和田 敏裕

教授

所属
環境放射能研究所 放射生態学部門 陸水放射生態学
外部リンク

プロフィール

京都大学大学院農学研究科修了 博士(農学) ホシガレイの研究で学位取得。現在は、主に福島県に生息する魚類の放射性セシウム汚染について研究を行っている。

研究テーマ

  • 魚類の放射性物質汚染メカニズムの解明
  • 海産魚類(特にカレイ目魚類)の生態学と栽培漁業
  • 水産資源生物の生態学

分野

水圏放射生態学、魚類生態学、水産資源生態学

キーワード

福島県、漁業復興、放射性物質、放射性セシウム、魚類生態学、カレイ

研究概要

震災前までは、福島県に生息するカレイ類(ホシガレイやマツカワ)の生態研究や栽培漁業技術の向上に関する研究を行ってきました。
震災後は福島県の海産生物の放射性物質汚染に関する研究を行っております。これまで、浮魚類に比べて底魚類で放射性セシウム濃度の低下速度が遅いことや、原発南部の沿岸域で底魚類の放射性セシウム濃度が高いことを明らかにしました(Wada et al. 2013)。また、放射性セシウム濃度の低下が遅い底魚類でも震災後5年で汚染レベルが急激に低下するとともに、福島県の沿岸漁業の試験操業は対象エリアや対象種が着実に拡大していることを示しました(Wada et al. 2016b)。

2015年4月からは、淡水魚の放射性セシウム汚染メカニズムの解明に関する研究にも取り組んでいます。福島県のモニタリングデータを取りまとめ、海水魚に比べて淡水魚の放射性セシウム濃度の低下過程が遅い傾向にあることや、放射性セシウムの沈着量が多い原発北西部の汚染強度が高いことを示しました(Wada et al. 2016a)。また、福島県の水産研究機関と共同で、淡水魚の放射性セシウムの取り込みや排出過程の解明に関する研究に取り組んでいます。さらに、原発周辺の貯水池で採集調査を行い、高濃度に汚染された陸水域における魚類の汚染レベルの解明にも取り組んでいます。

ひとこと

福島県の漁業は原発事故により甚大な被害を受けました。現在においても、沿岸漁業の本格操業までの道筋には乗り越えなければならない多くの課題があると思います。内水面漁業では、特に原発周辺地域の汚染レベルの把握と将来予測が重要と思われます。海水魚や淡水魚の放射性セシウム汚染メカニズムの解明や将来予測に関する研究を通じて、福島県の漁業復興に寄与したいと考えております。

原発事故に伴う環境放射能汚染に関する研究は、国際社会に対しても重要な価値があります。今後とも、地元自治体の理解と協力のもと、中長期的な視点で環境放射能研究に取り組みたいと思います。

好きなもの・趣味

ホシガレイ、食べ歩き、お酒、ピアノ、テニス、ジョギング

略歴

2001年

東北大学農学部卒業

2003年

京都大学大学院農学研究科修士課程修了

2005年

日本学術振興会特別研究員(DC2)

2007年

京都大学大学院農学研究科博士課程修了(農学博士)

2007年

福島県水産試験場研究員

2014年

福島県水産試験場主任研究員

2015年

福島大学環境放射能研究所准教授

2016年

福島県地域漁業復興協議会委員

受賞歴

2015年

公益社団法人日本水産学会平成27年度水産学奨励賞受賞