令和6年7月29日 第2回IERセミナーを開催しました。 <シャボシュ外国人客員研究者、グシエフ特任准教授、高田准教授>

日時2024年7月29日(月)13:30~15:00
場所環境放射能研究所本棟6F大会議室/オンライン(Zoom)
発表者ピエール-アレクシス・シャボシュ外国人客員研究者
マキシム・グシエフ特任准教授
高田兵衛准教授
(発表順)
演題福島県の湖沼および沿岸海域に堆積した河川起源の土砂と放射性セシウムの供給源寄与の定量化(シャボシュ)
水循環におけるトリチウムの数値モデル(グシエフ)
ALPS処理水の放出前後の沿岸水中のトリチウム(高田)
参加人数27名

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

7月29日(月)に開催した令和6年度第2回IERセミナーでは、ピエール-アレクシス・シャボシュ外国人客員研究者、マキシム・グシエフ特任准教授、高田兵衛准教授が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら27名が参加しました。

シャボシュ外国人客員研究者は、3つのダム貯水池の湖底と3つの河川の河口の海底で採取された堆積物コアの物理化学的分析の結果について発表しました。この結果に基づいて、土地利用条件の異なる3つの流域において2011年の福島原発事故後に土砂供給源からの寄与がどのように変化したのかを推定するとともに、陸域環境で用いられる土砂トレーシング手法を海洋環境に適用する上での留意点等を説明しました。

グシエフ特任准教授は、2011年の福島第一原子力発電所事故と2023年のALPS処理水放出に伴う大気、陸域、海洋のトリチウム(H-3)モデリングを活用した研究成果を発表しました。2011年3月のFDNPP事故では、宇宙線によって上層大気で生成され、トリチウム水(HTO)として水循環に入る自然起源のH-3に人為起源のH-3が追加され、2012~2014年の期間に福島の沿岸湧水や井戸水のH-3濃度が上昇し、HTOトレーサーの解釈が複雑になりました。ALPS処理水のシミュレーションでは、人為起源HTOの海洋モデリングを用いることで、現在から将来の気候におけるALPS処理水由来のHTO濃度を定量化し、太平洋全域においてその影響がごくわずかであることが示されました。その結果、半減期12.32年の環境H-3放射性同位体は、福島県や他の日本の都道府県において自然レベルで有用な水循環トレーサーであり続けることが確認されました。

高田准教授は、2023年度から始まったALPS処理水放出について、放出前後の海洋環境におけるトリチウムの濃度変化について発表しました。

発表後には、IER教授陣や学生から質問やコメントがたくさん挙がり、活発な議論が交わされました。

シャボシュ外国人客員研究者が発表している様子
グシエフ特任准教授が発表している様子
高田准教授が発表している様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子