地域との懇談会
令和4年度
令和4年12月10日(土) いわき市にてシンポジウムを開催しました。New!
シンポジウムチラシ
日 時 : | 令和4年12月10日(土)13:00~17:00 |
場 所 : | いわき産業創造館 企画展示ホールA |
IERでは研究成果を地域に還元するため、2016年から研究活動懇談会を毎年数回開催しています。令和4年12月10日、第18回目となる懇談会をシンポジウム「豊かな福島の海を未来につなぐ~原発事故からの回復と漁業復興に向けた課題~」と題して開催しました。オンライン、会場合わせ約140名の方にご参加いただきました。
今回のシンポジウムは、福島県の海域環境や海産物の放射性物質濃度が顕著に低下し、漁獲量の計画的な増大を目指すなかで、福島第一原発からのALPS処理水の海洋放出の決定という新たな風評被害への懸念が高まるなか企画されました。
講演者にはIER所属研究者のほか、自然科学、社会科学それぞれの観点から事故後の海洋環境や海産物の放射性物質汚染を調査してきた研究者、また漁業協同組合や県機関の立場から福島県の漁業復興に取り組んできた研究者らが集結し、限られた時間の中でこれまで明らかになった研究結果や今後の取り組みについて紹介しました。
総合討論の最後には各発表者が漁業復興に向けた思いを語り、参加者からは「漁業、魚、海洋について科学的なデータに裏打ちされた現状が説明され理解が深まった」「福島の漁業の現状がよく分かった」という感想に加え、「漁業者の声、現状を聞きたい」「被災前の状態に戻すのではなく、福島県独自の新しい沿岸環境利用計画についても検討することが大切だと思う」「次代を担う若い世代をも交えた情報交換が望まれる」といった意見をいただきました。
IERでは今後も福島県民をはじめとした一般の方々との意見交換の場を設け、研究成果を福島の復興につなげられるよう、活動していきたいと考えています。
福島県内外から参加者が集まった
総合討論の様子
会場外では講演者所属機関による研究をポスターで紹介
令和3年度
令和4年2月13日(日)福島市内にて第17回研究活動懇談会を開催しました。
懇談会チラシ
日 時 : | 令和4年2月13日(日)13:00~14:30 |
場 所 : | 福島市内 平石集会所 |
演 題 : | 阿武隈川における懸濁態 137Csの存在形態について
(山川喜輝:福島大学共生システム理工学類4年生)
森林と農地に由来する河川水137Csの季節変化
(木本美咲:福島大学共生システム理工学類4年生)
質疑応答(難波謙二 所長/教授)
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環境放射能研究所による研究活動懇談会は、研究成果を地域に還元するために2016年より開催しております。第17回となる今回は「福島県における水田の代掻きによる河川への放射性セシウム流出の評価」と題して、福島大学共生システム理工学類難波研究室の4年生、山川喜輝さんと木本美咲さんが研究報告を行いました。山川さんは卒業研究として「阿武隈川における懸濁態 137Csの存在形態について」、また木本さんは「森林と農地に由来する河川水137Csの季節変化」というテーマで環境放射能研究所の教員(五十嵐特任助教ほか)の協力を得ながら取り組んできました。今回の懇談会では2人の卒業研究内容の一部を報告し、意見交換を行いました。なお、2人は2020年に下鳥渡地区で開催した研究活動懇談会で代掻きについて発表した森高祥太さんの後輩です。2021年に研究に協力いただいた平石地区の皆様10名と2020年にお世話になった下鳥渡地区の皆様4名にお集まりいただきました。
山川さんの発表では、2012年から福島市黒岩で定期的に実施してきた観測から、溶存態放射性セシウム濃度が長期的には減少傾向にある一方で、夏季に高く冬季に低下する季節変化を示すこと、とくに毎年5月に急激な上昇があることが説明されました。この5月の上昇が代掻きによる河川への137Csの流出である可能性があることから、2020年は下鳥渡地区での代掻きの水田内でどのような濁水が発生するのかを調査し、2021年は平石地区で水田に隣接する河川の水質が代掻き前後でどのように変わるかを調べた観測結果を報告しました。その結果から、代掻き中に発生する水田の濁り成分および137Cs濃度は、隣接する河川におよそ30倍に希釈された状態で流出していると考えられるとしました。
木本さんは代掻きの影響に加え、森林からの影響も把握するための研究を報告しました。杉田川上流にある流域が森林のみの観測点と、下流側にある流域に水田がある観測点とで、137Cs濃度や水質を比較しました。上流では河川水中の137Csの概ね80%以上が溶存態として存在している一方、下流では逆に懸濁態の割合が増えていました。ただし、同じ溶存態137Csを比べても下流の濃度は上流の濃度よりもどの季節でも高く、特に代掻きが行われていた日の下流観測点では、溶存態137Cs 濃度が上流の5-10倍の濃度となっていました。このことから、森林からの137Csの流出はあるものの下流への寄与は小さく、下流の河川水中の懸濁態・溶存態137Cs濃度に対してはともに代掻き時の水田からの寄与が大きいと考えられると報告しました。
発表後の質疑応答では難波所長も加わりました。ご参加いただいた皆様からは、「河川の放射性セシウム濃度は安全性に問題がある濃度なのか?」「放射性セシウムは土壌にしっかり吸着されるはずなのでは?」「水田に存在する放射性セシウムのどの程度の割合が流出しているのか」「上流にあるため池では放射性セシウムはどうなっているのか」など、多くの質問やご意見をいただきました。「観測された最大の溶存態137Cs 濃度でも 0.02 Bq/L であり、安全性に問題がある濃度では無い」「放射性セシウムがあることで見える、水田を中心としたカリウムなどの物質の動きがなにかヒントになるとよいと考えている」などの回答をしました。今回いただいた貴重なご質問ご意見を参考に、IERでの研究に活かしていきたいと考えております。
(注)福島県では2012年から田植え前にゼオライトやカリウム施肥を実施し、稲の放射性セシウム吸収を防止する対策が実施され、県内収穫された玄米を全て測定する全袋検査が継続されました。2015年以降は放射性セシウム基準値超が0件であり、5年間にわたって基準値超え0件が継続したことから、2020年からは収穫された玄米はサンプル検査として実施されています。
懇談会の様子
調査中の様子
調査中の様子
令和3年12月11日(土) 郡山市にて第16回研究活動懇談会を開催しました。
懇談会チラシ
日 時 : | 令和3年12月11日(土)13:00~16:20 |
場 所 : | 郡山駅前ビックアイ7階 市民交流プラザ 大会議室 オンライン同時配信あり |
演 題 : | 原発事故から10年を経た内水面漁業の現状と漁業復興に向けた取組 (神山享一:福島県内水面水産試験場 調査部長)
阿武隈川の新たな脅威:外来ナマズの分布と移動生態 (和田敏裕:当研究所 准教授)
鯉に恋する郡山プロジェクトの紹介 (難波謙二:当研究所 所長)
ふくしまを川のなかから盛り上げる (坪井潤一:国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所主任研究員)
大震災と放射能!川の中から見た10年 (堀江清志:阿武隈川漁業協同組合 事務局長)
※プログラム順
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環境放射能研究所による研究活動懇談会は、研究成果を地域に還元するために2016年より開催しております。第16回目となる今回は「阿武隈川の10年とこれから~漁業と地域社会の活性化に向けて~」と題し、東日本大震災から10年ぶりに一部の漁業活動(アユ釣りなど)が再開された阿武隈川の現状と課題、これからの展望などについて講演を行いました。オンラインでも同時配信を行い、オンライン参加・会場参加合わせて約60人が参加しました。
神山部長は、阿武隈川流域の淡水魚の放射性物質について、年を経るにつれて減少傾向にあるものの、減少のスピードが鈍化している状況について話しました。また、淡水魚は海の魚よりも放射性セシウムをため込みやすく、一部で比較的高い数値がでる要因などについても解説しました。また、「釣れるアユ」で福島の河川を元気にしようという、「釣れるアユ」を育てる取組について紹介しました。
和田准教授は、放射能問題だけではない、阿武隈川の新たな脅威である外来ナマズ(チャネルキャットフィッシュ)について講演しました。チャネルキャットフィッシュは食用目的でアメリカから輸入されましたが、近年、阿武隈川中流域で急激に増加しています。本種の急増に伴う魚種組成の変化や、バイオテレメトリー調査により明らかにされた信夫ダムでの移動生態や産卵場所の特定について説明しました。また、ダム域以外の産卵場所特定の必要性など、今後の課題も示されました。
次に郡山市のプロジェクト「鯉に恋する郡山」について、プロジェクトに合わせて郡山市のYouTubeチャンネルで公開されている「どっ鯉ソング~ソスイでSweetなこいのうた~」を難波所長が紹介しました。
坪井主任研究員は福島県内の複数の河川で実施した、アユがどのように放射性セシウムを摂取しているかについての調査結果を発表しました。また関連して、アユが石に付着した藻類(餌)を食べることで川を綺麗にする作用があることや、アユの天敵であるカワウ対策についても解説しました。さらに本やウェブサイト、YouTubeを通して自身が行っている河川でのレジャーを盛り上げるための取組についても紹介しました。
堀江事務局長は、原発事故の影響について、ご自身を福島県地図に見立てたスーツ(写真②参照)などを交えながら説明しました。阿武隈川漁業組合の40年前と現在の状況を比較し、特に原発事故後は組合員数が減少するなど厳しい状態であるものの、最近行ったキャンペーンの効果で組合員が増加したこと、これからの漁業組合づくりに、子どもたちや30代~40代の若者世代を巻き込み行っていきたいという考えをお話しされました。
各講演後、意見交換時には、若者の川離れを懸念し「子どもが川と触れ合う機会を作るためにはどのようにしたらよいのか」など、参加者からの様々な意見や質問が上がり、活発な議論が交わされました。
福島大学HPニューストピックへ掲載されました!
①左より、難波所長、神山部長
堀江事務局長、和田准教授(坪井研究員不在)
② 阿武隈川漁業協同組合
堀江事務局長の講演の様子
③ 全体の様子
④ 参加者と講演者の意見交換の様子
令和2年度
令和2年11月27日(金) 楢葉中学校で第15回研究活動懇談会を開催しました。
日 時 : | 令和2年11月27日(金)13:25~15:15 |
場 所 : | 福島県双葉郡楢葉町立楢葉中学校 |
発表者 : | 塚田 祥文 教授 |
演 題 : | 2011年の事故後の環境放射能 |
生徒代表による発表の様子
11月27日に今年度2回目となる研究活動懇談会を行いました。
農作物への放射性物質の影響について研究する塚田教授が楢葉中学校を訪問し、1年生から3年生の全校生徒約40名と先生方へ放射線教育の一環として講演を行いました。当日は塚田研究室修士2年の菊池美保子さんも参加しました。
福島県双葉郡楢葉町は、面積の多くが福島第一原子力発電所から20km圏内にあり、事故後、大部分が避難指示の対象地域となりました。2015年9月に全域で避難指示解除となり、楢葉中学校は2017年度より町内での教育活動を再開しています。
講演を行う塚田教授
講演に先駆けて、有志で町内の放射線量を計測した生徒さんが、計測の結果や放射線に関して調べたことについて感想を述べました。その中でも代表の3年生2名は、スライド資料を使いながらの大人顔負けの発表でした。「町内でも線量が高いところと低いところがあるが、普段生活しているところは十分に線量が低く安心した」「除染のおかげで再び楢葉で生活できていることがわかった」といった感想があがり、自分たちで実際に線量を測る活動によって、改めて放射線に対する不安を払拭できたようでした。
真剣な表情で聞き入る生徒の皆さん
塚田教授の講演では放射線の歴史など基礎知識から始まり、土壌中の放射性物質が農作物に移動するメカニズム等について図やグラフを示しながらお話しされました。中学生の皆さんには、やや難しい内容も含まれていたと思いますが、真剣な表情で聞き入っている姿が印象的でした。後日、担当の先生に伺ったところ、ほとんどの生徒さんが「講演を聞いて放射線について前よりも詳しくなれた」と話していたそうです。休憩時間や講演後には、目には見えない放射線のイメージを掴んでいただければと、用意した霧箱で放射線が飛ぶ様子を観察していただきました。興味津々といった様子で霧箱を眺める生徒さんからは、自分でも霧箱を作ってみたいという声も聞こえました。
霧箱を囲んで放射線を観察
楢葉中学校の全校生徒数は、震災前は約300名だったところ、現在は39名とのことです。それでも、地域振興の活動等も積極的に行われているということで、真新しい校舎には生徒の皆さんの活気を感じました。
「日本一放射能に詳しい中学生になるんだよ」と言って授業をしているという理科の先生の言葉がありましたが、今回の懇談会が生徒の皆さんが放射能に対する正しい知識を深めるための一助になれば幸いです。
懇談会の最後に感想を述べる生徒さん
生徒の皆さんと記念撮影(写真撮影のときのみ、マスクを外しました)
令和2年11月14日(土) 福島市で第14回研究活動懇談会を開催しました。
日 時 : | 令和2年11月14日(土)16:00~17:30 |
場 所 : | 下鳥渡集会所(福島市) |
発表者 : | 森高 祥太 共生システム理工学研究科環境放射能学専攻 修士2年 難波 謙二 所長 / 教授(質疑応答) |
演 題 : | 福島県における水田の代かきによる河川への放射性セシウム流出の評価 |
代かきの様子(福島市下鳥渡)
今年度初めての開催となる研究活動懇談会を福島市内の下鳥渡集会所で開催しました。懇談会には、研究に協力いただいた地元の農家の皆様11名にお集まりいただき、「福島県における水田の代かきによる河川への放射性セシウム流出の評価」と題して研究報告を行いました。
発表者の森高祥太さんは、環境放射能学専攻修士課程で阿武隈川の放射性セシウムの動態を研究しています。2017年から難波研究室にて阿武隈川河川水の観測と解析を始め、2019年からは修士課程でIER和田准教授の元研究を継続してきました。修士論文の研究課題では、阿武隈川河川水の溶存態(イオンの状態で水中に溶けている)セシウム137濃度が5月に急上昇する季節変化に着目。5月に増加する一因として、田植え前に田んぼに水を引き、土をならして柔らかくする代かき(しろかき)が関係しているのではないかと考えました。
代かき時の水田での調査
そこで、福島市内の下鳥渡地区の稲作農家の皆様に協力をいただき、代かき前後の水田や水田に繋がる水路を流れる水のセシウム137濃度を調査し、本流である阿武隈河川水の調査結果と比較しました。
今回の懇談会では、その調査結果が報告されました。
発表では、阿武隈川流域のセシウム137の動態の概要から始まり、サンプリング地点や調査方法、調査結果について写真や図を交えて詳細な説明がありました。調査では、1000~4000リットルの河川水を採取して分析し、その結果からは、代かきの時期に河川水のセシウム137濃度が上昇しており、水田土壌のセシウム137が代かきにより一定程度河川に流出する可能性があることが考えられました。本研究では代かきによる濁水流出量の定量化などの課題がある一方、研究成果は阿武隈川流域の放射性セシウムの輸送経路や運搬メカニズムの解明につながることが期待されます。
研究成果を発表する森高さん
発表後の質疑応答では難波所長も加わり、ご参加いただいた皆様からは、サンプリング方法や田んぼの放射性セシウム吸収抑制対策*についてなど、多くの質問やご意見をいただきました。今回いただいた貴重なご意見を参考に、IERでは今後も成果報告や懇談の機会を設けながら、地域の皆様のご理解ご協力のもと研究活動を継続してまいります。
下鳥渡集会所で行われた懇談会の様子
(*注)福島県では田植え前にゼオライトやカリウム施肥を実施し、稲のセシウム吸収を防止する対策が実施されています。すべての県産米への全袋検査では、2015年以降、放射性セシウム基準値超の発生件数は0件。福島県産米の安全性が評価されています。
令和元年度
令和2年1月31日(金) 二本松市にて第13回研究活動懇談会を行いました。
日 時 : | 令和2年1月31日(金) |
場 所 : | 二本松市男女共生センター |
この懇談会は、研究成果を地域に還元するために2016年より開催しているもので、当研究所にとって重要な活動です。第13回目となる今回は、「福島の林業復活に向けて」と題し
森林環境及びその産業に焦点をあて、帰還困難区域の森林における放射能の影響を研究するヴァシル ヨシェンコ特任教授、環境省東北地方環境事務所所長である小沢晴司氏の2名の講演を行いました。林業関係者や帰還困難地域に関わりのある市民の方など76名の参加がありました。
ヨシェンコ特任教授はこれまでの研究結果から、森林内の放射性セシウム濃度が減少するスピードが緩慢であることを報告しました。その理由として、森林生態系中に蓄積された放射性セシウムが降雨や落葉によって葉や樹皮から土壌に移動し、根から吸収され再び地上のバイオマス(有機物)に還る循環移動があることを挙げています。また、チェルノブイリ原発事故の影響を受けたウクライナでは、安全な木材利用の促進のため、木材の放射性物質濃度基準値が用途に応じて設定されていることについて説明しました。小沢所長は、森林が福島県内の多くの割合を占める重要な要素であるとして、県が推進する「ふくしま森林再生事業」の枠組みや、その中で行った林業への関心を高めるスタディツアーなど、復興に向けた取り組みの紹介を行いました。
本会は、福島の森林や林業と様々な形で関わる方々にとって有益な情報共有や意見交換の場となることを目的としましたが、来場者には故郷が帰還困難区域に指定された住民の方も多く、会場からは林業や除染に関する質問が多く挙げられました。本会の開催についてのコメント、改善点などを様々なご意見をいただきましたので、今後の活動に活かしていきたいと思います。
(写真左)懇談会の様子。
(写真右)ヨシェンコ特任教授(左)と難波謙二教授。
(写真左)講演を行う小沢所長。
(写真右)意見交換の様子。難波教授は当日のファシリテーターを務めた。
令和2年1月24日(金) 京都大学にて第12回研究活動懇談会を行いました。
日 時 : | 令和2年1月24日(金) |
場 所 : | 京都大学百周年時計台記念館 国際交流ホールⅠ |
この懇談会は、研究成果を地域に還元するために2016年より開催しているもので、当研究所にとって重要な活動です。第12回目となる今回は、京都大学フィールド科学教育研究センター、京都大学大学院情報学研究科との共催として開催し、市民の方や研究者の方など約120名の参加がありました。
「福島の森・里・川・海の今 ~放射能問題からウナギ・カレイの新発見まで~」と題した今回の懇談会では、福島の環境を舞台に二つのテーマを設定しました。ひとつは「放射能汚染の影響を受けた福島」です。5名の研究者が農業、森林、野生動物、海中、魚類とそれぞれのエリアで受けた放射能による影響、またその事故から年月を経た現在の状況について発表を行い、放射能による健康へのリスクは低いものであることが示唆された一方、依然として研究を継続する必要性があることが話されました。
もうひとつのテーマは「福島の魚類生態」で、4名の研究者が発表を行いました。その個体数が増加し、阿武隈川の在来生物に対する影響が懸念される外来種の「チャネルキャットフィッシュ」や、近年個体数の減少が著しい松川浦の「ニホンウナギ」など、福島に分布する魚類の生態系には様々な問題が起こりつつあります。福島大学と京都大学では、今ある生態系の保全を目的にその生育環境、あるいは生態の調査を行ってきました。このプログラムでは、その共同研究で明らかになった魚類生態やその研究手法が話され、環境の維持だけでなく、それを利用してきた漁業産業の維持についての議論も行われました。
今回の研究活動懇談会は、当研究所として初めて、関西圏の方々に向けた報告を行う場として開催し、異なる角度から見た福島の環境問題について、多くの方に関心を持っていただくことができました。今後も、研究成果の発表や福島について知っていただく機会として、活動を継続してまいりたいと考えています。
(写真左)シンポジウムの概要について説明する和田准教授。
(写真右)前半のプログラムを終え、参加者の質問に答える教授たち。
(写真左)意見交換の様子。左から塚田祥文所長、大手信人教授(京都大学)、
石庭寛子特任助教、高田兵衛特任准教授、荒井修亮教授(京都大学)
(写真右)意見交換の様子。左から三田村啓理准教授(京都大学)、山下洋教授
(京都大学)、野田琢嗣研究員(京都大学)
(写真左)挨拶を行う山下洋教授。 (写真右)シンポジウムの様子。
令和元年7月30日(火) 浪江町にて第11回研究活動懇談会を開催しました。
日 時 : | 令和元年7月30日(火) |
場 所 : | 福島県浪江町 |
この懇談会は、研究成果を地域に還元するために2016年より開催しているもので、当研究所にとって重要な活動です。第11回目となる今回は、主に浪江町立野地区の農家のみなさん17名にお集まりいただき、当研究所塚田所長との座談会形式で行われました。
「農業環境における放射性セシウム等について」をテーマに、放射線についての基礎的な説明から始まり、農業土壌の質が土壌に含まれる放射性物質(主にセシウム)の植物への移行量に影響することなど、やや専門的な内容にも触れながら、農業を軸とした幅広い話題が提供されました。
浪江町では平成26年度から「浪江町農業再生プログラム」として、浪江町地域農業再生協議会がまとめた復興計画に基づき営農再開への取り組みを続けています。会では、震災前にこの地域で盛んだった畜産の今後の再開に向けた発言や、農家の方が圃場での作業を通じて感じてきた放射能への疑問、農業の安全を担保する研究を希望する声など、多くの意見交換がなされました。
(写真左)説明を行う塚田所長。
(写真右)会では参加者との活発な議論が行われた。
平成30年度
平成31年3月2日(土) 郡山市にて第10回研究活動懇談会を行いました。
日 時 : | 平成31年3月2日(土)13:30~16:00 |
場 所 : | 福島県郡山市ビッグアイ7階 |
この懇談会は、研究成果を地域に還元するために2016年より開催しているもので、当研究所にとって重要な活動です。第10回目となる今回は、蔵前工業会(東京工業大学同窓会)福島県支部との共催として開催し、市民の方や自治体職員の方など65名の参加がありました。
今回の研究活動懇談会は、「福島県の放射能の今~淡水魚から考えよう」と題し、内水面水産業と放射能をテーマとしました。内水面とは、河川や湖沼を指す言葉です。鮎(アユ)や公魚(ワカサギ)、鯉(コイ)など、福島県は淡水魚の食文化が豊かで、釣りは人気のレジャーです。
私たちの生活にも深く関わるこのテーマについて、当研究所(難波教授、和田准教授)だけでなく、東京工業大学、福島県、郡山市、阿武隈川漁業組合に所属する様々な立場の専門家5名から発表がありました。
参加者からは、科学的な発表だけでなく産業分野の話題もあったことを高く評価する声がありました。一方、専門的な研究には、より平易な説明を求める意見もありました。皆様のご意見は今後の運営の参考とさせていただきます。
(写真左)講演を行う堀江清志塾長(阿武隈川漁業協同組合)。
(写真右)意見交換の様子。奥側左から、和田敏裕准教授、加藤明准教授(東京工業大学)、藤田恒雄場長(福島県)、箭内勝則主幹兼課長補佐(郡山市)。
平成30年11月16日 相馬市にて第9回研究活動懇談会を開催しました。
日 時 : | 平成30年11月16日(金)10:00~12:00 |
場 所 : | 福島県相馬市 |
平成30年11月16日(金)相馬市にて、共生システム理工学類(当研究所兼務)難波謙二教授、コロラド州立大学から来日中のトーマス・ジョンソン客員教授による研究活動懇談会を開催しました。
自然環境や野生生物の調査研究では、地域の方の協力を仰ぐことは少なくありません。この懇談会は、研究成果を地域に還元するために2016年より定期的に開催しているもので、当研究所にとって重要な活動です。今回は主に農家の方にお集まりいただきました。
難波教授は、帰還困難区域の放射線量の推移、そして同区域に生息するイノシシやその他の野生動物について話しました。
長期低線量放射線被ばくの動物への影響について研究するジョンソン客員教授は、帰還困難区域と放射線量が低い地域に生息するネズミの比較によって得られた研究結果を話しました。
参加者からは「放射線についての噂と、データの結果が違うことに驚いた」という意見があがりました。
発表を行うトーマス・ジョンソン客員教授(左)と難波謙二教授(右)
平成30年6月29日 双葉町役場いわき事務所にて第8回研究活動懇談会を開催しました。
日 時 : | 平成30年6月29日(金) |
場 所 : | 福島県いわき市 |
双葉町役場いわき事務所にて、第8回研究活動懇談会を開催しました。当研究所の和田敏裕准教授より、双葉町における魚類および周辺環境の放射性セシウム濃度についての報告を行いました。その後、難波教授も加わり環境水や魚類の放射性セシウム濃度に関する質疑応答がなされました。
また、石庭寛子特任助教からは放射線がアカネズミに及ぼす影響について説明を行いました。双葉町の皆様のご協力も含め、福島県内を対象とした研究を行う予定です。
平成30年5月29日 阿武隈川漁業協同組合にて第7回研究活動懇談会を開催しました。
日 時 : | 平成30年5月29日(火) |
場 所 : | 福島県福島市 |
福島市飯坂地区に位置する阿武隈川漁業協同組合にて懇談会を開催しました。阿武隈川漁協の堀江事務局長、当研究所の難波教授、和田准教授、および本学共生システム理工学類の学生が参加し、阿武隈川水系における河川水、魚類の放射性物質濃度の現状を報告しました。特に、重点調査を行った伊達市布川の渓流域に生息するヤマメやイワナでは、依然として基準値を超える検体が散見される実態や、その要因等について意見交換を行いました。
原発事故の影響により魚類の採捕・出荷制限等の措置が継続している阿武隈川ですが、事故前は、4,000人以上にのぼる組合員が、漁業、教育、趣味等といった様々な活動を行っていました。当研究所では、今後も阿武隈川での活動再開に向けた研究活動を行って行きます。
平成29年度
平成30年1月24日 浪江町で第6回研究活動懇談会を開催しました。
日 時 : | 平成30年1月24日(水) |
場 所 : | 福島県浪江町 |
ヴァシル・ヨシェンコ特任教授が浪江町内で調査を行っているマツ・スギ・ヒノキの現状と対策について報告しました。今回は浪江町の林業関係者を対象に行ったもので、31名の参加がありました。
ヨシェンコ特任教授は最初に、どのような仕組みで樹木が放射能に汚染されたかを、図を用いて説明しました。次に現在まで解っている汚染状況を説明し、最後に考えられる対策について話しました。
報告後、参加者からは「林業の復興のために今後も環境放射能研究所の先生たちと継続的に交流を図り、次世代に向けて出来ることについて共に協力していきたい」と意見が出されました。
(写真左)発表を行うヴァシル ヨシェンコ特任教授
(写真右)懇談会の様子
平成28年度
平成29年(2017年)1月27日 南相馬市にて第3回研究活動懇談会を開催しました。
第3回となる環境放射能研究所研究活動懇談会を南相馬市役所にて開催いたしました。
今回は「新田川・真野川水系の現状」と題し、本研究所からだけでなく、福島県内水面水産試験場や国立環境研究所で行っている新田川、真野川、その流域での研究活動についても報告しました。
「河川のセシウム濃度について、河川水中のセシウム137濃度の経年変化は予測値より低く、とくに除染が進んでいる上流の地点で低下が著しいことから、除染によって濃度の低下が促進されたと考えられる」「新田川・真野川水系に生息する魚類の放射性セシウム濃度は事故直後に比べて大幅に下がっている一方で、基準値を上回る個体も確認されたことから、今後もモニタリングを継続すべきである」等の発表をしました。
研究者報告の後は質疑応答の時間とし、参加者から発表内容に関する疑問や提言など、活発な議論が交わされました。
日 時 : | 1月27日(金)午後1時30分から午後4時30分 |
場 所 : | 南相馬市役所本庁舎2階 |
発表者 : | 和田敏裕(福島大学環境放射能研究所准教授)
脇山義史(福島大学環境放射能研究所講師)
森下大悟(福島県内水面水産試験場)
鷹﨑和義(福島県内水面水産試験場)
林 誠二(国立環境研究所 福島支部 研究グループ長)
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平成28年(2016年)11月21日 大熊町にて第2回研究活動懇談会を開催しました。
第2回となる環境放射能研究所研究活動懇談会を大熊町役場いわき出張所にて開催いたしました。
本研究所は避難指示区域などをフィールドとして、各地方自治体の職員の方々や、地域住民のみなさまのご理解・ご協力のもと研究を行っています。なかでも大熊町にて実施している研究テーマは多く、今回はそうした研究を中心に研究報告を行いました。
報告後は、来場者が発表研究者に質問したり、研究者が来場者に地域の現状についてお話しを伺う時間としました。今回お越しいただいた参加者の意見については、本研究所でのこれからの研究活動に活かしてまいります。
日 時 : | 11月21日(月)午後2時から午後4時 |
場 所 : | 大熊町 いわき出張所 |
開催のご相談も随時承っております。環境放射能研究所までお問い合わせください。
問合せ先 Tel 024-504-2114/Mail ier@adb.fukushima-u.ac.jp