令和4年1月24日 第9回IERセミナー を開催しました。<ラハマン准教授 アレクセイ特任教授>

日時

2022年1月24日(月)14:00~15:00

発表者

ラハマン・イスマイル 准教授
アレクセイ・コノプリョフ 特任教授
(発表順)

演題

Management of the contaminated land area with bioenergy crops(ラハマン)
Vertical distribution of 137Cs in bottom sediments provides insight into time changes of water contamination: Chernobyl and Fukushima(コノプリョフ)
(発表順)

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究内容の研鑽を目的に、所属研究者による研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。1月24日に開催した令和3年度第9回IERセミナーでは、ラハマン・イスマイル准教授とアレクセイ・コノプリョフ特任教授が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら21名が参加しました。

福島では、事故後、放射性物質に汚染された土地の管理が重要な課題となっています。ラハマン・イスマイル教授は汚染物質を土壌中に固定し、浸食、流出、風による拡散を防止することを目的とした研究を行っており、今回は植物を用いた土壌中の放射性物質の固定についての発表を行いました。バイオエネルギー作物であるErianthus arundinaceus(ヨシススキ)は、土壌からの養分や重金属類の吸収効率がよい作物です。そこで放射性セシウムの吸収実験を行ったところ、通常、放射性セシウムは土壌から植物の根に吸収され、その後、地上部に移行すること、ただし土壌からの放射性セシウムの取り込みは非常に少ないことが分かりました。次に雑草を用いたセシウム耐性についての栽培実験の結果を紹介しました。この実験は、安定同位体セシウムで行われたため放射性セシウムの場合はどうなのか、また園芸用土を用いて管理された実験室で行ったため、農地の土壌・環境での影響はどうなのかについて、今後の研究で調査する必要があります。

アレクセイ・コノプリョフ特任教授は、チェルノブイリと福島の原発事故の底質(河川や湖沼などの底に溜まった堆積物)中の137Csの垂直分布から水質汚染の時間変化を研究した結果をもとに発表しました。河川水中の137Csの粒子濃度は、流域の表土層における放射性物質の枯渇により、時間の経過とともに減少します。また水中の浮遊粒子は河川の底に沈降し続けるため、底質中に137Csの垂直分布が形成されます。つまり、事故後に形成された堆積物の垂直分布は、河川水中の粒子状137Cs濃度が時間とともにどのように変化していたかを示しており、垂直分布において137Cs濃度が最も高い層は事故後初期の粒子状濃度に対応し、底質最上層の137Cs濃度は現在の粒子状137Cs濃度を示しているとのことです。底質中の137Csの垂直分布を用いて、河川・湖沼における粒子および溶存態137Cs濃度の長期的な動態を再構築し、チェルノブイリと福島、両方のモニタリングデータやモデリング結果と比較したところ、結果はほぼ一致したとのことです。

各発表後は様々な質問や意見があがり、活発な議論が交わされました。

ラハマン准教授の発表時の様子
コノプリョフ特任教授が発表を行っている様子
質問時の様子
質問時の様子