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研究所案内

所長あいさつ

 

 福島大学環境放射能研究所 (IER) は平成25年7月の設置以来、原発事故後の環境放射能に関係する課題に取組んでまいりました。同時に組織整備も進め、分析棟・本棟の建設を含めて、平成29年にはほぼ現在の形ができています。さらに、昨年令和元年度には、筑波大学アイソトープ環境動態研究センター(CRiED)、弘前大学被ばく医療総合研究所(IREM)、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 福島研究開発部門福島環境安全センター (JAEA福島環境安全センター)、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門高度被ばく医療センター福島再生支援研究部 (QST福島再生支援研究部)、国立研究開発法人国立環境研究所 福島支部(国環研福島支部)とのグループ運営による共同利用・共同研究拠点を開始し、国内外の研究者とIER研究者との共同研究において福島の試料へのアクセス拠点としての機能が効果的に発揮される仕組みが一層充実してきました。また同年、IERとしての教育機能である大学院環境放射能学専攻修士課程が設置され、第一期生が入学しました。続いて令和3年4月に博士後期課程が設置され、第一期生が入学しました。

 IERには環境中の放射能や放射線が関係する様々な現象を研究対象とする研究者が集まっています。放射能や放射線が共通の研究対象ですが、各々の背景となる研究分野は、地形学や水文学、水圏生態学、森林生態学、海洋学等多岐にわたっています。これはIERがもともと学際的であり、内部の共同によって、研究分野の隙間にある新たな視点など従来の対象から抜け落ちていた研究への着手にも繋がりやすいというメリットがあります。

 さらに世界中の原発立地国やその近隣国の研究者らが、次の放射能汚染に備えるという視点で原発事故による環境への影響や野生動植物への影響について注視しており、福島で環境放射能研究を行う研究者も自ずと国際的になります。各国研究者共通の科学的関心に基づいた国際共同研究を開所以来継続していますが、今後も展開していきたいと考えています。

 原発事故の影響を受けた福島での問題は、IER設置当初の緊急的対策に資する課題から次第に長期的な問題に関心が移ってきました。これに応じて研究テーマを長期的な課題に切り替えていくことになります。長期的対応のための方針の一つは、環境中の放射性核種や放射線を視野に入れた基礎を探求するということです。たとえば、環境動態分野であれば水文学的生態学的物質移動の基本を、放射線影響としての形態異常に関しては形態形成のメカニズムの基本を解明するということです。このような基礎研究は、環境や自然についての深い理解に基づいた対策等につながると期待されます。

 学際的あるいは国際的という特徴のほかに、原発事故後福島大学に設立されたIERは、地域との関わりが深いという特徴があり、これは特に重視すべき点です。一般の方々とのコミュニケーションを重視し、当地の状況あるいは関心の変化に対応した研究を行い、地元への研究成果報告などを継続していくことが重要であると考えています。今後も内外の方々の協力を頂きながら効果的な運営を心がけたいと考えております。引き続きよろしくお願いいたします。

 

設立の経緯と目的

 福島大学環境放射能研究所(Institute of Environmental Radioactivity:IER)は東京電力福島第一原子力発電所事故を契機として、平成25年(2013年)7月1日に設立されました。原子力発電所などの事故により放出された環境中の放射性物質の動きや環境への影響の解明は、国際社会の課題となっており、事故の経験と教訓を国際社会と共有し、長期にわたって研究していくことが、福島県に立地する本学が果たすべき責務と考えるからです。

 本研究所は、森林、河川、湖沼、海洋等の環境における放射性核種の動態に関する基礎的ならびに応用的研究を行うことを目的にしています。特に、現場に近いという特性を生かしたフィールド研究を中心に、5部門15分野を整え、さらにこれらの分野を横断・融合して実施される、6つのプロジェクトを立ち上げ研究を進めてきました。

 また目的達成のため、筑波大学、東京海洋大学、広島大学、長崎大学、福島県立医科大学、放射線医学総合研究所との共同運営を行うとともに、国内外の研究機関と連携しながら広く世界に開かれ、その英知を結集した環境放射能動態に関する先端研究拠点となることを目指しています。

 

沿   革

  本棟
平成23年(2011年)3月東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故発生
平成24年(2012年)8月環境放射能研究所 第一回設置準備委員会
平成25年(2013年)3月文部科学省より国立大学改革強化推進補助金交付決定
平成25年(2013年)7月環境放射能研究所設立
平成26年(2014年)7月環境放射能研究所分析棟竣工
平成29年(2017年)2月環境放射能研究所本棟および試料保存棟竣工
平成30年(2018年)6月共同利用・共同研究拠点「拠点名:放射能環境動態・影響評価ネット ワーク共同研究拠点」として認定
平成30年(2018年)8月大学院(修士課程)設置認可
平成31年(2019年)4月共同利用・共同研究拠点「放射能環境動態・影響評価ネットワーク共同研究拠点」活動開始 (2022年3月31日まで) 
平成31年(2019年)4月環境放射能学専攻(修士課程)設置 
令和  2年(2020年)7月大学院(博士後期課程)設置認可 
令和  3年(2021年)4月大学院(博士後期課程)設置 
外観1 外観2
本棟               分析棟

 

パンフレット

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(日本語版)