な機会を際立たせています。これにより、最終的にナイジェリアはアフリカにおける持続可能エネルギー開発のリーダーとしての地位を確立する可能性があります。
本研究の意義
本研究は、ナイジェリアが抱えるエネルギー貧困と気候変動という二重の危機を克服するためのエビデンスに基づく重要なロードマップを提供するものであり、再生可能エネルギー、エネルギー効率化、バイオエネルギーをバランスよく組み合わせた戦略により、温室効果ガス排出量を50%以上削減し、致命的な大気汚染を大幅に低減できることを示しています。また本研究は、ナイジェリアにとどまらず、グローバルサウス諸国が持続可能な成長を実現するためには、特定の技術への依存ではなく統合的戦略が不可欠であることを強調しており、強靭なエネルギーの未来構築に向けた国際的支援と技術移転の重要性も示しています。
主要用語
- NECAL 2050 – Nigeria Energy Calculator (ナイジェリア・エネルギー・カリキュレーター) 2050の略称。UK 2050 Calculatorを基に開発された中核的シミュレーションモデル。
- 持続可能エネルギー – 手頃な価格で、信頼性が高く、環境に優しいエネルギーへのアクセスを確保すること。
- 気候変動/パリ協定 – 温室効果ガス排出量の削減(無条件で20%、条件付きで47%)のためにナイジェリアが準拠している国際的な枠組み。
- 温室効果ガス(GHG)排出量 – CO₂e(二酸化炭素換算量)として定量化される。
- 低炭素パスウェイ – 再生可能エネルギー、エネルギー効率化、バイオエネルギー、原子力の選択肢を通じて温室効果ガス排出量を削減するシナリオ。
- モデル化されたシナリオ
- 基準シナリオ: 現状維持、化石燃料の比率が高い
- シナリオ1: 再生可能エネルギーと原子力の比率が高く、エネルギー効率化の比率は中程度
- シナリオ2: 再生可能エネルギー、エネルギー効率化、バイオエネルギーの比率が非常に高く、原子力の比率は低い
- シナリオ3: 再生可能エネルギー、原子力、バイオエネルギー、エネルギー効率化をバランスよく組み合わせる
- シナリオ4: 再生可能エネルギーとエネルギー効率化の比率が非常に高く、原子力の比率は中程度
- シナリオ5: 再生可能エネルギーの比率は中程度、原子力の比率は低い
- シナリオ6: 原子力の比率が高く、再生可能エネルギーとエネルギー効率化の比率は低い
図表


論文情報
論文はシュプリンガー社が発行する学術誌Environment, Development and Sustainabilityに2025年9月5日にオンライン公開されています。
雑誌名 | Environment, Development and Sustainability |
---|---|
論文タイトル | Nigeria’s sustainable energy future: NECAL 2050 simulations of low carbon pathways |
URL | https://doi.org/10.1007/s10668-025-06687-2 |
著者 | Suleiman Bello1 and Muyiwa Michael Orosun2* 1Department of Physics, Umaru Musa Yar’adua University Katsina. 2福島大学環境放射能研究所、福島、日本 *責任著者: Orosun. M. M. (r466@ipc.fukushima-u.ac.jp) |