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IER活動記

令和4年度

令和5年2月13日(月)-2月14日(火) 第9回成果報告会を開催しました。

IERでは、研究成果を市民や専門家に報告し意見交換を行う場として、成果報告会を毎年開催しています。
第9回目となる今回は、テーマを「環境放射能の新たなフロンティア」とし、2月13日、14日に対面とオンラインでのハイブリッドにて開催しました。
2月13日は2022年度ERAN年次報告会との合同開催となりました。多くの参加申込みをいただき、専門家向け口頭・ポスター発表と市民向けシンポジウムには2日間あわせて、のべ約410名の皆様にご参加いただきました。 

当日のプログラムなど詳細はこちらをご覧ください。

令和5年1月30日 第9回IERセミナーを開催しました。<石庭特任講師、コノプリョフ特任教授>

日 時: 2023年1月30日 14:00~15:00
発表者: 石庭 寛子 特任講師
アレクセイ・コノプリョフ 特任教授(発表順)
演 題: Genomic analysis of radiation effects on field mice in the difficult-to-return zone.(石庭)
Seasonal variations of radiocesium (r-Cs) in aquatic environment and their mechanisms.(コノプリョフ)
石庭寛子特任講師が発表している様子。 石庭寛子特任講師が発表している様子。

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

1月30日(月)に開催した令和4年度の第9回IERセミナーでは、石庭寛子特任講師とアレクセイ・コノプリョフ特任教授が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら29名が参加しました。

最初に石庭特任講師が発表しました。放射線はDNAの突然変異を引き起こします。突然変異の発生場所は規則性が無くランダムであるとされているため、放射線が生物のDNAに与える影響を真に評価するためには全ゲノムを調べる必要がありますが、費用がかかり、全てを分析することは困難です。ゲノムサイズは動物の種類によって異なり、また、野生生物のゲノム配列情報は断片状で統合されておらず取り扱いが難しいなど、データ解析上の問題もあります。
帰還困難区域に生息する野ネズミの放射線影響を明らかにするために、生物の生存等に関わる機能を有する遺伝子領域のみをゲノム上から抽出し解析する手法を検討し、セミナーではその発表を行いました。

コノプリョフ特任教授は、水環境における放射性セシウム(r-Cs)の季節的変動とそのメカニズムについて講演しました。コノプリョフ特任教授は、チョルノービリ原子力発電所の冷却池、チョルノービリ立入禁止区域の湖Glubokoe、ドイツの貧栄養湖Vortsee、大熊の貯水池、阿武隈川、Nakanishi and Sakuma (2019)によるFDNPP汚染地域の他の河川データについての研究結果を紹介しました。
すべての水域で、溶存r-Csの濃度は、基本的に冬季よりも夏季に高いことがわかりました。水域における溶存Csの規則的な季節変動には、2つの基本的なメカニズムが存在することが示唆されました。1つ目は水温上昇による脱着速度の増加、2つ目は無酸素状態での有機物分解によるアンモニウムの発生です。
福島県内の河川は、浅く速い流れのものが多く、アンモニウム濃度は通常無視できるほどの低さです。これらの河川では、溶存r-Csの季節性の主な要因は、r-Cs脱着の温度依存性です。無酸素状態の池、湖、ダム貯水池の停滞した成層水では、r-Csの挙動におけるアンモニウムの役割は、水温の役割と同等か、それよりも優位になる可能性もあります。

発表後には研究者による意見交換が行われ、活発な議論が交わされました。 

アレクセイ・コノプリョフ特任教授が発表している様子。 アレクセイ・コノプリョフ特任教授が発表している様子。
質疑応答の様子 質疑応答の様子
質疑応答の様子 質疑応答の様子

令和4年12月26日(月)第8回IERセミナーを開催しました。<鳥居特任教授、ラハマン准教授、ヨシェンコ教授>

日  時: 2022年12月26日(月)14:00~16:00
発表者: 鳥居建男特任教授
イスマイル・ラハマン准教授
ヴァシル・ヨシェンコ教授 (発表順)
演題: A New Concept Radiation Imager as a 3rd Gen. Gamma Camera [FRIE Detector] (鳥居)
Does open-beach ship-breaking affect the activity concentrations of terrestrial radionuclides in soil ? (ラハマン)
Root uptake of radiocesium into conifers in Fukushima forests and radioiodine into crops in field experiments in Chornobyl(ヨシェンコ)
鳥居特任教授 鳥居特任教授

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。 12月26日に開催した令和4年度第8回IERセミナーでは、鳥居建男特任教授、イスマイル・ラハマン准教授、ヴァシル・ヨシェンコ教授が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら26名が参加しました。

鳥居建男特任教授は新しい概念に基づく放射線分布可視化ツールの開発について発表しました。その中で、放射線源の3次元分布が分かるフラクタル構造やFRIEなどの放射線測定器について説明しました。帰還困難区域においては、フィールド測定試験を行い、3次元的な放射線分布を求めました。現在は、現場測定に対応できる2号機を開発しており、福島の環境回復・廃炉、様々な分野に適用できるβ・γ線の同時全方位イメージングを目指しています。

イスマイル・ラハマン准教授は、"海岸での船舶解撤が土壌中の陸上放射性核種の放射能濃度に及ぼす影響"について発表し、バングラデシュのチッタゴン大学の研究者と行った共同研究のデータを共有しました。この共同研究の目的は、(a)陸域における土壌中の放射性核種の時空間分布の評価と、(b)陸域における土壌中の放射性核種による潜在的健康リスクの評価です。本研究は、陸域と陸域以外の放射線による被曝の人体への影響を評価するためには、環境中の天然放射性核種と放射線量の分布の評価が不可欠であることから実施されました。そこで、船舶解体が行われた浜辺で土壌中のU-238、Th-232、K-40の放射能濃度の時空間分布を評価し、潜在的な健康リスクを評価しました。報告書では、浜辺での船舶解体が、陸域における土壌中の放射性核種の放射能濃度を増加させないと結論付けている一方、抑制的な影響も想定しています。

ヴァシル・ヨシェンコ教授は、福島県の森林における針葉樹への放射性セシウムの根からの取り込みと、チョルノービリの野外実験における作物への放射性ヨウ素の取り込みについて、最近発表された研究結果を紹介しました。 両研究の結果から、これらの放射性核種の取り込みが、土壌中の、競合イオンの交換体とカリウムと安定ヨウ素の含有量に大きく依存することが分かりました。 また、チョルノービリおよび福島の森林の放射性核種濃度の変動に関する林分調査による研究結果と、チョルノービリ立入禁止区域のマツとカバノキにおける90Srと137Csの径方向分布に及ぼす樹齢の影響についても議論しました。

各発表後にはIER教授陣より様々な質問、コメントが挙がりました。

ラハマン准教授 ラハマン准教授
ヨシェンコ教授 ヨシェンコ教授
質疑応答の様子 質疑応答の様子
質疑応答の様子

海外から来日している研究者が帰還困難区域でのフィールド調査を行いました。

IERでは現在、SATREPSチョルノービリプロジェクトの一環として、野生動物への放射線影響を研究するウクライナ人研究者 オレナ・ブルドーさんを受け入れています。また、ブルドーさんと同じく野生動物を研究対象とするソロモン・アムノ氏(カナダ・サスカチュワン大学所属)も福島でのフィールド調査のため短期滞在しています。12月上旬に行われた帰還困難区域での調査の様子をお伝えします。

帰還困難区域でのフィールド調査
前日に仕掛けたネズミ捕獲のためのトラップの回収に向かいました。数匹のネズミが捕獲できたことを確認し、次の調査地に向かいます。

協力しながらトラップを回収中 協力しながらトラップを回収中
協力しながらトラップを回収中
調査地の空間線量率を確認 調査地の空間線量率を確認
回収したトラップを持って 回収したトラップを持って

2ヶ所目の調査地では残念ながらネズミは捕獲できていませんでした。ここではさらに沢を流れる水の放射性物質濃度を確認するため採水を行いました。

沢の水を採取 沢の水を採取

3ヶ所目の調査地では新たにトラップを設置し、同時にネズミの生息環境の放射性セシウム分布状況を確認するため樹木のサンプリングも行いました。

スギの幹の一部を採取する作業 スギの幹の一部を採取する作業
きれいに採取できたサンプル きれいに採取できたサンプル
設置場所を見失わないようピンクのリボンで印をつけながらトラップを設置 設置場所を見失わないようピンクのリボンで印をつけながらトラップを設置

アムノさんは限られた滞在期間中に多くのデータを得るため、共同研究者である石庭寛子特任講師の協力のもと精力的にサンプリングを行なっていました。ブルドーさんは日本での研修が終盤に差し掛かるなか帰還困難区域を訪れ、チョルノービリとの違いなどを実感し興味深く感じているようでした。

帰還困難区域でアカネズミの試料採取・調査を行いました。

令和4年8月30日、石庭寛子特任講師が帰還困難区域にてアカネズミ試料採取・調査を行いました。

石庭特任講師は、主にげっ歯類(ネズミのなかま)など野生動物を対象に、放射線被ばくの影響について研究を行っています。今回調査対象としたアカネズミは日本の固有種で、北海道から九州まで広く生息しています。福島第一原発事故による避難指示区域は縮小しつつありますが、放射線への不安は払しょくしきれません。帰還困難区域に生息するこうした野生動物を調査することで、人への影響リスクを予測したり、判断基準を提供することができます。

なお試料採取・調査は共同研究機関の協力のもと、自治体・土地所有者の許可を得て実施されました。

調査地に到着したら、はじめにネズミを捕獲するためのわなを準備します。ネズミをおびき寄せるためわなの中に用意するえさは、ひまわりのタネなどを使用することもあるそうですが、今回は小さく切った食パンをピーナッツバターで炒めたものを使用しました。

わなにえさを入れている様子。 わなにえさを入れている様子。

わなを仕掛ける際は、各場所の環境の特徴として放射線量を計測・記録します。記録した放射線量から各場所の平均値を算出します。
調査地は平たんな場所もあれば、道がないようなとても険しい山道を歩くこともありましたが、小雨で涼しい気温の中、共同研究者と分担しながら効率よく作業は進められました。
帰還困難区域内の数か所にわなを設置し、この日の作業は終了です。

石庭特任講師がわなを仕掛けている様子。 石庭特任講師がわなを仕掛けている様子。
放射線量を計測している様子。 放射線量を計測している様子。

ネズミは夜行性であるため、夜間に活動して罠に入ります。そのため捕獲状況の確認は、翌日に行います。ネズミがかかっているかを確認しながらわなを回収し、研究所にて解剖を行いました。

回収してきたわな。ピンクの札にはわなの設置場所が記録されている。 回収してきたわな。ピンクの札にはわなの設置場所が記録されている。

解剖は体長・足の大きさ・体重・各部位の重さなど様々な計測を行いながら進められ、採取されたサンプル(各部位や血液)は、冷凍やホルマリン漬けなど今後の解析に適した方法で保存します。今後、各サンプルは放射性セシウムの蓄積や放射線被ばくによる影響を調べるためのDNA解析などに使用されます。

体長を計測している様子。 体長を計測している様子。
記録用の撮影の様子。 記録用の撮影の様子。

石庭特任講師のアカネズミ試料採取・解剖をご紹介しました。
今後、他の先生方の研究や調査の様子なども紹介していきます。

令和5年2月21日 第11回IERセミナーを開催しました。<大学院生>

日 時: 2023年2月21日 14:00~16:00
演 題: 1) Estimation of annual Cesium-137 influx from the FDNPP to the coastal water nearby
(佐藤俊、共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻博士前期課程1年)
2) Elucidation of 137Cs transfer processes in terrestrial and aquatic ecosystems in the difficult-to-return zone
(山口大輔、共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻博士前期課程1年)
3) Influence of Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident, explored with land transaction data on municipalities in Fukushima Prefecture
(庄司信利、共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻博士前期課程2年)
4) The dynamics of H-3 and Cs-137 in marine biota around the Rokkasho Reprocessing Plant, and on-going research at Fukushima
(大槻哲、共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻博士後期課程1年)
佐藤俊さん 佐藤俊さん

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究内容の研鑽を目的に、所属研究者による研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

令和4年度第11回IERセミナーは2月21日に開催され、IER教員の指導のもとで研究活動を行っている福島大学大学院共生システム理工学研究科博士課程1名、修士課程3名がそれぞれの研究課題の進捗状況について英語で発表を行い、研究者、大学院生ら19名が参加しました。

発表後には、指導教員や他の分野の研究者から意見やアドバイスが多々挙げられ、活発な質疑応答が行われました。

山口大輔さん 山口大輔さん
庄司信利さん 庄司信利さん
大槻哲さん 大槻哲さん
質疑応答の様子 質疑応答の様子
質疑応答の様子

令和5年2月7日に第10回IERセミナーを開催しました。<大学院生>

日 時: 2023年2月7日 14:00~16:00
演 題: 1) Elucidation of radiocesium contamination mechanism of fish using euryhaline fish as a model
(馬目由季、共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻博士前期課程1年)
2) Studies on 137Cs fractions in archived soil samples collected from Fukushima Prefecture in 2011
(柳川賢斗、共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻博士前期課程1年)
3) Long-term dynamics of 137Cs accumulation at an urban pond
(黒澤萌香、共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻博士後期課程1年)
4) Synthesis and application of a supramolecule-based conjugate material for the separation of radionuclides from aqueous matrices
(Rashedul Islam Ripon、共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻博士後期課程1年)
馬目由季さん 馬目由季さん

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究内容の研鑽を目的に、所属研究者による研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

令和4年度第10回IERセミナーは2月7日に開催しされ、IER教員の指導のもとで研究活動を行っている福島大学大学院共生システム理工学研究科の博士課程2名と修士課程2名がそれぞれの研究課題の進捗報告を行い、研究者、大学院生ら22名が参加しました。

M1、D1の学生にとって初めての報告となりましたが、それぞれ英語にて説明を行いました。

発表後には、指導教員や他の分野の研究者から意見やアドバイスが多々挙げられ、活発な質疑応答が行われました。

柳川賢斗さん 柳川賢斗さん
黒澤萌香さん 黒澤萌香さん
Rashedul Islam Riponさん Rashedul Islam Riponさん
質疑応答の様子 質疑応答の様子
質疑応答の様子
全体の様子 全体の様子

2023年1月、オランダライデン大学の研究者を受け入れました。

IERはオランダライデン大学統治国際情勢学部安全保障国際問題研究所(ISGA)との学術交流協定に基づき、令和5年1月20日から26日までの1週間、危機管理・安全管理が専門の研究者アンドレア・バートルッチ助教とジェイク・ライト助手を受け入れました。ISGAは、福島震災・原発事故を多面的に学習するために修士課程科目「ケーススタディ福島」を開講していて、昨年3月にはIERの教員2名がオンライン講義を提供しました。

上記教育プログラムの拡充版を構築するために福島の震災・津波・原発事故とその後の復興について視察することが今回の来訪目的で、震災・原発事故関連の資料館やアーカイブ施設、自治体等を訪問しました。

1月21日と22日は、公害資料館ネットワーク主催のフォーラムに参加。「ふくしまの経験を継承する」トークセッションでは経験継承に取り組む方々から震災当時の困難や未来に向けた取り組みについて話題提供がありました。翌日の浜通り見学では、常磐炭田ヘリテージ、東日本大震災・原子力災害伝承館、とみおかアーカイブミュージアム等を訪れさまざまなアーカイブ資料を直に目にすることができました。

1月23日から25日は、廃炉資料館、中間貯蔵施設、請戸小学校等々を見学。富岡町、大熊町、浪江町を訪問して「震災・事故当時の状況、避難と帰還、町の復興政策等」について各担当者から詳しく伺い、富岡町や大熊町ではまちづくりに取り組む団体から帰還や移住に向けた取り組みについてもご紹介いただきました。また、双葉町から避難し帰還を予定している方および浪江町から福島市に避難されている方を訪問し、帰還に向けた課題についてのお考えをお聞きしました。

1月26日は、オランダと古くからつながりのある郡山市を訪問、郡山市の原子力災害からの復興対策やオランダ王国との交流について説明を伺った後、ライデン大学研究者からの今後の政策に関する質問については品川市長がさまざまな事例をもとに回答くださいました。

ライデン大学のお二人は、今回の福島訪問で多くのことを直接見聞きして学べたことの収穫は大きく、教育プログラムに反映させて学生たちに伝えたいとおっしゃっていました。IERとしても、国際的な教育ネットワークやプログラムが豊富なライデン大学と今後学生交流も視野に入れて研究・教育活動において分野横断的に協力を進めて行きたいと思います。

浜通りの自治体から震災当時の状況や復興への取組について話を聞きました。(写真は大熊町) 浜通りの自治体から震災当時の状況や
復興への取組について話を聞きました。(写真は大熊町)
避難されている方からも話を伺いました。 避難されている方からも話を伺いました。
郡山市の品川市長から復興に向けた取り組みについて説明を受けました。 郡山市の品川市長から復興に向けた取り組みについて説明を受けました。

令和5年1月31日(火) IER特別セミナー (オンライン)を開催しました。<カシパロフ教授>

日  時: 2023年1月31日(火)16:00 - 18:00
場  所: オンライン(Zoom)
外部講師: ヴァレリ・カシパロフ教授、ウクライナ国立生命環境科学大学 ウクライナ農業放射線研究所 所長
タイトル: Soil and plant factors affecting mobility and bioavailability of radionuclides.
Countermeasures

環境放射能学専攻博士前期課程の一部授業では、著名な研究者を講師として招き、その授業を「特別セミナー」として学内の教員にも公開しています。

1月31日に開催されたヴァレリ・カシパロフ教授による「陸域放射生態学」のオンライン講義には、環境放射能学専攻の修士・博士課程の学生をはじめ、IERのメンバーや客員研究員が参加しました。 この講義でカシパロフ教授は、異なる植物種による異なる放射性核種の葉面および根への取り込みと、土壌の種類、放射性核種の物理化学的形態、土壌中の水分、有機物、競合イオン(栄養分)の含有量などの取り込み強度を左右する要因について説明しました。また、カシパロフ教授は、各国の食品および農作物中の放射性核種の許容レベル(国家基準)を紹介し、広範囲の対策リスト(汚染土壌の除去、洗浄されている土壌の追加、浅・深耕、土壌の除去と埋め戻し、肥料、石灰化、プルシアンブルーの適用、食品の加工、動物への清浄飼料など)の適用と効率について述べ、地域の条件を考慮した費用対効果分析に基づく、対策適用の意思決定に役立つソフトウェア開発の事例も示しました。質疑応答では、移行係数の推奨値で運用した場合の放射線評価の不確かさ、プルシアンブルーの水産・畜産への適用、放射能汚染された植物製品からのエタノールやアルコール飲料の製造、食品・農作物の許容レベルの設定など、様々な質問があがりました。

令和5年1月30日(月) IER特別セミナー (オンライン)を開催しました。<レブチュック博士>

日  時: 2023年1月30日(月)16:00 - 18:00
場  所: オンライン(Zoom)
外部講師: スヴャトスラフ・レブチュック博士、ウクライナ国立生命環境科学大学 ウクライナ農業放射線研究所 主任研究員
タイトル: Radioecological monitoring: schedule, results, optimization

環境放射能学専攻博士前期課程の一部授業では、著名な研究者を講師として招き、その授業を「特別セミナー」として学内の教員にも公開しています。

1月30日に開催されたスヴャトスラフ・レブチュック博士による「陸域放射生態学」のオンライン講義には、環境放射能学専攻の修士・博士課程の学生、IERのメンバーや客員研究員が参加しました。 講義では、住民の放射線防護を確保し、放射線生態学的知識を得るための手段としての放射線生態学的モニタリングについて話しました。レブチュック博士は、モニタリングの種類(線源、環境、個人モニタリング)について説明し、典型的なモニタリングの要件と手順、さらに平常時および放射線緊急時のさまざまな段階でのモニタリングの具体的な内容を示しました。また、現地の事例を紹介し、放射生態学的モニタリングがどのように行われているかを説明しました。質疑応答では、局所的な事故を検出するための日常的なモニタリングの有効性、モニタリングの最適化と科学的データを得るための可能性の向上、90Srの移動と穀物への移行などに関する問題が取り上げられ、積極的に質問があがりました。

令和5年1月27日(金) IER特別セミナー (オンライン)を開催しました。<カシパロフ教授>

日  時: 2023年1月27日(金)16:00 - 17:50
場  所: オンライン(Zoom)
外部講師: ヴァレリ・カシパロフ教授、ウクライナ国立生命環境科学大学 ウクライナ農業放射線研究所 所長
タイトル: Field sampling and statistics in radioecology

環境放射能学専攻博士前期課程の一部授業では、著名な研究者を講師として招き、その授業を「特別セミナー」として学内の教員にも公開しています。

1月27日に開催されたヴァレリ・カシパロフ教授による「陸域放射生態学」のオンライン講義には、環境放射能学専攻の修士・博士課程の学生をはじめ、IERのメンバーや客員研究員が参加しました。 この講義でカシパロフ教授は、環境試料中の放射性核種の沈着量と濃度の時間的・空間的変動、および放射生態学的モニタリングや放射線評価を実施する際に直面する不確実性へのアプローチについて説明しました。限られた観測区域内で測定される放射能汚染レベルの不均一性の原因となる規則的、スポット的、ランダムな成分、また、サンプリンググリッド、サンプリングエリア、サンプル数、地域的要因がモニタリングデータの精度に与える影響について議論されました。土壌沈着量、植物汚染量、移行係数などの平均値を所定の精度で得るための試料採取数についてアドバイスを行いました。質疑応答では、放射生態学的モニタリングにおける外れ値の問題、カリウムや安定ヨウ素などの元素分布の局所的な不均一性、魚の汚染度を把握するためのサンプリング要件、魚による90Srの取り込みメカニズムなどについて、活発な議論がありました。

令和5年1月26日(木) IER特別セミナー (オンライン)を開催しました。<レブチュック博士>

日  時: 2023年1月26日(木)16:00 - 17:50
場  所: オンライン(Zoom)
外部講師: スヴャトスラフ・レブチュック博士、ウクライナ国立生命環境科学大学 ウクライナ農業放射線研究所 主任研究員
タイトル: Terrestrial radioecology studies in Chornobyl

環境放射能学専攻博士前期課程の一部授業では、著名な研究者を講師として招き、その授業を「特別セミナー」として学内の教員にも公開しています。

1月26日に開催されたスヴャトスラフ・レブチュック博士による「陸域放射生態学」のオンライン講義には、環境放射能学専攻の修士・博士課程の学生をはじめ、IERのメンバーや客員研究員などが参加しました。 講義で、レブチュック博士は、チョルノービリ原発事故後の立ち入り禁止区域における陸上生態系の長期的な放射生態学的研究について、土壌中の放射性核種の地球化学的および生物学的移行に焦点を当てながら、説明しました。137Cs、90Sr、Pu同位体、ClとIの放射性同位体などの移行に関する膨大な実証データを示し、元素の特性や、土壌条件(pH、有機物含有量、湿度物理形態など)から明らかにされた規則性を説明しました。また、土壌サンプリングへの必要条件が議論され、代表的かつ正確なサンプリングの実施方法について、実践的なアドバイスがありました。質疑応答では、不飽和土壌帯から帯水層への放射性核種の移行に関する問題、チョルノービリと福島における異なる土壌条件での放射性核種の分配係数、放射性核種の移行のモデル化、チョルノービリの研究結果の入手方法などについて、活発な質問が出されました。

令和5年1月12日(木) IER特別セミナーを開催しました。<信濃教授>

日  時: 2023年1月12日(木)午前13:30 - 15:00
場  所: IER 6階大会議室・オンライン(Zoom)
外部講師: 信濃卓郎 教授、北海道大学(外部講師)
タイトル: Agricultural radioecology studies and agricultural practice in Fukushima

1月12日、信濃卓郎教授を講師に迎え、IER特別セミナー「陸域放射生態学」を開催しました。セミナーには、IER大学院の修士・博士課程の学生、IERメンバーおよび福島大学の他部署の職員などが参加し、講演の様子はオンライン(Zoom)でも配信されました。主な内容は、福島の原発事故が農業に与えた影響と、植物の除染、土壌の除染、植物による放射性セシウムの取り込みの軽減等による対策についてでした。農業に残された課題として、移行係数の適用性、土壌の種類による違い、放射性セシウムの取り込みを抑制する交換性カリウムの役割について議論しました。質疑応答では、植物の除染に関する問題、対策が土壌に与える影響、カリウム肥料やプルシアンブルーが植物の放射性セシウムの取り込みに与える影響、農業対策の費用対効果分析、福島県内の放射能汚染地における農業の展望などについて、会場から活発な質問がありました。

令和4年12月10日(土)いわき市にて第18回研究活動懇談会を開催しました。

シンポジウムチラシPDF

いわき市の産業創造館にて、研究活動懇談会を開催しました。この懇談会は、研究成果を地域に還元するために2016年より定期的に開催しているもので、当研究所にとって重要な活動です。
詳しくはこちらをご覧ください

ウクライナ人研究者が中間貯蔵施設と原発を視察しました。

IERはSATREPSチョルノービリプロジェクトの一環として、ウクライナ人研究者オレナ・ブルドー博士を今年8月から12月までの4か月半、技術研修のために受け入れました。 ブルドー博士はチョルノービリ原発事故後の野生動物への放射線影響を研究しています。研修では、日本での原発事故後の取り組みを学ぶため、除染活動で発生した除去土壌を貯蔵する中間貯蔵施設と福島第一、第二原発を視察しました。原発視察には、福島に短期滞在し野外調査を行っているソロモン・アムノ博士(カナダ・サスカチュワン大学)も参加しました。

11月25日中間貯蔵施設見学

はじめに中間貯蔵工事情報センターで、除去土壌の運搬状況や貯蔵工事の状況について説明を受けた後、バスに乗り込み中間貯蔵施設の見学に向かいました。

バスに乗って出発!
土壌を詰め込んだ袋が開封され、石や枝など土以外のものを取り除く作業を見学 土壌を詰め込んだ袋が開封され、石や枝など土以外のものを取り除く作業を見学

中間貯蔵施設は福島県双葉町、大熊町にまたがる福島第一原発を取り囲むように整備され、その面積は16㎢におよびます。今回見学したのは施設の南側、大熊町に位置する部分です。施設内には住居や学校、公民館、神社など、かつて人々が生活していた痕跡が残り、中には2011年3月11日の地震発生当時のまま残されている様子を見ることができる特別養護老人ホームもあります。

高台から中間貯蔵施設全体を見渡す 高台から中間貯蔵施設全体を見渡す
福島県内各地の仮置き場から集められたフレコンバッグ(除去土壌を詰めた袋) 福島県内各地の仮置き場から集められたフレコンバッグ
(除去土壌を詰めた袋)

チョルノービリでは福島県内で実施されているような大規模な除染は行われず、立入禁止区域は36年前の事故発生直後から再編されていません。ブルドー博士は、広大な施設や、安心して暮らせる環境を取り戻すための除染活動、それに伴う除去土壌の処分作業について興味深い様子で説明を聞いていました。

12月5-6日 福島第一、第二原発見学

12月5日に福島第二原発、6日に福島第一原発を見学しました。第一・第二原発ともに地震後に津波に襲われ核燃料を冷やすために必要な電源を喪失しましたが、第二原発は外部からの電源を確保できたことで事故を防ぐことができ、第一原発では電源が確保できずに水素爆発に至りました。

東京電力の社員から、第二原発では地震発生直後の原発の状況や、津波による電源喪失後、どのように電源を確保し事故を防ぐことができたかについて説明を受けました。第一原発では各原子炉で事故に至った経緯、また現在進められている廃炉作業や、来年度以降に放出される予定のトリチウムを含んだALPS処理水について説明を受けました。

第二原発構内 第二原発構内
第二原発を見渡せる高台で記念撮影 第二原発を見渡せる高台で記念撮影
震災直後、第二原発の原子炉建屋に電源を引くため9㎞にわたって手作業で敷設されたケーブルの実物を観察する 震災直後、第二原発の原子炉建屋に電源を引くため
9㎞にわたって手作業で敷設されたケーブルの実物を観察する
第一原発見学前に、廃炉資料館で1~4号機がどのように重大事故に至ったかを学ぶ 第一原発見学前に廃炉資料館で1~4号機が
どのように重大事故に至ったかを学ぶ
第一原発ではALPS処理水が入ったボトルを手に取ってみました 第一原発ではALPS処理水が入ったボトルを手に取ってみました
第一原発敷地内の高台から事故を起こした1~4号機を望む 第一原発敷地内の高台から事故を起こした1~4号機を望む
集合写真

実際に原発を見学し、事故の重大さを改めて認識するとともに、現在は可能な限りの技術を結集して廃炉作業が進められていることや、できる限り汚染水を発生させないための懸命な努力が続けられていることがわかりました。ブルドー博士はチョルノービリ原発と福島原発との事故後の対応の違いなどが非常に印象深かったようで、盛んに質問をしていました。今回の視察が各々の今後の研究活動に活かされることを願います。

令和4年11月28日(月)第7回IERセミナーを開催しました。
<辰野研究員、ブルドー研修員>

日 時: 2022年11月18日(月)14:00~15:00
発表者: 辰野宇大 プロジェクト研究員
オレナ・ブルドー ウクライナ国立科学アカデミー原子力研究所研究員/SATREPSプロジェクト研修員
(発表順)
演 題: The contribution of Cesium rich microparticles to Cs concentration of river water and forest soil in Takase River watershed(辰野)
Radiation effects in Rodents from Chornobyl exclusion zone Ukraine(ブルドー)
辰野研究員 辰野研究員

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

11月28日に開催した令和4年度第7回IERセミナーでは、辰野宇大プロジェクト研究員と、SATREPSチョルノービリプロジェクトで研修生として受けいれているオレナ・ブルドー研究員が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら20名が参加しました。

辰野研究員はCsMP (Radioactive cesium-rich microparticles)と呼ばれる、高放射性セシウム含有粒子の土壌や河川中での分布・動態に関する研究について発表しました。CsMPは土壌中では比較的表面の層に分布していることや、河川へは雨天時に土壌侵食により流出するが、固液分配係数(Kd)への影響は小さいことなど、フィールド調査およびサンプル分析から得られた結果について発表しました。

ブルドー博士はウクライナ国立科学アカデミー原子力研究所の研究員で、今年8月からSATREPSチョルノービリプロジェクトのJICA研修員としてIERをはじめとした日本国内の研究施設で研修されています。SATREPSプロジェクトの一環として行っているクーリングポンド(チョルノービリ原発に冷却水を供給するための貯水池)周辺の野生動物に関する研究をはじめ、ウクライナで行ってきた研究の概要を説明されました。そして、日本での研修で学んだDNAや染色体の解析方法についても説明しました。

各発表後にはIER教授陣より様々な質問、コメントが挙がりました。

ブルドー博士 ブルドー博士

令和4年12月9日フランス大使館主催フォトコンテストの表彰式に参加しました。

フィリップ・セトン大使とファイナリスト(代理出席含む) フィリップ・セトン大使とファイナリスト(代理出席含む)

令和4年12月9日(金)、フランス大使館主催の第二回サイエンスフォトコンテスト「科学の幽玄-Beauté cachée de la science(科学に秘められた美)」の表彰式が行われ、ファイナリスト12名に選ばれたフランス人共同研究者Andre GILLES博士(アンドレ氏)の代理として難波所長が出席しました。

「金継ぎ」と題したアンドレ氏の写真はカエルの目のアップで、カエルの金色の虹彩が壊れた陶磁器を修復する日本の金継ぎのようにも見える作品です。共同研究チームは電離放射線がアマガエルのDNAに与える影響(損傷と修復)を研究しています。

このコンテストは、科学に秘められた美に焦点を当てた写真が対象で、最終候補作品はオンラインで公開され、誰もが受賞作品に投票できるようになっています。アンドレ氏の作品は惜しくも入賞には至りませんでしたが、重要なのは、写真の背景にある研究プロジェクトや研究者間の協力にも光が当たるということです。

参加者は、会場に展示された作品を見ながら、大使や大使館科学技術部の方々はじめ、幅広い分野の研究者や企業のCSR関係者とともに、科学や芸術、今後の交流などについて活発に会話を交わしていました。今後さらに、日仏のコラボレーションが促進され、深化していくことが期待されます。
参考URL(最終候補と受賞作品)https://concoursyugen.jp.ambafrance.org/ja/

アンドレ氏の写真の前で大使、大使館員と歓談 アンドレ氏の写真の前で大使、大使館員と歓談

令和4年12月6日 IRSNの理事長が来所しました。

ジャン=クリストフ・ニール理事長(左)と三浦学長(右) ジャン=クリストフ・ニール理事長(左)と三浦学長(右)

令和4年12月6日(火) フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)のジャン=クリストフ・ニール理事長とシルヴァン・ペティ国際協力部長が来所され、学長表敬訪問と、IER研究者たちとの懇談を行いました。

三浦浩喜学長との懇談では、三浦学長が福島原発事故後の対応についてIRSNのサポートにあらためて感謝の意を表し、ニール理事長から福島大学との強力な連携と福島での共同研究の継続実施に謝辞が述べられました。

IERの研究者との懇談では、難波謙二所長、ヴァシル・ヨシェンコ教授、脇山義史准教授、フランスから来日しているシャボシュ・ピエール=アレクシス客員研究員が、両機関で進行中のプロジェクト(カエル、ミツバチ)と展開が期待される森林土壌などの研究活動や、日仏間の取り組み(ミタテ ラボ)について発表しました。両者で研究者の交流計画についても確認し合い、さらなる進展が期待されます。

IERの研究者と懇談をしている様子 IERの研究者と懇談をしている様子
IERの研究者と懇談をしている様子

令和4年10月29日(土)、30日(日) 環境放射能学セミナー in浜通りを開催しました。

10月29日(土)、30日(日)の2日間にわたり、「環境放射能学セミナー in 浜通り」と題した特別セミナーを福島県双葉町、大熊町、富岡町で開催しました。これは、(公財)福島イノベーション・コースト構想推進機構が実施する「大学等の「復興知」を活用した人材育成基盤構築事業」の一環として実施したものです。IERは、長崎大学による採択事業「災害・被ばく医療科学分野の人材育成による知の交流拠点構築事業」に共同申請校として参画しています。セミナーには、福島大学および福島工業高等専門学校から24名の学生が参加しました。

1日目は、双葉町にある東日本大震災・原子力災害伝承館での座学から始まりました。IERの教授陣4名が原発事故による環境影響について講義したほか、伝承館語り部による講和も行われました。

午後は伝承館の展示施設を見学した後、双葉駅周辺や中間貯蔵工事情報センターを見学。住民の帰還が始まったばかりの双葉町の取り組みや、除染活動により発生した除去土壌の処理について参加学生から多くの質問が挙がりました。

双葉町役場の橋本様に双葉町の取り組みについて紹介いただきました。 双葉町役場の橋本様に双葉町の取り組みについて紹介いただきました。
中間貯蔵工事情報センターの見学 中間貯蔵工事情報センターの見学
「ゼロカーボンタウン」を目指す大熊町も視察 「ゼロカーボンタウン」を目指す大熊町も視察

2日目午前は東京電力廃炉資料館ととみおかアーカイブ・ミュージアムを見学し、午後は理系大学院生による研究発表およびグループディスカッションが行われました。今回、学生の皆さんには文系理系を問わず参加いただきました。そのため参加者からは、ディスカッションを通して様々な考え方や放射能に対する認識の違いなどを知ることができたといった感想が聞かれました。

廃炉資料館の見学 廃炉資料館の見学
とみおかアーカイブ・ミュージアムの見学 とみおかアーカイブ・ミュージアムの見学
理系大学院生による研究発表。文系学生からも、多くの質問が飛び出しました。 理系大学院生による研究発表。
文系学生からも、多くの質問が飛び出しました。
グループディスカッション後の発表の様子 グループディスカッション後の発表の様子

IERでは今後も、原発事故被災地域の現状を直接見聞きする機会を学生に提供し、浜通り地域の復興に貢献する人材育成に携わりたいと考えています。

令和4年9月26日 第4回IERセミナー を開催しました。<金指研究員、和田准教授>

日 時: 2022年9月26日(月)14:00~15:00
発表者: 金指 努 プロジェクト研究員
和田 敏裕 准教授
(発表順)
演 題: Lepidostomatidae larvae uptake 137Cs from leaves and excrete particulate materials with 137Cs in streams(金指)
Remaining issues for Fukushima’s fisheries recovery and application of biology tags to track the horizontal / vertical movements of flatfish(和田)
金指プロジェクト研究員が発表している様子 金指プロジェクト研究員が発表している様子

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

9月26日(月)に開催した令和4年度の第4回IERセミナーでは、金指努プロジェクト研究員、和田敏裕准教授が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら20名が参加しました。

金指研究員は、渓畔林から渓流生態系への放射性セシウム移動プロセスを明らかにしようとしています。水生昆虫であるカクツツトビケラ科(Lepidostomatidae)の幼虫を用いた室内実験により、渓流に堆積した放射性セシウムを含む落葉を食べることによる放射性セシウムの取り込み、及び放射性セシウムを含む粒子状物質の排泄に関するプロセス解明を試みていて、現在まで明らかになった内容について発表しました。カクツツトビケラ科幼虫の137Cs濃度は、落葉や排泄物よりも低く、一方、排泄物の137Cs濃度は、落葉よりも高くなりました。このことから、幼虫は落ち葉から137Csよりも栄養分を多く吸収・蓄積しているため、相対的に137Cs濃度が幼虫では低くなり、排泄物では高くなると推察しています。今後、より多くのデータを得るために実験を継続するとともに、元素分析も行う予定です。

和田准教授は福島県の漁業復興に向けた課題と、水温・深度記録タグのホシガレイへの応用について発表を行いました。原発事故後に生じた漁業関連施設の津波被害や水産物の放射性セシウム汚染などの問題がほぼ収束する一方、福島原発港内で汚染された魚類の潜在的なリスク評価と魚類の移動生態の解明が、さらなる漁業復興に向けて重要です。水温・深度記録タグを装着したホシガレイの採捕個体のデータを解析することで、沿岸域での水平・鉛直移動を明らかにするとともに、原発港内への魚類の移出入に関する情報が得られました。今後は、トラフグなど他魚種への応用も視野に研究を進めていきます。

発表後には研究者による意見交換が行われ、活発な議論が交わされました。 

和田准教授が発表している様子 和田准教授が発表している様子
質問時の様子 質問時の様子
質問時の様子

令和4年8月29日 第3回IERセミナー を開催しました。
<シャボシュ外国人客員研究員、高田特任准教授、金子教授>

日 時: 2022年8月29日(月)14:00~16:00
発表者: ピエール-アレクシス・シャボシュ外国人客員研究員
高田兵衛 特任准教授
金子信博 教授(食農学類)
(発表順)
演 題: Refining fallout radionuclide baseline data to reconstruct soil redistribution rates in agricultural catchments of South America Quantifying the riverine sources of sediment and radiocaesium in the Pacific Ocean (Fukushima Pref.) (シャボシュ)
Distinct distribution of radio-Cs in river-sea system(高田)
Mycoextraction of radio-cesium and rehabilitation of Satoyama(金子)
シャボシュ客員研究員 シャボシュ客員研究員

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

8月29日に開催した令和4年度の第3回IERセミナーでは、日本学術振興会の招へい事業で外国人特別研究員としてフランスから来日し、本学の外国人客員研究員として受け入れているシャボシュ客員研究員、IERの高田特任准教授、食農学類からお越しいただいた金子教授が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら29名が参加しました。

シャボシュ客員研究員は、フランスの博士課程で行った、人工放射性核種(137Csとプルトニウム同位体)を用いた南米の集約的農業集落における土壌移動速度の復元に関する研究を発表しました。初めに南アメリカ大陸における核実験由来の137Cs分布図の作成に用いた手法について説明されました。この137Cs分布図は同大陸を対象として初めて作成されたもので、かく乱されていない土壌における137Csインベントリーの予測を可能とし、地球科学に関連する様々な手法を適用するための有用な参照データとなります。さらに、気候・環境の年代推定や復元を行うための強力なマーカーとなるプルトニウム同位体(239Pu、240Pu)を用いて、同大陸における放射性降下物の時間推移の精緻化を目指した研究についても紹介しました。最後に現在IERで行っている河川堆積物の放射性セシウムの供給源の定量評価や、河川から供給される福島県沿岸の放射性セシウムに関する研究について紹介しました。

高田特任准教授は、富岡川と富岡港から採取した水のrCs濃度を測定した結果、溶存態では河川水と海水でほぼ差がないが、懸濁態では海水が河川水の約1/3で、rCsの溶脱の影響があること、Kd値も海水は河川水の1/4であることを説明しました。rCsを画分別で(イオン交換、有機結合、可溶)抽出した結果、イオン交換画分は河川水の値が低く想定と異なったため、引き続きrCsの吸着挙動と河川流速の関係や懸濁粒子の特性等を明らかにする必要があると話しました。

金子教授は、食農学類で土壌生態学を専門に研究されています。セミナーでは、森林土壌の効率的な除染方法について発表しました。森林生態系の土壌食物連鎖における放射能汚染について説明した後、リターバッグ(落葉をメッシュバッグに入れて林床に置き微生物の働きで落葉が分解する)調査では放射性セシウムが想定以上に落葉に吸着されたこと、森林の樹木から作った木質チップを地面に敷設するとチップに菌類が生育し土壌から放射性セシウムがチップに移動することについて説明しました。

発表後には研究者による意見交換が行われ、活発な議論が交わされました。 

高田特任准教授 高田特任准教授
金子教授 金子教授
質問時の様子 質問時の様子
質問時の様子

令和4年10月31日 第6回IERセミナー を開催しました。
<平尾准教授、塚田教授、脇山准教授>

日 時: 2022年10月31日(月)14:00~15:30
発表者: 平尾茂一准教授
塚田祥文教授
脇山義史准教授
(発表順)
演 題: Investigation of atmospheric HTO concentration in Okuma(平尾)
Activity concentrations of 129I and 137Cs in crops and internal radiation exposure from foods(塚田)
Particulate 137Cs dynamics in the Niida river basin: impacts of decontamination(脇山)
平尾准教授 平尾准教授

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

10月31日に開催された令和4年度第6回目のIERセミナーでは、平尾准教授、塚田教授、脇山准教授が発表を行いました。IERの研究者、学生ら23人が参加しました。

平尾准教授は大気中トリチウム動態に関する研究について発表し、福島第一原発周辺等での観測結果をもとにした時空間変動と、その要因を風向風速等の環境因子の変動とともに説明しました。

塚田教授は、農作物中のヨウ素129およびセシウム137濃度に関する研究と、帰還困難区域での自家栽培作物や野生植物(山菜、果実など)による内部被ばくに関する研究について発表を行いました。前者については調査の結果、福島では原発事故由来のヨウ素129が検出されたものの、算出される内部被ばくはきわめて低いこと、後者については野生植物から一部基準値を超える濃度を検出したものの、内部被ばくへの影響は小さいことなどが説明されました。

脇山准教授は、浜通り北部を流れる新田川を対象に、周辺の除染活動が河川中のセシウム137動態に与えた影響についての研究結果を発表しました。また、大雨による増水時に採取したサンプルから得られた分析結果についても発表しました。

発表後にはさまざまな質問、コメントが飛び交い有意義な議論が交わされました。

塚田教授 塚田教授
脇山准教授 脇山准教授

令和4年10月24日 第5回IERセミナーを開催しました。〈大学院生〉

日 時: 2022年10月24日(月)14:40~15:30
発表者: 共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻 博士前期課程2年
河原梨花、Sam KOH
演 題: ・Radiation distribution images by using Compton camera at Hamadori, Fukushima Prefecture(河原)
・Feasibility Study on the Application of Monte Carlo Simulations to Airborne Radiological Survey for the Estimation of Atmospheric Radon and its Progenies(Koh)

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

10月24日に開催した令和4年度第5回目のIERセミナーでは、環境放射能学専攻博士前期課程2年の二人がこれまでの研究成果について発表を行いました。2月の修士論文最終試験に向けた中間発表的な位置づけです。セミナーにはIERの教職員や学生など16人が参加しました。

鳥居研究室でコンプトンカメラを使用した放射線分布の可視化に取り組む河原さんは、帰還困難区域で実施した測定調査の結果やそこから導かれる今後の課題について発表しました。

また平尾研究室のコーさんは、航空機モニタリング調査で得られた放射線データと光輸送計算を用いた、上空大気中のラドン222およびその壊変生成物の濃度推定に関する基礎研究について発表しました。

発表後には教員から質問やコメントが挙げられ、修士論文の完成に向けよい刺激となったようです。

研究発表をする河原さんとコーさん 研究発表をする河原さん
研究発表をする河原さんとコーさん 研究発表をするコーさん

令和4年10月24日(月) IER特別セミナー (オンライン)を開催しました。
<ヨシェンコ教授・ジョンソン博士>

日  時: 2022年10月24日(月)午前10:20 - 11:50
場  所: 環境放射能研究所 本棟6階 大会議室、オンライン(Zoom)
講  師: ヴァシル・ヨシェンコ教授(IER)
トーマス・ジョンソン 博士、コロラド州立大学教授(外部講師)
タイトル: Radioecology: History and Today

環境放射能学専攻博士前期課程の一部授業では、著名な研究者を講師として招き、その授業を「特別セミナー」として学内の教員にも公開しています。

10月24日、ヴァシル・ヨシェンコ教授とゲストスピーカーのトーマス・ジョンソン教授が共同で「環境放射能学Ⅱ」の講義を行いIERの大学院生と研究者が参加しました。放射生態学の歴史と現状に関する講義で、オンラインストリーミングでも配信されました。二人の講師は、放射生態学の成り立ち、目標、他の科学との関係、今後の課題と展望などについて相互に補いながら説明しました。実例をもとに、線量評価で使われる基本的な単位を説明、対策は詳細なリスク分析に基づいて正当化される必要があることを示しました。質疑応答では、福島原発のトリチウムを含有するALPS処理水の海洋放出計画に関する問題、トレーサーとしての放射性核種の利用、放射生態学プロジェクトにおけるステークホルダーの関与、放射生態学と保健物理学の関連性などについて、参加者から積極的な質問が出ました。

令和4年10月17日(月) IER特別セミナー (オンライン)を開催しました。
<シュタインハウザー 博士>

日  時: 2022年10月17日(月)午前16:00 - 17:30
場  所: オンライン(Zoom)
外部講師: ゲオルグ シュタインハウザー 博士、ウィーン工科大学原子力研究所
タイトル: Tracing anthropogenic radionuclides in the atmosphere

環境放射能学専攻博士前期課程の一部授業では、著名な研究者を講師として招き、その授業を「特別セミナー」として学内の教員にも公開しています。

10月17日(月)に開催したゲオルグ・シュタインハウザー博士による「環境放射能学Ⅱ」のオンライン講義には、環境放射能学専攻博士前期課程5名、博士後期課程大学院生、IERメンバー、福島大学他学類の学生・研究者を含む40名以上が参加しました。この講義でシュタインハウザー博士は、世界各地の原子力事故が大気中における人工放射性核種のグローバルモニタリングよって追跡できること(例えば、チョルノービリ事故はスウェーデンで大気放出が発見されて初めてソビエト連邦が公表した)、2017年に欧州モニタリングステーションネットワークで検出された未申告の106Ru(放射性ルテニウム)の大気中放出に関する調査を例に、核鑑識の進歩について話しました。また、放出された放射性ルテニウムと安定ルテニウム同位体の濃度比とその化学種組成から、放出源(ロシア、マヤーク核施設)の推定と発生シナリオの把握が可能になったことを説明しました。質疑応答では、ローカルおよびグローバルな原子力事象を検知するモニタリングネットワークのさらなる発展の見通し、大気放出量を追跡するための空中調査、衛星原子力施設での空中事故、有機および無機ヨウ素を含む空中放射性核種の化学形態の説明の必要性、放射性物質放出調査における情報公開と国際協力について議論しました。

令和4年10月5日(水)福島高等学校の皆さんが来所しました。

IERの概要や研究内容を説明 IERの概要や研究内容を説明

福島県立福島高等学校の1年生40名がIERを訪れ、施設見学を行いました。福島高等学校は文科省よりSSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)に指定されており、今回の見学はその活動の一環として行われたものです。IERの見学は約30分と短い時間でしたが、和田准教授から研究所の研究内容やサンプル処理、放射線計測などについて説明を受けました。

今回の見学を通して、放射能に関する研究に興味を持ち、大学院への進学や研究者への道を志すきっかけになれば幸いです。

ゲルマニウム半導体検出器を前に、放射線計測の仕組みを説明 ゲルマニウム半導体検出器を前に、放射線計測の仕組みを説明

令和4年11月2日(水)塚田祥文教授がIAEA Technical Meetingで招待講演を行いました。

日 付: 令和4年11月2日(水)~4日(金)
場 所: Mol, Belgium(ベルギー・モル)、現地及びオンライン
会議名: Technical Meeting on “The importance of communicating scientific facts: addressing radiation concerns in societies – the role of science technology and society. View from Belgium, Europe and Internationally”
タイトル: Joint investigation of 137Cs activity concentration in self-consumed crops produced by returnees in Namie, Fukushima.

令和4年11月2日(水)塚田祥文教授がIAEA Technical Meetingで招待講演(オンライン)を行いました。

Agendaはこちらから

令和4年10月4日 塚田教授が葛尾村にて調査を行いました。

令和4年10月4日(火)、塚田祥文教授が葛尾村の営農再開に向けた試験栽培を行っている水田にて、調査を行いました。
これは、葛尾村、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、および福島大学が共同で行っているプロジェクトの調査として実施されたものです。

塚田教授は、環境放射生態学を専門としており、土壌・灌漑水から作物への放射性核種の移行の解明などの研究を行っています。
今回の調査では、イネの収穫時期に合わせてイネと土壌採取を行いました。土壌の採取はハンドルを回しながら土コアを採取する器具を使用し、30cmほどの深さまで土コア6本のサンプルを採取しました。

塚田教授が採土器を使用している様子 塚田教授が採土器を使用している様子
このハンドルを回して掘っていく このハンドルを回して掘っていく
採土器で掘っている様子 採土器で掘っている様子
採土器で掘った後 採土器で掘った後

採取した土壌は研究所に持ち帰り、放射性物質の存在形態を調べ、どのくらい含まれているかを分析し、土壌や灌漑水からイネへの放射性物質の移行を調査します。

採土器で採取した土(サンプル) 採土器で採取した土(サンプル)

この調査は田植え後から月に2回継続して行っています。また、大熊町でも同様の調査を行っており、こうした調査は場所を変えながらこれまで5~6年ほど継続して行われています。
なお、農研機構では、土壌の肥料成分調査、コメの収穫量、食味など、それぞれの専門分野で調査をしています。
この調査を通して、特定復興再生拠点で安心して営農を再開し、安全な稲作ができるように調査を続けていきます。

令和4年9月30日(金) 学位記授与式が行われました。

ラハマン准教授と学位記を手にするフェルドウスさん ラハマン准教授と学位記を手にするフェルドウスさん

福島大学学位記授与式が行われ、IERで学ぶ学生が博士課程修了の日を迎えました。

バングラディッシュからの留学生フェルドウス・モハメド・アラムさんは、難波謙二教授、イスマイル・ラハマン准教授、高貝慶隆教授の指導のもと固相抽出システムを用いた水系マトリックスからの放射性核種の選択的分離について4年間研究を続け、博士号を授与されました。

また、研究科在学中の研究において、精力的に論文を執筆し投稿したことが評価され、学長賞を受賞しました。
学位記を手にしたフェルドウスさんの晴れやかな笑顔がとても印象的でした。 おめでとうございます!

難波所長と一緒に 難波所長と一緒に
IER4階ラハマン研究室のメンバーと。 IER4階ラハマン研究室のメンバーと。

令和4年8月19日 ウクライナへの機材引渡し式を行いました。

オンラインで行われた機材引渡式。スクリーン上右上がSAUEZM、エコセンターの関係者、左下がコルスンスキー大使、右下が松田大使 オンラインで行われた機材引渡式。スクリーン上右上がSAUEZM
エコセンターの関係者、左下がコルスンスキー大使、右下が松田大使

SATREPSチョルノービリプロジェクトでは、ロシアによるウクライナ侵攻により被害を受けたウクライナの共同研究機関へ機材供与を行っています。

8月19日には、チョルノービリに拠点をおく研究機関、国営特殊企業エコセンターへの線量計の納品に合わせ、ウクライナと日本をオンラインでつなぎ機材引渡式を行いました。 引渡し式にはIERとエコセンターのほかに、プロジェクトのウクライナ側代表機関であるウクライナ立入禁止区域管理庁(SAUEZM)やSATREPSプログラムの実施機関であるJICAが参加しました。さらにコルスンスキー駐日ウクライナ特命全権大使および松田ウクライナ駐箚日本国特命全権大使にもご参加を賜ることができました。

ご挨拶の中でコルスンスキー大使は、ザポリージャ原発がロシア軍の攻撃による危機にさらされる中での日本からの支援に感謝を述べられました。また松田大使からは、侵攻によりウクライナ国内の原子力施設の安全が脅かされる中、本プロジェクトの重要性がますます増しているとのお言葉をいただきました。そして日本政府として今後もウクライナ支援を続けていくとの意思が示されました。

難波教授からの目録贈呈の後、SAUEZMとエコセンターからは、ロシア侵攻後のチョルノービリ立入禁止区域の被害状況について説明され、日本からの支援に感謝を述べられると同時に、ロシア侵攻に断固として屈しないという強い意思表示がなされました。

SATREPSチョルノービリプロジェクトは本年度をもって終了する予定ですが、チョルノービリと福島という原発事故の経験で結ばれ縁が深いIERとしては、今後も何らかの形でウクライナ支援を継続したいと考えています。

機材供与について詳細はこちら
https://www.fukushima-u.ac.jp/news/Files/2022/08/kizai.pdf

SATREPSチョルノービリプロジェクトについてはこちら
https://www.jst.go.jp/global/kadai/h2803_ukraine.html

難波教授より目録を贈呈 難波教授より目録を贈呈
今回エコセンターに納品された線量計を紹介 今回エコセンターに納品された線量計を紹介
参加者で記念撮影 参加者で記念撮影

ウクライナ人研究者の研修を実施しています。

220826_オレナさん 福島大学三浦学長を表敬訪問

IERでは現在、ウクライナ人共同研究者、オレナ・ブルドーさんを研修生として約4か月間の予定で受入れています。この研修は、所長の難波謙二教授が研究代表者となり、IERの多くの研究者が参加しているSATREPSチョルノービリプロジェクトの枠組みで行われています。

8月19日に行われた研修受入れに関する記者会見では、難波教授と受入れ教員である石庭特任講師から研修の目的等について説明したほか、オレナさん自身もロシアによるウクライナへの侵攻開始から来日に至るまでの経緯を説明しました。

オレナさんはウクライナ国立科学アカデミー原子力研究所に所属しており、専門は放射線生物学です。12月上旬までの研修では、ヒトや野生動物の被ばく線量評価に関する最新技術を学びます。

研修内容等の詳細はこちら
https://www.fukushima-u.ac.jp/news/Files/2022/08/kennkyuusha.pdf

SATREPSチョルノービリプロジェクトについてはこちら
https://www.jst.go.jp/global/kadai/h2803_ukraine.html

記者会見にて、ロシア侵攻後のキーウの様子を紹介するオレナさん 記者会見にて、
ロシア侵攻後のキーウの様子を紹介するオレナさん
IER所属のウクライナ人教員と IER所属のウクライナ人教員と

令和4年8月8日 大学院生が釣獲調査を行いました。

220808_学生実習

令和4年8月8日、修士課程1年の大学院生4名が釣獲調査を行いました。これは環境放射能学専攻の必修科目である「環境放射能学演習」の一環として行われたものです。 なお、本釣獲調査は、福島県の特別採捕許可(特第4-14号)に基づき実施しています。

調査地への出発前に、調査の概要について和田准教授から説明がありました。調査地の特徴や生息する魚の原発事故後の放射性セシウム濃度の推移などを頭に入れて、さあ出発です。

調査は真夏の日差しが照り付ける中での作業となりました。学生の皆さんは慣れない手つきで竿を操りながらも、和田准教授のアドバイスを受けて無事一人1匹ずつサンプルとなる魚を釣ることができました。

学生が釣りをしている様子
学生が釣りをしている様子
学生が魚を釣り上げた様子
学生が魚を釣り上げた様子
学生が魚を釣り上げた様子

ちなみにこの調査地では外来魚のチャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)が近年大繁殖し、在来魚を駆逐しつつあることが問題になっています(論文へのリンク)。今回の調査でも釣れた魚の多くがチャネルキャットフィッシュでした。
また調査地(水中)の放射性セシウム濃度を計測するための採水も同時に行われました。

採水をしている様子
学生が魚を釣り上げた様子
学生が魚を釣り上げた様子

お昼休憩の後は、サンプルの処理について学びます。
和田准教授が慣れた手つきで魚を三枚におろしを実演すると、次は大学院生の番です。鋭くとがった棘(キョク)や包丁の扱いに気を付けながら、皆さんもなんとか三枚おろしに仕上げました。

保存容器U8にいれた「なめろう」

その後「なめろう」を作る要領でミンチ状にしたものをU8(ユーハチ)と呼ばれる容器に詰め、ゲルマニウム半導体検出器(ゲルマ)で測定する準備が整いました。
最後にゲルマにサンプルをセットし、測定を開始したところでこの日の実習を終えました。

大学院生の研究テーマは様々ですが、今回の演習では魚類サンプルの捕獲から計測まで一連の流れを学びました。
調査地が近く、アットホームな雰囲気で教員から研究手法を学ぶことができるのも、環境放射能学専攻の魅力ですね。

保存容器U8にいれた「なめろう」

令和4年6月30日 大学院生が中間貯蔵施設を見学しました。

処理された除染廃棄物集積場 処理された除染廃棄物集積場

令和4年6月30日、大学院生5名(環境放射能学専攻博士前期課程4名、環境放射能学専攻博士後期課程1名)と塚田教授が飯舘村長泥地区および大熊町の中間貯蔵施設を視察しました。

大学院生らは、帰還困難区域に指定されている飯舘村長泥にある除染廃棄物処理施設と、処理済み除染廃棄物を盛土や圃場整備などへ活用した地区、また大熊町の大型中間貯蔵施設を視察しました。現在進められている除染廃棄物の処理処分方法を理解し、質疑応答では今後の課題などについて新たな問題を認識したようでした。

除染廃棄物の処理手順の説明を受ける学生 除染廃棄物の処理手順の説明を受ける学生
除染廃棄物を再生資材化し盛土に活用した圃場を見学中の様子 除染廃棄物を再生資材化し盛土に活用した圃場を見学中の様子
高台から見た東京電力福島第一原子力発電所 高台から見た東京電力福島第一原子力発電所
中間貯蔵土壌貯蔵施設 中間貯蔵土壌貯蔵施設

令和4年6月29日(水) IER特別セミナー (オンライン)を開催しました。<ジョンソン博士>

日  時: 2022年6月29日(水)午前10:20 - 11:50
場  所: オンライン(Zoom)
外部講師: トーマス・ジョンソン 博士、コロラド州立大学教授
タイトル: External dose calculations

環境放射能学専攻博士前期課程の一部授業では、著名な研究者を講師として招き、その授業を「特別セミナー」として学内の教員にも公開しています。

6月29日に開催されたトーマス・ジョンソン教授による「放射生態学」のオンライン講義には、環境放射能学専攻の修士学生5名とIERのメンバー8名が参加しました。
この講義でジョンソン教授は、ガンマ線やベータ線による外部被ばく線量の基礎的な計算方法を紹介し、低線量による健康影響評価の定義について説明しました。
134Cs と137Csの比ガンマ線放射定数や、点・線・面といった形状のガンマ線源からの線量の計算例で講義は大いに盛り上がり、VARSKIN等の線量計算ツールだけでなく、JAEA やBrookhaven National Laboratoryの核データベースへの有益なオンラインリンクの紹介まで及び、大変貴重で有意義な話を聞くことができました
質疑応答では、空間線量率に対する比ガンマ線放射定数や遮蔽効果の計算精度について参加者と議論が交わされ、日本と米国コロラド州の空間線量率や線源の比較についても言及されました。

<5月24日のセミナー記事はこちら>

令和4年6月28日(火) IER特別セミナー (オンライン)を開催しました。<渡辺博士>

日  時: 2022年6月28日(火)午前10:20 - 11:50
場  所: オンライン(Zoom)
外部講師: 渡辺 嘉人 博士、量子科学技術研究開発機構 放射線医学研究所
タイトル: Effects of Fukushima accident on plants and animals

6月28日に開催された渡辺嘉人氏による「放射線影響学」のオンライン講義には、環境放射能学専攻5名と、IERのメンバー数名が参加しました。冒頭、渡辺博士は、標準動物および植物(RAPs)や誘導考慮参考レベル(DCRL)といった環境放射線防護のための基本的な概念を紹介し、ERICAアセスメントツール*におけるその実用性について説明しました。そして、福島原発事故後の大熊町の陸上と海洋生態系のRAPsの線量率を推定して、DCRLと比較することで放射線のリスク評価を行いました。さらに話題は、福島原発事故後に観察された野生動植物の放射線影響を明らかにした論文の総説、チョルノービリ原発事故による野生生物への影響、野外と実験室での放射線影響の違いを解釈する際の問題点、日本のモミの形態変化に関する研究の進展、そして渡辺博士が開発したモミの新しい線量測定モデルまで、幅広く多岐にわたりました。参加者は、照射時期によるモミの形態異常発生の違いや、新しい線量評価モデルとERICAアセスメントツール*の線量評価アプローチとの主な違いについて議論しました。

* ERICAアセスメントツール: EUの研究プロジェクトERICA(2004-2007年)で開発された、放射能濃度を入力すると線量率を計算し、リスク判定を行うコンピュータソフト。

<6月21日のセミナーの記事はこちら>

令和4年6月27日 第1回IERセミナー を開催しました。
<五十嵐特任講師、グシエフ特任准教授>

日  時: 2022年6月27日(月)14:00~16:00
発表者: 五十嵐 康記 特任講師
マキシム・グシエフ 特任准教授(発表順)
演 題: Progress in FY2021 and plans for FY2022 (五十嵐)
Overview of research plans in Environmental Isotopes Modeling(グシエフ)
五十嵐特任講師発表の様子 五十嵐特任講師発表の様子

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

6月27日に開催した令和4年度の第1回IERセミナーでは、五十嵐特任講師、グシエフ特任准教授が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら31名が参加しました。

五十嵐特任講師は、阿武隈川中流域の河川水中の溶存および粒子状137Cs放射能濃度を長期的に調査した結果に加えて、今後の研究の展望や、SATREPSチョルノービリプロジェクトなどについて発表しました。

今年度IERに着任したグシエフ特任准教授は今回がIERセミナーでの初めての発表となりました。河川流域や地下水中の放射性物質の挙動に関するモデリングや環境トレーサーなどの研究を紹介しました。また、SATREPSチョルノービリプロジェクトに関する予備的な分析結果や、環境同位体モデリングに関する研究計画など、最近の活動内容やこれからIERで行っていく研究の概要について発表しました。

発表後には研究者による意見交換が行われ、活発な議論が交わされました。

質問時の様子 質問時の様子
グシエフ特任准教授発表の様子 グシエフ特任准教授発表の様子
発表時全体の様子 発表時全体の様子

令和4年6月21日(火) IER特別セミナー (オンライン)を開催しました。<渡辺博士>

日  時: 2022年6月21日(火)午前10:20 - 11:50
場  所: オンライン(Zoom)
外部講師: 渡辺 嘉人 博士、量子科学技術研究開発機構 放射線医学研究所
タイトル: Biological effects of radiation in Fukushima

環境放射能学専攻博士前期課程の一部講義では、著名な研究者を講師として招き、その講義を「特別セミナー」として学内の教員等にも公開しています。

6月21日に渡辺嘉人博士による「放射線影響学」のオンライン講義が開催され、環境放射能学専攻の大学院生5名と、IERのメンバー4名が参加しました。講義では、放射線影響の基本的なメカニズム、異なる種類の放射線(a線, b線, g線)による外部被ばくと内部被ばく、ヒトに対する確定的影響および確率的影響、g線照射施設での長期実験結果に基づいた放射線感受性の種間差と染色体体積への依存性について説明されました。また、チョルノービリや福島の動植物(ヨーロッパアカマツ、ニホンアカマツ、モミ、メダカ、ネズミなど)に観測された放射線障害の事例を紹介し、それらの染色体異常頻度の線量依存性を分析しました。質疑応答では、福島の避難区域で観測されたネズミの放射線影響について、詳細な議論が行われました。

<6月28日のセミナーの記事はこちら>

「写真展 ウクライナを思う」を開催しました。

日  時: 2022年4月15日(金)~18日(月)
場  所: 福島市清水「ヒロヤギャラリー」
写真展@ヒロヤギャラリーの様子写真展@ヒロヤギャラリーの様子

「写真展 ウクライナを思う」
4月15-18日に福島市清水のヒロヤギャラリーで、チャリティー写真展を実施しました。

 開催した4日間で、のべ295名の方にご来場いただき、502,945円のご寄付を賜りまして誠に有難うございました。皆様方の温かいご支援に、あらためて心より厚く御礼申し上げます。いただいた寄付金は、全額ウクライナ駐日大使館に寄付いたしました。大使館には、ウクライナ人避難者の生活支援や戦災からの復旧・復興に役立ていただくようお願いしています。

また、チャリティー写真展開催にあたり、駐日ウクライナ特命全権大使セルゲイコルスンスキー閣下からお手紙をいただきました(下、参照)。

来場頂いた皆様には、SATREPS で実施している国際プロジェクトやチョルノービリ(チェルノブイリ)での研究調査の様子だけでなく、キーウ(キエフ)の美しい街並みや親切で優しいウクライナの人々、ウクライナでの日常の風景をご覧になって、現在の戦争の過酷さをウクライナ人の身になって感じていただいたようです。

開催前や開催中にメディアで取り上げていただき、多くの来場者につながったものと思います。なにより、全ての方がウクライナを支援したいという思いで来場されたように感じられました。また、福島県内でも各所でウクライナからの避難者受入準備が進んでいることも写真展来場者を通じて確認できました。

 さらに、今回の写真展を別の場所でも開催したいという申し出を複数いただき、4月22日(金)~5月8日(日)福島市のまちなか交流施設「ふくふる」にて福島市主催で写真展を開催しました。続いて、5月23日(月)〜5月30日(月)および6月10日(金)〜6月30日(木)に郡山市役所でも開催されます。学内では、福島大学付属図書館にて5月23日(月)から写真展を開催しています。こうした活動により、ウクライナへの支援がさらに継続・拡大することを願っています。

写真展@ヒロヤギャラリーの様子 写真展@ヒロヤギャラリーの様子
難波所長講演の様子 難波所長講演の様子
コルスンスキー大使から難波所長への手紙 コルスンスキー大使から難波所長への手紙
コルスンスキー大使から難波所長への手紙
難波所長からコルスンスキー大使へのお礼状 難波所長からコルスンスキー大使へのお礼状
難波所長からコルスンスキー大使へのお礼状

令和4年6月7日(火) IER特別セミナー (オンライン)を開催しました。<ゲラスキン博士>

令和4年5月24日(火) IER特別セミナー (オンライン)を開催しました。<ジョンソン博士>

IERの研究者による英文学術書が出版されました。

令和4年5月17日(火) IER特別セミナー (オンライン)を開催しました。<ホーレマンス博士>

令和4年4月13日 駐日ポーランド大使が来所しました。

令和4年4月13日 脇山義史准教授が研究成果を発表しました。

令和4年4月4日 環境放射能学専攻に新入生を迎えました。