独自の固相抽出システムを用いた環境マトリックスからの放射性核種の選択的分離:レビュー

准教授 イスマイル・ラハマン

研究の概要

チョルノービリや福島で発生した、それまでに経験したことのない原発事故による放射性核種の放出を鑑みるに、環境中の放射性核種を正確かつ迅速に測定することは、環境モニタリング、放射線防護、放射性廃棄物管理にとって不可欠です。このような背景から、放射性核種分析において誤差を生じさせやすいサンプルの前処理において、サンプルのクリーンアップや前濃縮では、検出手法の選択性や感度向上に、より注意を払う必要があります。

固相抽出(SPE)は、環境試料中の分析対象となる核種を他のイオンから選択的に分離することができる有効な試料前処理法です。SPEは、カラム、カートリッジ、ディスクなどの形態で市販されており、放射性核種分析におけるサンプル精製に広く用いられています。これらの製品は分析対象となる放射性核種に対して高い親和性と選択性を持ち、再利用可能で大量生産が容易なものもあるため、他の方法よりも経済的に優れています。しかしながら、SPE製品を用いた放射性核種の選択的分離に関するレビューはありません。そこで、本研究では、環境試料から放射性核種(セシウム、ストロンチウム、テクネチウム、トリチウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム)を分離するために採用されている手法について解説します。このレビューは、環境マトリックスの放射性核種を分離・分析するための選択的SPEによる試料前処理技術についての情報を提供することを主眼とします。

図表

図1: 概念図:複雑な試料からの放射性核種の選択的分離

本研究の意義・ポイント

本研究は、独自の官能基を導入したSPE を用いて 放射性核種を選択的に分離するために開発された手法に関する最初のレビューです。

論文情報

論文は2022年7月19日に更新版がオンライン公開されています。

雑誌名Microchemical Journal
論文タイトルSelective separation of radionuclides from environmental matrices using proprietary solid-phase extraction systems: A review
URLhttps://doi.org/10.1016/j.microc.2022.107637
著者M. Ferdous Alam,ab, * Zinnat A. Begum,cf, Yoshiaki Furusho,d, Hiroshi Hasegawa,e, Ismail M.M. Rahman,f, *
a福島大学理工学類研究科
bInstitute of Nuclear Science and Technology, Atomic Energy Research Establishment
cDepartment of Civil Engineering, Southern University Bangladesh
dジーエルサイエンス株式会社
e金沢大学理工研究域
f福島大学環境放射能研究所
*責任著者