令和4年9月26日 第4回IERセミナー を開催しました。<金指研究員、和田准教授>

日時

2022年9月26日(月)14:00~15:00

発表者

金指 努 プロジェクト研究員
和田 敏裕 准教授
(発表順)

演題

Lepidostomatidae larvae uptake 137Cs from leaves and excrete particulate materials with 137Cs in streams(金指)
Remaining issues for Fukushima’s fisheries recovery and application of biology tags to track the horizontal / vertical movements of flatfish(和田)

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

9月26日(月)に開催した令和4年度の第4回IERセミナーでは、金指努プロジェクト研究員、和田敏裕准教授が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら20名が参加しました。

金指プロジェクト研究員が発表している様子
和田准教授が発表している様子

金指研究員は、渓畔林から渓流生態系への放射性セシウム移動プロセスを明らかにしようとしています。水生昆虫であるカクツツトビケラ科(Lepidostomatidae)の幼虫を用いた室内実験により、渓流に堆積した放射性セシウムを含む落葉を食べることによる放射性セシウムの取り込み、及び放射性セシウムを含む粒子状物質の排泄に関するプロセス解明を試みていて、現在まで明らかになった内容について発表しました。カクツツトビケラ科幼虫の137Cs濃度は、落葉や排泄物よりも低く、一方、排泄物の137Cs濃度は、落葉よりも高くなりました。このことから、幼虫は落ち葉から137Csよりも栄養分を多く吸収・蓄積しているため、相対的に137Cs濃度が幼虫では低くなり、排泄物では高くなると推察しています。今後、より多くのデータを得るために実験を継続するとともに、元素分析も行う予定です。

和田准教授は福島県の漁業復興に向けた課題と、水温・深度記録タグのホシガレイへの応用について発表を行いました。原発事故後に生じた漁業関連施設の津波被害や水産物の放射性セシウム汚染などの問題がほぼ収束する一方、福島原発港内で汚染された魚類の潜在的なリスク評価と魚類の移動生態の解明が、さらなる漁業復興に向けて重要です。水温・深度記録タグを装着したホシガレイの採捕個体のデータを解析することで、沿岸域での水平・鉛直移動を明らかにするとともに、原発港内への魚類の移出入に関する情報が得られました。今後は、トラフグなど他魚種への応用も視野に研究を進めていきます。

発表後には研究者による意見交換が行われ、活発な議論が交わされました。

質問時の様子
質問時の様子