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IER活動記

令和元年度

令和2年2月7日(金) IERセミナーを開催しました。

日 時 令和2年2月7日(金)

環境放射能研究所(IER)では、所属教員による研究成果報告会を「IERセミナー」として定期的に行っています。今年度6回目となる今回のIERセミナーは、2019年度に入学した院生8名(共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻1年)による発表が行われました。

院生はそれぞれが設定した課題における、これまでの研究成果について英語による口頭発表を行いました。発表後には、指導教員だけではなく、他分野の研究者や学生からの意見も多く出されました。院生のみなさんはこのセミナーで得られたコメントを受けて、今後の研究計画について熟考している様子でした。

それぞれの研究課題は下記に記載します。

演題 “Accumlation of radioceaesium in bryophytes”(大槻知恵子)

“Internal exposure of the residents in cancelled evacuation-zone by self-consumed crops”(菊池美保子)

“Detection of 60Co released from the 2011 Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident”(沖澤悠輔)

“Studies on the effective dose for public based on air dose rate”(遠藤佑哉)

“Temporal variation in 137Cs in the Niida river catchment during rainstorm events”(新井田拓也)

“Evaluation of Vegetation Index in Abukuma River Basin for Estimation of soil erosion”(イデア ロア)

“Seasonal fluctuation of Cs-137 concentration and water quality in Abukuma river revealed by long-term monitorning”(森高祥太)

“Radiocesium concentration s in experimentally cultured carp, other fish, and sediments of an irrigation pond in Koriyama City”(薄実咲)



学生、教員間の熱心な意見交換が行われた。

令和2年1月31日 二本松市で第13回研究活動懇談会を行いました。

令和2年1月31日(金)二本松市にて、研究活動懇談会を開催しました。この懇談会は、研究成果を地域に還元するために2016年より定期的に開催しているもので、当研究所にとって重要な活動です。

詳しくはこちらをご覧ください。

令和2年1月24日 京都で第12回研究活動懇談会を行いました。

令和2年1月24日(金)京都大学にて、研究活動懇談会を開催しました。この懇談会は、研究成果を地域に還元するために2016年より定期的に開催しているもので、当研究所にとって重要な活動です。

詳しくはこちらをご覧ください。

令和元年12月26日(木) IERセミナーを開催しました。

日 時 令和元年12月26日(木)
発表者 塚田祥文 所長
イスマイル ラハマン 准教授
石庭寛子 特任助教
ヴァシル ヨシェンコ 特任教授
演題 1)Activity concentrations of 137Cs in irrigation water and pore water collected from experimental paddy field in Okuma and related factors.(塚田)

2)Study of Ex-situ Remediation of Radionuclide Contaminated Matrix(イスマイル)

3)Biodosimetry Dose estimation of wild animals(石庭)

4)Progress in our forest studies in Fukushima and Chernobyl(ヨシェンコ)                           

環境放射能研究所(IER)では、所属教員による研究成果報告会を「IERセミナー」として定期的に行っています。これは所属教員同士の交流、研究内容の研鑽を目的に開催するもので、今年度5回目となる今回のIERセミナーは、塚田祥文所長、イスマイル ラハマン准教授、石庭寛子特任助教、ヴァシル ヨシェンコ特任教授の4名による発表が行われ、26名の参加がありました。

存在形態分野の研究を行う塚田所長とイスマイル准教授は、化学的な視点からそれぞれの知見を発表しました。放射性セシウムが他の物質に吸着する、あるいは液体中へ溶解する現象が活発に起こる条件などについて説明し、参加した研究者からは、この分野における分析手法が他分野の研究において適応される可能性等についての質問がありました。石庭特任助教は、帰還困難区域における長期的な低線量被ばくがイノシシやアカネズミに及ぼす影響について発表しました。この内容の一部は「放射線汚染地域で生きる野生動物の現状」として、12月14日(土)に開催された福島大学研究・地域連携成果報告会でも報告を行っています。ヨシェンコ特任教授は、今年度新たに開始した2件の二国間共同研究において行っている森林中の放射性セシウムの動態等に関する研究成果を発表しました。


(写真左)塚田所長(写真右)イスマイル准教授


(写真左)石庭特任助教(写真右)ヨシェンコ特任教授

令和元年12月5日(木) IERセミナーを開催しました。

日 時 令和元年12月5日(木)
発表者 金指 努 プロジェクト研究員
高瀬つぎ子 特任准教授
マーク ジェレズニヤク 特任教授
演題 1)Radiocesium transfer from riparian forest to headwater stream ecosystem(金指)

2)Interaction of radiation and materials: Application of gamma-ray detector(高瀬)

3)Distributed modeling of radionuclide transport in watershed – river systems of Chernobyl and Fukushima regions(マーク)
                          

環境放射能研究所(IER)では、所属教員による研究成果報告会を「IERセミナー」として定期的に行っています。これは所属教員同士の交流、研究内容の研鑽を目的に開催するもので、今年度4回目となる今回のIERセミナーは、金指努プロジェクト研究員、高瀬つぎ子准教授、マーク ジェレズニヤク特任教授の3名による発表が行われ、18名の参加がありました。

9月にIERに着任した金指研究員は森林や渓流域の生態系内における放射性セシウムの移動を研究しており、今回のセミナー発表では、自身のこれまでの研究について話し、さらに今後のSATREPSプロジェクトにおける研究計画にも触れました。高瀬准教授は、今年度入学した大学院生への教育的な視点から自身の研究概要を説明し、マーク特任教授は、12月にアメリカで開催される国際学会で報告を予定しているSATREPSプロジェクトの研究成果を中心に話しました。


(写真左)金指プロジェクト研究員(写真右)高瀬特任准教授


(写真)ジェレズニヤク特任教授

令和元年11月29日(金) IER特別セミナーを開催しました。

日 時 令和元年11月29日(金)
発表者 マルクス グジェシュニック氏(オーストラリア放射線防護・原子力安全庁)
演題 Environmental Radiation Protection in Australia - An ARPANSA perspective                           

オーストラリアの国家機関であるオーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA)のマルクス グジェシュニック氏が環境放射能研究所(IER)に来所しました。ARPANSAは放射線防護や原子力の安全な使用に関する研究を行うオーストラリアの政府機関で、マルクス氏は、モニタリングや緊急時対応に関する研究を管轄する部門の長を務めています。来所に併せてIER特別セミナーを開催し、16名の参加がありました。

冒頭、オーストラリアでの環境問題に取り組む国の組織体制や活動についての紹介があり、その上で、これまでにオーストラリアが抱えてきた放射能による諸問題や、それらが人体や環境に与えうる影響を解明するためのARPANSAの取り組みなどが話されました。参加した研究者らは、2011年に福島で事故が起きた際のオーストラリアでの影響について質問し、マルカス氏からは、食物などに科学的な問題がなかったことが説明されました。


講演を行うマルクス氏

令和元年11月26日(火) IER特別セミナーを開催しました。

日 時 令和元年11月26日(火)
発表者 青山道夫 客員教授(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)
津旨大輔 上席研究員 (電力中央研究所)
内山雄介 教授(神戸大学)
イーゴル ボロシェンコ 副所長(ウクライナ科学アカデミー計算機計算システム研究所)
立田 穣 特別嘱託研究員(電力中央研究所)
和田敏裕 准教授(福島大学環境放射能研究所)
脇山義史 講師(福島大学環境放射能研究所)
演題 1)Mass balance and latest fluxes of radiocaesium derived from Fukushima accident in the western North Pacific Ocean and coastal regions of Japan.(青山)

2)Impacts of direct release and river discharge on oceanic 137Cs derived from the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident.(津旨)

3)Nearshore transport of suspended radiocesium in the Fukushima coast derived from Niida River during Typhoon Wipha in fall 2013.(内山)

4)Lagrangian modeling of the radionuclide transport in marine environment”(ボロシェンコ)

5)Reconstruction of radiocesium level in sediment off Fukushima: Simulation analysis of bioavailability using parameter derived from observed 137Cs concentrations.(立田)

6)Radiocesium contamination of fish in river and pond environments near the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant.(和田)

7)Temporal variations in 137Cs concentration in river waters under high-flow conditions.(脇山)

IER特別セミナー「A lagrangian model analysis of spatiotemporal particle behavior for radiocesium and marine food chain transfer –ラグランジュモデルによる放射性セシウム粒子時空間分布解析と海洋食物連鎖寄与の解明-」を開催しました。一般社団法人電力中央研究所(CRIEPI)との共同で企画されたこの特別セミナーでは、CRIEPIが日本に招へい中のイーゴル ボロシェンコ副所長(ウクライナ科学アカデミー計算機計算システム研究所:NASU)を含む、7名の研究者が発表を行いました。環境放射能学専攻の学生の講義の一環にもなった本会には、大学院生やIER、他研究機関の研究者ら25名が参加しました。

メインタイトルに含まれる「ラグランジュモデル」とは、粒子や流体の動きを数値計算で再現することで、動態予測を行うモデリング分野における重要な手法のひとつとなっています。ボロシェンコ副所長からはその内容について講演があったほか、海洋や河川の水の動きやその中に含まれる放射性物質の移動について、それぞれの研究分野における発表が行われました。実地観測による動態解析から、モデル構築による今後の予測に至るまでの多様なテーマが取り上げられ、全体を通してそれぞれの研究分野を超えた横断的な意見交換が行われていました。


多くの研究者が参加し、活発な意見交換が行われた。

令和元年11月7日(木) IERセミナーを開催しました。

日 時 令和元年11月7日(木)
発表者 ミハエル コミサロフ 氏(Ufa Institute of Biology of the Russian academy of science)
アレクセイ コノプリョフ 教授
平尾茂一 講師
演題 1)Soil erosion researches in various lands.(ミハエル)

2)Long-term dynamics of radionuclides in rivers and lakes: Fukushima and Chernobyl. Progress of ongoing projects.(アレクセイ)

3)Investigation of Tritium behavior in Okuma.(平尾)
                          

環境放射能研究所(IER)では、所属教員による研究成果報告会を「IERセミナー」として定期的に行っています。これは所属教員同士の交流、研究内容の研鑽を目的に開催するもので、3回目となる今回のIERセミナーは、アレクセイ コノプリョフ教授、平尾茂一講師の所属教員2名と、ロシアから来日中のミハエル コミサロフ氏の3名の発表が行われ、23名の参加がありました。

アレクセイ教授の招へいによって来日したミハエル コミサロフ氏は、雪解け水や農業用灌水などによって起こる土壌の浸食作用の研究を行っています。セミナーでは、ロシアやオーストリア、そして日本で行ってきた研究の内容を発表しました。IERの教員2名の発表のうち、アレクセイ教授は、外部資金を得て行っている採択課題、主にはチェルノブイリと福島の原発事故が河川中に与える影響の比較研究について報告を行いました。続く平尾講師は、福島の原発事故から放出された様々な放射性核種の中でもトリチウムに焦点をあて、その環境動態を明らかにする研究の経過報告を行いました。


(写真左)ミハエル氏 (写真右)コノプレフ教授


(写真左)平尾講師(写真右)コノプレフ教授の進行のもと、セミナーは行われた。

令和元年10月25日(金)
オーストラリアのジャーナリストがIERの活動を取材しました。

オーストラリアに拠点を置く映像制作会社AESA filmsの撮影チームが、取材のため環境放射能研究所(IER)に来所しました。彼らはチェルノブイリと福島で起こった二つの大規模な原発事故を比較しながら、それらの事故が地域に何をもたらし、人々がどう対処してきたのかという視点で、両国での取材に基づいたドキュメンタリー番組を制作しています。

自身も科学者としての経歴を持つプロデューサーのアレン ドブロボルスキー氏は、約2週間の滞在期間中、野外調査をはじめとした研究活動への同行やIERセミナーへの参加など研究現場に密着した取材を通じて各研究者に対し熱心な聞き取りをされました。アレン氏をはじめ、今回来日した3名の撮影チームは全員がウクライナ出身者でもあり、彼らが福島の現状をどのように見たのか、作品の完成が期待されます。

AESA filmsについての詳細はこちら。(英語)


(写真左)ナスビット氏来日の際の各機関への視察にも同行しました。
(写真右)研究室でのインタビューに応じる和田准教授(左)とアレン氏一行。


(写真左)高田特任准教授のサンプリング同行の様子。
(写真右)富岡町の防波堤にて。ここから見える海岸線に感嘆していました。


(写真左)アレクセイ教授へのインタビュー。帰還困難区域内の調査にも同行しています。
(写真右)許可を得て、ドローンでの空撮も行っています。

令和元年10月18-23日(水)
ウクライナ立入禁止区域庁前副長官オレグ ナスビット氏が来日しました。【2】

■10月18日 浪江町、双葉町、大熊町訪問

浪江町、双葉町、大熊町の視察研修では、震災直後の避難状況やその後の町民の避難生活への対応、さらに避難指示解除後の町の役割や新しい産業などについて、各町の動きを伺いました。

浪江町では佐藤副町長から、震災当時、避難指示が出たために津波による行方不明者の捜索ができなくなった、つまり原発事故がなければ救えた命があったこと、その後の町民の避難先の把握にご苦労されたことなど、多くの困難があったことを伺いました。現在の居住者は震災前の6%ですが、11.8%の町民が帰還を希望しているとのアンケート結果を踏まえ、インフラ整備や原発に依存しないまちづくりを進めているそうです。ようやく帰還と復興が始まる段階に入り継続的な支援が必要そうです。 双葉町では住民生活課の中里課長補佐からご案内をいただきました。国道6号線東側にある中野地区は避難指示解除準備区域で、復興産業拠点の整備が進められていて地元企業の立地も予定されているそうです。次に6号線西側の帰還困難区域に入りJR双葉駅前に移動しました。この一帯は「特定復興再生拠点区域」で除染や解体が進行中です。今年度末の双葉駅再開に伴い周辺の立入が可能になるとともに、駅から6号線を横切り、中野地区に至る道が避難指示解除になる計画とのことです。 大熊町では石田副町長から、地震直後からの国や東電とのやり取りをはじめ、町役場の対応を話していただき、当時の緊迫感とともに、混乱の中、避難せざるを得なかった様子が伝わってきました。まちづくり計画では、放射線量が低い大川原地区に町営住宅等の整備が進んでいて、さらに大野駅前地区も特定復興再生拠点地域の制度の中で、廃炉作業関連エリアと位置づけて整備を進める計画とのことでした。帰りたいと思ったときに帰れるのが重要だと、帰還を促進していきたい考えを伺いました。

浪江町、双葉町、大熊町ともナスビット氏の訪問に丁寧かつ友好的に対応してくださいました。ナスビット氏もチェルノブイリ事故と重なることがあったようで、今後も続く友好を願う思いのこもったコメントや熱心な質問をされていました。


(写真左)浪江町佐藤良樹副町長にウクライナからの記念品を贈呈
(写真右)中里重勝住民生活課長補佐(左)のご案内で双葉駅周辺を視察


大熊町石田仁副町長にウクライナからの記念品を贈呈

■10月23日 京都大学にてセミナー開催

京都大学複合原子力科学研究所の今中哲二先生、大槻勤先生のお取り計らいで、京都大学でのセミナーが実現し、関連分野を研究する先生方や学生のみなさんに参加いただきました。ナスビット氏からはチェルノブイリ原発事故の被害や現在建設中の原発建屋を覆う建物等について、また同行した当研究所のジェレズニヤク教授からは福島原発事故との比較について説明がされました。 参加者からは様々な質問が飛び出し、「今後の福島を考えるうえで非常に参考になる話を聞くことができた」との意見もありました。

滞在中は上記のほかに、10月21日には福島第一原発の視察も行いました。ナスビット氏には引き続きSATREPSプロジェクトのコーディネーターとして本プロジェクトに協力いただき、SAUEZMに対し有効な提言を示せるようプロジェクトを推進していきます。


(写真左)今中博士より紹介を受けるナスビット氏(写真右)講演を行うナスビット氏

令和元年10月17日(水)
ウクライナ立入禁止区域庁前副長官オレグ ナスビット氏が来日しました。【1】

令和元年10月16日~24日、ウクライナ立入禁止区域庁(SAUEZM)前副長官のオレグ ナスビット氏が来日されました。SAUEZMは当研究所(IER)が中心となり実施しているSATREPSプロジェクト(http://www.ier.fukushima-u.ac.jp/satreps/)のカウンターパートで、本プロジェクトでは研究結果を活かし、今後の立入禁止区域(チェルノブイリ原発事故により立ち入り禁止となった地域)の活用についてSAUEZMに対し提言をすることも課題のひとつとしています。今回の来日でナスビット氏は県内各地のほか京都も訪問され充実したプログラムとなりましたので、その様子を報告します。

■10月17日 福島県環境創造センターおよび県南鯉養殖漁業組合訪問、IER特別セミナー開催

日本での活動初日となるこの日は、はじめに福島県環境創造センターを訪問しました。環境創造センターは福島県、国立環境研究所(NIES)、日本原子力開発機構(JAEA)の3者によって設立された施設です。NIESでは原発事故後の環境創生や廃棄物処理について各チームの代表研究者から福島での研究の動向を説明いただきました。ナスビット氏からもチェルノブイリ原発事故後の廃棄物処理等について説明がなされ、地域住民からどのように合意を得るか、汚染地域の活用などについて活発な議論が交わされました。その後JAEA、福島県担当者からも研究動向や施設についての説明をいただきました。

郡山市にある県南鯉養殖漁業組合では、組合長の熊田様、郡山市担当者より震災による鯉養殖業への影響や風評被害対策事業についてご説明いただきました。鯉の養殖場を見学した後は、鯉のフルコースのランチを堪能しました。海が遠いウクライナでは鯉はよく食べられるとのことで、西京焼きや天ぷらなど、和風に調理された鯉を興味深そうに召し上がられました。

IERに戻った後はIER特別セミナーとして、立入禁止区域に関するウクライナ政府の方針等について、ナスビット氏より講演いただきました。講演後はSATREPSプロジェクトメンバーから、研究の進捗報告も行われ、多数の研究者が関わる本プロジェクトにとって大変有意義なセミナーとなりました。


(写真左)チェルノブイリでの状況を説明するナスビット氏
(写真右)ウクライナからの記念品を贈呈


(写真左)鯉の養殖場を視察
(写真右)鯉のフルコースに舌鼓

セミナー後に、SATREPSプロジェクトメンバーと

令和元年10月16日(水) IER特別セミナーを開催しました。

日 時 令和元年10月16日(水)
発表者 アレクセイ コノプリョフ 教授
マキシム イバノフ モスクワ大学研究員
難波謙二 教授
脇山義史 講師
マーク ジェレズニヤク 特任教授
演題 1)General information about JSPS-RFBR Project and its progress so far(コノプリョフ)
2)Progress in research of Russian team and joint studies(イバノフ)
3)Studies of long-term dynamics of r-Cs in Abukuma River(難波)
4)Short-term changes of r-Cs concentrations in Abukuma river during the floods(脇山)
5)Modelling of r-Cs transport in Abukuma River and Upa River basins(ジェレズニヤク)                            

今回のセミナーは、当研究所のアレクセイ・コノプリョフ教授が中心となって行っているロシアとの2国間交流事業共同研究に参加する、マキシム・イバノフ氏(モスクワ大学)の来日にあわせ行われました。

この共同研究は、課題名を「原発事故の影響を受けた河川流域での放射性核種の移動量評価と将来予測」とし、昨年度より2か年の計画で開始されました。福島県の阿武隈川とロシアのウパ川という、どちらも近隣で原発事故が発生した2つの河川流域での放射性セシウムの動態を比較することで、阿武隈川流域で、放射性物質が今後どのような動きをするか将来予測を立てることを主な目的としています。

プロジェクトに参加する研究者はこれまで度々、日ロ両国を行き来し、現地での調査や学会出席を重ねてきました。今回のセミナーではこれまでの研究成果が各研究者より発表され、活発な意見が交わされました。また台風19号による阿武隈川氾濫の直後ということもあり、その影響についての言及もありました。イバノフ氏は今回の来日で約4週間福島県に滞在し、県内でのサンプリング調査や原発視察等を行う予定です。今後、さらに両国での調査研究を進め、論文の公開や学会での発表につなげる考えです。


これまでの研究成果について発表するイバノフ氏

令和元年10月11日(金) 北海道大学にて、IERの教員3名が講義を行いました。

環境放射能研究所(IER)の教員3名が北海道大学大学院水産科学院の修士学生を対象に、大学院の授業の一環として講義を行い、修士学生のほか、学部生、教員ら50名以上の参加がありました。

「福島第一原発事故による、魚類への放射能影響、漁業への影響と現状」をテーマに、まず塚田所長が当研究所の概要、近年の取り組み、放射線被ばくに関するこれまでの研究内容等の全体的な説明をしました。続いて、和田准教授が「魚」、高田特任准教授が「海流」を軸に、それぞれの視点で漁業への放射能影響について話しました。

講義後、参加者からは「放射性物質の海洋流出のイメージが明確になった」「イメージしていた現状と違っていた」などのコメントが寄せられました。このようなコメントや受講学生らの熱心な姿勢から発表を行った教員3名も多くの気づきが得られ、有意義な講義となりました。


講演の様子。北海道大学は、塚田教授と高田特任准教授の母校でもあります。

令和元年10月10日(木) IERセミナーを開催しました。

日 時 令和元年10月10日(木)
発表者 和田敏裕 准教授
高田兵衛 特任准教授
演題 1)Factors affecting radiocesium contamination of freshwater fish distributed inside and outside of the designated evacuation zone(和田)

2)Simultaneous observation of R-Cs from river to sea in the southern Fukushima(高田)                           

環境放射能研究所(IER)では、所属教員による研究成果報告会を定期的に行っています。これは所属教員同士の交流、研究内容の研鑽を目的に開催するもので、2回目となる今回のIERセミナーでは、和田准教授と高田特任准教授の2名による発表が行われ、14名の参加がありました。

和田准教授はこれまで、福島県内の河川に住む魚類の放射性濃度が依然として比較的高いことを示す研究内容を発表していましたが、今回のセミナーではその要因の詳細な研究結果を報告しました。IER着任後初めてのセミナー発表となった高田特任准教授は、着任後(2019年6月)から開始した、福島第一原子力発電所以南地域の河川および海洋のセシウム濃度観測から得られた考察について発表しました。


(写真左)和田准教授 (写真右)高田特任准教授


研究の手法や今後の展望について、活発に議論が行われました。

令和元年10月8日(火) ベルギーの研究者がIERに来所しました。

ベルギー原子力研究センター(SCK-CEN) 技術者のロビン ノーツ氏、ブリュッセル自由大学のジョス ライティンクス氏が環境放射能研究所(IER)へ来所しました。SCK-CENからは今年の5月にホーレマンス ネロ教授らが来所し、IERのヴァシル ヨシェンコ特任教授との二国間共同研究の開始に伴い、キックオフミーティング、野外調査、およびIER特別セミナーを実施しました。

この二国間共同研究プロジェクトでは、主にアカマツを対象として、放射性物質が植物に与える影響の調査研究を行っています。ジョス氏はこのプロジェクトにおける共同研究者ではありませんが、採択課題のテーマであるアカマツと共生する【キノコ】を研究対象としており、アカマツの放射線による被ばくの程度と、共生するキノコの存在との因果関係を明らかにしようとしています。研究チームは、約1週間のスケジュールで帰還困難区域を含む県内各所にて野外調査を行いました。

また、今回の野外調査にはNHKのテレビ取材クルーが同行し、帰還困難区域における研究活動の撮影に加えて、調査地の地主の方や研究者へのインタビューなどの取材が行われました。放送の内容については改めてご案内いたします。


(写真左)調査中に取材を受けるロビン氏
(写真右)ジョス氏(左)、ヨシェンコ特任教授(中央)、ロビン氏


キノコの採集を行っている様子。地元の方の協力のもと、採取は行われた。

令和元年10月5日(土)
ふくしまおさかなフェスティバルにて、高田特任准教授が講演を行いました。

相馬市で開催されたイベント「ふくしまおさかなフェスティバル」の学術セミナーにて、当研究所の高田兵衛特任准教授が講演を行いました。このイベントは福島県の漁業復興や、漁業により親しんでもらうことを目的に県内各地で開かれているもので、会場では食などの身近な話題を通して、福島の水産業の現状を知ることができます。

高田特任准教授は「魚と海洋環境の関係」をテーマに講演を行いました。海洋中のセシウム濃度が2018年までに原発事故前の水準に下がっていることを踏まえて、その影響を受ける海産物のセシウム濃度も海洋同様に減少傾向にあるとして、福島の漁業の安全性について話しました。


講演を行う高田兵衛特任准教授

令和元年9月26日(木) IERセミナーを開催しました。

日 時 令和元年9月26日(木)
発表者 五十嵐康記 プロジェクト研究員
脇山義史 講師
演題 1)Basin scale estimation of current and future water balance from streamflow time series at Chernobyl Exclusion zone.(五十嵐)

2)Temporal variations in particulate and dissolved 137Cs concentration in the Abukuma river water during floods(脇山)                           

環境放射能研究所(IER)では、所属教員による研究成果報告会を定期的に行っています。これは所属教員同士の交流、研究内容の研さんを目的に開催するもので、今回の今年度初めての所属教員によるIERセミナーでは、五十嵐プロジェクト研究員、脇山講師の若手2名による発表が行われ、12名の参加がありました。

2名の研究者はどちらも水文学が専門です。水文学とは降雨や蒸発、河川の流れなどの広い意味での環境中の水の移動を研究する学問で、五十嵐研究員はSATREPS(詳しくはこちら)プロジェクトで進めているチェルノブイリでの研究内容について、脇山講師は福島県の河川、主に阿武隈川で行っている調査についての発表を行いました。


(写真左)五十嵐研究員 (写真右)脇山講師


(写真)それぞれの発表後には、論文の作成にあたってのコメントや議論が行われました。

令和元年9月11日(水) 川内村立川内中学校のみなさんが来所しました。

中学校の体験学習として福島大学を訪れた川内村立川内中学校の3年生6名が、環境放射能研究所(IER)に来所しました。

IERでどのような研究が行われているか、調査地での写真を使いながら説明させていただきました。福島県の環境回復のため、また風評被害を防ぐためには科学的な見地からの正しい情報発信が重要なことをお話しすると、みなさん真剣な表情でうなずいてくださいました。後半は研究に使用している大型機器を見学していただき、どのように調査研究が行われているかを感じていただきました。

川内村は一時、全村避難となった地域です。幼いながらも避難生活を経験された川内中学校のみなさんにとって、今回の見学が興味深く、新しいことを知ることができた機会であったなら幸いです。


(写真)説明を聞く中学生のみなさん。大型の光学顕微鏡や、分析に必要な機器の見学を行いました。

令和元年9月5日(木) 郡山市立日和田中学校のみなさんが来所しました。

中学校の体験学習として福島大学を訪れた郡山市立日和田中学校の3年生15名が、環境放射能研究所(IER)に来所しました。

IERでは、研究所の役割をお話ししたほか、原子力発電所の事故によって放射性物質が環境中に飛散したこと、しかしながら自然の中にはもともと放射性物質が存在することといった放射性物質の基本的な内容について説明しました。分析棟内の見学では、研究に使用する様々な機器を紹介を行いました。普段は目にすることの少ない大型機器に、みなさん驚いた様子でした。


(写真)説明を受ける中学生のみなさんは、熱心に話を聞いていました。

令和元年9月3日(火) トルコの3大学のみなさんが来所されました。

福島大学は、新潟大学が日本主幹校として行うプロジェクト「経験・知恵と先端技術の融合による、防災を意識したレジリエントな農学人材養成」に参加し、同じくプロジェクト参加校であるトルコのアンカラ大学・エーゲ大学・中東工科大学の3校との学生間交流を行っています。これは文部科学省 (MEXT)が展開する「大学の世界展開力強化事業」によるものです。このプロジェクトでは、農業が盛んで自然災害が多発する地域であるという二つの共通点を軸として、トルコと日本(新潟・福島)がこれまでの経験から培ってきた知見を融合し、それを生かしてこれからの農業を担う人材を育成することを目的としています。

トルコのみなさんは、2週間ほどの日本訪問のプログラムの中で、新潟県と福島県の各所を廻り、それぞれの地域の農業を取り巻く状況を学びます。福島大学では、環境研の和田敏裕准教授、食農学類の林薫平准教授が施設や研究概要の説明を行いました。紹介を受けた学生の中には、日本での研究に意欲を示す学生もおり、このプロジェクトを通して、両地域の関係がより緊密になることが期待されます。


(左)質疑応答では、研究内容について多くの質問が挙がった。
(右)分析棟では、分析設備の紹介を行った。

令和元年8月30日(金) 二本松市立安達中学校のみなさんが来所しました。

二本松市立安達中学校の3年生40名が環境放射能研究所(IER)に来所しました。大学生生活はどんな様子なのか、どんな環境で勉強をしているのか、などを体験する機会として福島大学を訪れ、IERのほか、キャンパスや図書館の見学を行いました。

IERでは研究所の概要や研究活動について説明し、分析機器類に実際に触れてみてもらいましたが、みなさんの顕微鏡をのぞく様子、話を聞きながらメモを取る姿はとても熱心でした。見学を通じて、大学の雰囲気やIERの活動の様子が少しでも伝われば嬉しく思います。


(写真)説明を聞く中学生のみなさん。大型の光学顕微鏡や、分析機器の見学を行いました。

令和元年8月28日(水) 福島工業高等専門学校の学生が来所されました。

福島工業高等専門学校(福島高専)の学生10名が来所されました。 福島高専では2018年度より、環境省が実施する「除去土壌等の減容等実証事業」の一環として、「除去土壌の再生利用等に関わる理解醸成のための課題解決型アプローチの実践」と題したプログラムを実施されています。プログラムでは、除去土壌についての若者の理解促進、オピニオンリーダーの育成、地域住民とのコミュニケーション促進などを目標として、中間貯蔵施設等を訪問するフィールドワークや、民間企業や行政機関との共同教育といった活動をされています。今回、福島高専のみなさんはそのプログラムの一環として、福島大学生との意見交換を主な目的に来所されました。

はじめに福島高専の油井先生よりプログラムについて紹介いただきました。そして当研究所の分析機器見学や脇山講師、高田特任准教授からの研究紹介を行った後、福島高専の学生さんからも研究内容を紹介いただきました。最後に当日参加した福島大の学生・大学院生5名も交えてグループに分かれ「地域住民に除去土壌に関する研究内容、結果をどのように説明したらよいか」というテーマでグループディスカッションを行いました。環境放射能の動態と中間貯蔵から最終処分へ向けての課題という,近い分野で学ぶ同世代の学生間で、互いに刺激のある議論となったようです。


(写真左)ゲルマニウム半導体検出器を見学
(写真右)グループディスカッションの様子

令和元年8月19日(月) IER特別セミナーが開催されました。

日 時 令和元年8月19日(月)
発表者 レベッカ クヴェルフェルト(ハノーファー大学)
演題 A project to separate and measure radionuclides such as fission products in moss that were taken from evacuated or non-evacuated areas in Fukushima province.

環境放射能研究所(IER)の兼務教員である共生システム理工学類 高貝慶隆准教授のもとで研究活動を行っていたレベッカ クヴェルフェルトさんが研究報告を行いました。ドイツのハノーファー大学の博士課程に在籍するレベッカさんは、日本学術振興会海外特別研究員として、6月からの2か月間、日本で研究を行いました。

レベッカさんはコケに含まれる放射性物質とその動態をテーマに研究を行っています。発表の中では、福島第一原発周辺でのコケの採取など野外調査の内容や、今後の研究計画についての報告があり、帰国後も研究を継続する意欲がうかがわれました。発表後には、研究の手法やコケを研究対象とした経緯などについて、教員らと活発な意見が交わされました。


日本で行った研究報告を行うレベッカさん

令和元年8月11日(日) 
福島大学オープンキャンパスにて、研究所の一般開放を行いました。

福島大学のオープンキャンパス開催にあわせて、環境放射能研究所(IER)では施設の一般開放を行いました。また、分析棟の見学ツアーや高校生に向けた模擬講義を行いました。

研究所の活動を広く知っていただく機会となる一般開放をオープンキャンパスの際に行うのは初の試みとなります。当日は、高校生だけでなく同伴された保護者の方、小さなお子様など、多くの方々が来所されました。情報提供の機会として、成果報告会や地域研究懇談会などの活動に加え、今後も継続して行っていきたいと考えております。


(写真)本棟1Fの展示の様子。和田准教授の研究室から、ウナギとウグイの展示、石庭特任助教の研究室からはネズミの骨格標本を用いた展示を行いました。


(写真)分析棟ツアーにて、技術スタッフによる案内を行う様子(左) 本棟6Fでの映画上映会。(右)原発事故が起きた2011年から現在までの福島を追うJapan Desk Scotland制作のドキュメンタリー映画を上映しました。


(写真)高田兵衛特任准教授(左)とイスマイル ラハマン准教授(右)による模擬講義を開催。高田特任准教授は海洋と放射性物質の関係について、ラハマン准教授は英語で自身の科学者としてのキャリア形成について、それぞれ講義を行いました。

令和元年7月30日 浪江町で第11回研究活動懇談会を行いました。

令和元年7月30日(火)浪江町にて、研究活動懇談会を開催しました。この懇談会は、研究成果を地域に還元するために2016年より定期的に開催しているもので、当研究所にとって重要な活動です。

詳しくはこちらをご覧ください。

令和元年7月25日(木) IER特別セミナーが開催されました。

日 時 令和元年7月25日(木)
発表者 マライア デイヴィス(コロラド州立大学)
ジャン ザン(コロラド州立大学)
キャメロン ウディ(コロラド州立大学)
演題 1)"Lifetime Dose Reconstruction in the Large Japanese Field Mouse Using Electron Spin Resonance (ESR)" (マライア)

2)"Determination of Local Ecological Factors on Radiocesium Soil-to-Plant Transfers in Fukushima Forest Ecosystems" (ジャン)                            

3)"Radiocesium fate and transport in soil-water environment in the proximity of the Fukushima Dai-ichi Nuclear Plant"(キャメロン)

環境放射能研究所(IER)の受入教員のもとで研究活動を行っていたコロラド州立大学の学生が、2か月間の研究成果について報告を行いました。IER教員や学生のほか、日本滞在中に交流のあった職員や学生など、26名の参加がありました。

2か月という限られた期間ではあったものの、学生たちは福島における野外調査を体験し、採集試料の分析を行い、各自の研究を進めてきました。研究の各工程において使用した機器や手法、苦労や失敗から成功に至った経緯などが丁寧にまとめられており、慣れない研究環境の中での努力が伺われました。

各発表の後には、教員から熱意のこもったコメントや質問があり、今後の研究のヒントも得られた様子でした。モデレーターを務めたヴァシル ヨシェンコ特任教授からは「短い期間で残念だったが、良い成果報告になった」とのコメントがありました。



講演を行った3名の学生たち (右下集合写真左から)ジャン ザン、キャメロン ウディ、マライア デイヴィス

令和元年7月24日(水) 浮島智子 文部科学副大臣他。福島市議会議員の方々がIERを訪れました。

浮島智子 文部科学副大臣、金城太一 副大臣秘書官、玉上晃 大臣官房審議官、小野京子 福島市議会議員、後藤善次 福島市議会議員、高木直人 福島市議会議員が環境放射能研究所(IER)の見学に訪れました。また、福島大学食農学類や附属農場等も視察されました。

IERでは分析棟にて塚田所長が研究所設立の経緯と研究所としてのこれまでの取り組みや研究活動ついて説明し、技術スタッフが研究機器の紹介を行いました。 説明の中で塚田所長は、今年度4月の大学院修士課程開設について触れ、将来的な環境放射能研究の重要性と、これからの研究に対する教育拡充の必要性に重点を置いて話をしました。


(写真左)概要説明。浮島副大臣(左)、小野市議(左から2番目)、後藤市議(右奥から2番目)、高木市議(右奥)
(写真右)技術スタッフの機器説明を聞く浮島副大臣(中央)と、 玉上大臣官房審議官(左)

令和元年7月17日(水) ベトナムのフォンドン大学、ふくしま・ベトナム友好協会の方々が来所しました。

ベトナムのフォンドン大学の学生2名、ふくしま・ベトナム友好協会から3名が福島大学の視察に訪れ、併せて環境放射能研究所(IER)へ来所しました。ふくしま・ベトナム友好協会は、1990年の設立から、福島とベトナムの相互理解に寄与すべく活動を行っており、長年フォンドン大学生の日本滞在を支援しています。今回来日した2名の学生は3週間の滞在プログラムの中で福島県内の企業の訪問や、イベントへの参加を通じて、日本の文化や社会習慣を学ぶ予定です。

IER本棟の最上階からは、周辺地域に広がる昔ながらの里山の風景を望むことができますが、同時に、放射性物質の除染作業によって出た汚染土の仮置場となっているエリアがあることが分かります。こうした異なる光景を案内しながら、福島の放射能による影響、復興の状況について説明しました。見学者らは豊かな自然環境に感嘆しつつ、福島の現状に関する話について熱心に耳を傾けていました。


(写真左)塚田所長(左)の挨拶を受けるフォンドン大学の学生
(写真右)本棟周辺の景色を眺めるみなさん

令和元年7月16日(火) 南相馬市社会福祉協議会の方々が視察に訪れました。

南相馬市社会福祉協議会の役員の方々12名が環境放射能研究所(IER)に来所しました。南相馬市社会福祉協議会は、福祉を必要とする方と提供する方へのサービスや情報発信を目的に、地域社会の方々によって組織される団体です。東日本大震災以降、避難者された方の自立のための支援も行ってきました。

IERの沿革や活動内容紹介のほか、高田特任准教授より、研究の概略説明を行いました。南相馬市を含む相双地区は、震災の影響が甚大だった地域でもあります。説明を受けた協議会のみなさんからは、放射線影響の現状などについて多くの質問があがりました。一般の方々の疑問や不安を伺う機会は、研究所にとって貴重で有意義なものです。いただいた質問やご意見は今後の活動に活かしてまいります。



(写真左)高田特任准教授による研究説明
(写真右)分析機器の説明をうける協議会のみなさん

令和元年7月11日(木) 和田准教授が研究発表を行いました。

一般社団法人環境放射能除染学会主催による、第8回研究発表会が2019年7月10日(水)~11日(木)の二日間、福島県のけんしん郡山文化センターにて開催され、当研究所の和田准教授が研究発表を行いました。「福島第一原子力発電所事故による海、川への影響」というタイトルで行われた企画セッションでは、筑波大学の青山特任教授と中央水産研究所の森田博士による講演も行われ、水域への放射能汚染に関する討議が行われました。

今回の発表では、和田准教授らの研究グループが国際誌にて公表した論文"Strong contrast of cesium radioactivity between marine and freshwater fish in Fukushima"に基づき、海水魚と淡水魚における、放射性セシウムによる汚染メカニズムの違いに関する研究成果を報告しました。その中では特に、海水魚の放射性セシウムの汚染濃度は経年とともに低下する一方で、淡水魚では低下の度合いが緩慢で問題が長期化する傾向にあることが指摘されています。

論文の詳しい内容は、下記のリンクから確認いただけます。
"Strong contrast of cesium radioactivity between marine and freshwater fish in Fukushima"



          
(写真上左)講演を行う和田准教授
(写真上右)参加者からの意見を討議する講演者。
(写真下)研究発表会ではポスター発表も行われ、学生による研究成果が発表された。

令和元年7月10日(水) 二本松市岩代中学校の生徒が来所しました。

二本松市立岩代中学校の3年生の生徒31名が、環境放射能研究所(IER)に来所しました。中学校の体験学習の一環で、福島大学を訪れた生徒のみなさんは、IERのほか、大学内での講義への参加、図書館の見学を行いました。

IERでは、この研究所が持つ役割、研究の内容の説明、研究に使用する様々な機器を紹介しました。IERスタッフの質問にも、それぞれの考えでしっかりと答える生徒のみなさんの姿が印象的でした。今回の大学訪問に、みなさんの将来につながる発見があったことを期待します。



研究所について説明をうける生徒のみなさん

令和元年7月6日(土) 当大学院初の野外実習が行われました。

共生システム理工学研究科環境放射能学専攻の大学院初の野外実習が実施されました。今回のカリキュラム「環境放射能学演習」は実践科目の一つで、学生たちは教員の指導のもと、野外調査に参加します。今回のヴァシル ヨシェンコ特任教授による森林での野外調査では、放射線による森林への影響や、森林内の放射線量が減衰していくサイクルを包括的に学ぶことを目標にしています。

野外調査は福島県川俣町で行われました。学生たちはスギ林の中の調査エリアを選定し、エリア内の樹木の本数や各樹木の太さ、空間線量率の測定を行うとともに、枝やリター(落ち葉)、土壌サンプルの採取などを行いました。これから学生たちは、今回の野外調査で得られたサンプルを基に、それらを科学的に測定、分析する手法を学んでいきます。



(写真左)木の太さを計測する学生
(写真右)野外調査の説明を行うヴァシル ヨシェンコ特任教授

令和元年7月3日(水) 福島県立福島高等学校にて講義を行いました。

当研究所のイスマイル・ラハマン准教授が、福島高校3年生26人を対象に講義を行いました。福島高校は文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクールに指定されており、その活動の一環として、外国人研究者を招き英語で講義を行う取り組み(サイエンスダイアログ)をされています。

講義はラハマン先生の母国バングラデシュの紹介から始まり、先生が科学者の道を進むきっかけとなったバングラデシュのヒ素汚染について、そして現在行っている研究の紹介へと続きました。質疑応答では、科学者としてのキャリアやバングラデシュの環境問題について、様々な質問が飛び交いました。中には研究内容について専門的な質問をする生徒もおり、ラハマン准教授にとってうれしい驚きだったようです。

講義の締めくくりには「皆さんの中から科学、特に環境放射能の分野に興味を持ち、進まれる方がいれば嬉しいです。ぜひ科学者として再会しましょう」とのメッセージが送られました。



講義を行うラハマン准教授

令和元年6月28日(金) IER特別セミナー


日 時 令和元年6月28日(金)
発表者 米澤 稔 氏
(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 研究連携成果展開部科学技術情報課技術主幹)
演題 "Activities for archiving information resources of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident"

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)より米澤稔氏をお招きし、IER特別セミナー"Activities for archiving information resources of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident(福島原子力事故に係る情報のアーカイブの取り組み)"を開催しました。IERの修士課程に所属する学生や、福島大学の職員ら24名の参加がありました。

セミナーでは、福島が経験した原発事故から得られた知見、主にインターネット上に公開されている情報は、公的なものであってもその多くが時とともに消失している現状に触れ、それらをアーカイブ化して残そうとする取り組み「福島原子力事故関連情報アーカイブ(FNAA)」についての説明と、その必要性についての話がありました。

これらの資料の利用やアーカイブ化の手法は、IERが計画している原発事故後の周辺環境土壌のサンプルアーカイブ化や研究者・学生らの研究活動に資するものであり、今後の活動につながるセミナーとなりました。

※FNAAの詳しい取り組みは、下記バナーより本サイトをご覧ください。

          


(写真)発表を行う米澤氏

令和元年6月27日(木) 郡山市立熱海中学校の生徒が来所しました。

郡山市立熱海中学校3年生の生徒9名が、環境放射能研究所(IER)に来所しました。これは熱海中学校が行っている、福島大学のキャンパス見学や模擬授業の受講、学食を体験するプログラムの一環として行われたものです。

スタッフによるIERの活動紹介のあと、中学生たちは、実際に研究で使用している分析機器を見学。その後、光学顕微鏡と電子顕微鏡の2種類の顕微鏡を通すことで人の髪の毛がどのように見えるかを体験してもらいました。 今日の体験が、大学や研究所という場を身近に感じる機会となればと思います。



(写真左)活動紹介を受ける中学生のみなさん
(写真右)光学顕微鏡を覗く生徒

令和元年6月5日(水) コロラド州立大学の学生が来日しています。

コロラド州立大学(CSU) 修士1年に在籍するキャメロン・ウディ、ジャン・ザン、マライア・デイヴィスの3名の学生が研究調査のために来日しました。2か月間、IERで放射性物質の環境動態や生態系への放射線影響についての研究活動を行います。

CSUとIERは2016年から、”Summer Program”というCSUの夏季休暇期間を利用した学生派遣をIERが受け入れる形で交流を続けています。今回来日した3名は、4月より開始した「放射能環境動態・影響評価ネットワーク共同研究拠点(ERNC)」における採択課題の共同研究員でもあり、IER受入教員とともに研究を行い、今年度末にはその成果の報告が予定されています。

滞在中は、福島の環境が原発事故によってどのような影響を受けたのか、という点に焦点を当て、IER教員の指導のもと野外調査や分析等の研究活動を行い、セミナー等で経験の報告をする予定です。



(上段左)キャメロン・ウディ (上段右)ジャン・ザン (下段)マライア・デイヴィス

令和元年5月27日(月) IER特別セミナー


日 時 令和元年5月27日(月)
発表者 キャメル・マザーシル教授(マクマスター大学)
演題 "Radiobiology meets Radioecology; understanding low radiation dose effects in the environment"

カナダのマクマスター大学より教授2名が福島大学を訪問し、当研究所にてキャメル・マザーシル教授による特別セミナーを開催しました。生態学分野の研究者を中心に23名の参加がありました。

マクマスター大学と福島大学は2017年より、学術交流に関する協定を結んでいます。同大学のキャメル・マザーシル教授とコリン・シーモア教授は、IER研究者との共同研究も検討しており、難波教授(福島大学理工学類兼務)によるIERの本棟・分析棟、研究・分析機器等の説明に続き、今後に向けての協議を行いました。 併せて、福島大学が企画する国際交流プログラム「Fukushima Ambassadors Program (F.A.P)」を通した学生交流など、大学間のより緊密な学術交流の可能性についても検討されました。


(左) 分析棟を見学するキャメル・マザーシル教授(中央)、コリン・シーモア教授(左)、
両名を案内する難波教授(左)
(右)講演中のキャメル・マザーシル教授。

令和元年5月23日(木) SATREPSシンポジウム
”Agriculture and Hydrological researches in ChEZ and Fukushima”を開催。

日 時 令和元年5月23日(木)
発表者 塚田祥文 教授
脇山義史 講師
ヴァシル ヨシェンコ 特任教授
ボロディミル デミヤノヴィッチ 所員 国営特殊企業エコセンター研究部
ヴァレリー カシパロフ 所長 ウクライナ農業放射線研究所
マーク ジェレズニヤク 特任教授
演題 1. “General Introduction of IER and Research Activities on Agricultural Issues"(塚田)
2. “Hydrological Studies of Rivers in Fukushima"(脇山)
3. “Forest Studies in Fukushima"(ヨシェンコ)
4. “River Studies in ChEZ" (ボロディミル)
5. “Researches of Radionuclides in Soil in ChEZ”(ヴァレリー)
6. “Overview of the IER modeling results for the rivers /reservoirs and coastal areas at Fukushima Prefecture”(マーク)

SATREPS事業の共同研究者をウクライナより招聘し、” Agriculture and Hydrological researches in ChEZ and Fukushima(チェルノブイリと福島の避難区域における農業および水文学的調査研究)”をテーマにシンポジウムを開催しました。当研究所所属の研究者や学生だけでなく、福島大学共生システム理工学類または食農学類の教員や外部機関の方々など、43名の参加がありました。

ウクライナから招聘した2名を含む6名の研究者が、原発事故によって環境中に放出された放射能が農作物や河川・土壌に与えた影響についての研究成果を発表しました。チェルノブイリと福島の現状についての貴重な報告を受けて、活発な意見交換が行われ、SATREPS事業における共同研究のさらなる発展に向けた有意義なシンポジウムとなりました。

ヴァレリー カシパロフ 氏(前列左から4番目)、ミコラ・ケドラノフスキー氏(前列中央)、ボロディミル デミヤノヴィッチ氏(前列右から4番目)。

令和元年5月22日(水) ウクライナからの訪問団が福島を視察しました。

SATREPS事業がプロジェクト開始から3年目を迎えることから、これまでの研究成果の共有とプロジェクト研究のさらなる推進を目的に、この事業の共同研究者3名をウクライナから招聘しました。

招聘した研究者ヴァレリー・カシパロフ所長(ウクライナ農業放射線研究所)、ミコラ・ケドラノフスキー部長(国営特殊企業エコセンター生産部、国際プロジェクト部)、ボロディミル・デミヤノヴィッチ研究員(国営特殊企業エコセンター研究部)、および環境放射能研究所の難波教授(福島大学共生システム理工学類兼務)、マーク・ジェレズニヤク特任教授、五十嵐康記プロジェクト研究員、片岡浩史ウクライナ現地駐在員が参加し、東京電力(TEPCO)福島第一・第二原子力発電所の視察、県内の研究機関や被災地を訪問しました。

東京電力福島原子力発電所の視察では、TEPCOスタッフから第一・第二原発の震災当時の様子、事故後の取り組みや現状についての説明を受けました。招聘した研究者からは、「これまで第一原発の情報は知り得ても、第二原発については詳しく知る機会があまりなかった。原発内部の様子をみることができ興味深かった」との意見がありました。今回の日本での視察が、今後の研究成果につながることが期待されます。


(写真左)第二原発内部で説明を受ける一行。
(写真右)ツアーに参加し、第一原発敷地内の見学を行った。

令和元年5月14日(火) IER特別セミナー

日 時 令和元年5月14日(火)
発表者 ヴァシル・ヨシェンコ 特任教授
ゲラスキン・スタニスラフ氏 ロシア農業放射線生態学研究所 所長(RIRAE)
ホーレマンス・ネロ氏 ベルギー原子力研究センター 部長(SCK-CEN)
渡辺嘉人 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所福島再生支援本部 主任研究員(NIRS)
演題 1."Radiation effects on coniferous plant species in Chernobyl and Fukushima" (ヨシェンコ)
2. "Biological effects of long-term chronic exposure. A case study on Scots pine populations" (スタニスラフ)
3. "Current evidence for a role of epigenetic mechanisms in response to ionizing radiation in an ecotoxicological context" (ネロ)
4. "Comparative studies between field and irradiation experiments for elucidation of biological effects of radiation on the forest" (渡辺)

森林や植物への放射線による影響について研究を行っている当研究所のヴァシル・ヨシェンコ特任教授のほか、外部から3名の研究者を招いてのIER特別セミナーを開催しました。IERの研究者、学生など31名の参加がありました。

本セミナーは、2019年度からスタートする二国間交流事業協同研究のキックオフミーティングの開催に合わせて行われました。これは日本と諸外国の学術的な国際交流を推進するもので、ヴァシル・ヨシェンコ特任教授の研究課題が、JSPS(日本学術振興会)とベルギーのFWO(学術研究財団 フランダース)間、およびJSPSとロシアのRFBR(ロシア基礎科学財団)間による二国間事業に採択されました。各共同研究の代表者ゲラスキン・スタニスラフ氏(RIRAE)、ホーレマンス・ネロ氏(SCK-CEN)の両名と、日本側共同研究者の渡辺嘉人氏(NIRS)が来所し、各自のこれまでの研究内容について発表しました。

両共同研究は2年間継続して行われる予定で、両研究者は今回の来日で、福島の帰還困難区域の野外調査を開始します。森林や植物への放射線による影響という分野は、地域住民にとっても身近なテーマであり、研究の進展が期待されます。

ゲラスキン・スタニスラフ氏(右から2番目)、ホーレマンス・ネロ氏(右から3番目)渡辺嘉人 主任研究員(左から3番目)、ヴァシル・ヨシェンコ特任教授(左から4番目)。

平成31年4月17日(水) IER特別セミナー

日 時 平成31年4月17日(水)
発表者 イズマイル カンタルジ教授(モスクワ国立建築大学)

モスクワ国立建築大学のイズマイル カンタルジ教授によるIER特別セミナーを開催しました。IER に所属する研究者、学生14名の参加がありました。

モスクワ国立建築大学は1921年に創立し、現在では、50以上の学部と約18,000名の学生を有する大学です。2010年にはロシア政府から「国立研究大学」の指定を受け、建築・土木・科学技術など、今後重要とされる研究の発展に向けて大きな役割を担っています。この大学でイズマイル教授は、海洋・河川の水力学、沿岸工学の研究と教育に携わってきました。

今回のセミナーは、国内で行われたシンポジウム参加のために来日していたイズマイル教授が、福島大学との共同研究の可能性を検討する目的で当研究所に来所したことで実現しました。モスクワ国立建築大学の紹介や、教授がこれまで行ってきたプロジェクトに関する講演が行われ、参加した研究者らは熱心に聴講していました。研究・教育分野における今後の両大学の連携、活発な双方向の交流が期待されます。

イズマイル カンタルジ教授(写真右から3番目)とIERの教授陣。

平成31年4月4日(木) 共生システム理工学研究科環境放射能学専攻の学生が入学しました。

平成31年度福島大学入学式が挙行されました。環境放射能研究所(IER)が母体となる共生システム理工学研究科環境放射能学専攻では、8名の新入生を迎えました。 環境放射能学専攻は、福島大学共生システム理工学研究科の一専攻として、今年度から新しく開設されました。環境放射能に関連する諸課題に対し、中長期的視点を持って取り組み、課題解決や学術の発展に寄与する人材の育成を目的としています。

本専攻の第一期生としてここで学ばれる皆さんの、環境放射能分野でのこれから活躍が期待されます。

(写真左)大学院生に向けて行われたガイダンスの様子。
(写真右)集合写真。8名の新入生を迎えた。