IER特別セミナー(IAEA講義)をIERで開催しました(2025年12月8日)

日時2025年12月8日(月)13:30~15:10
場所環境放射能研究所本棟6F大会議室 / オンライン(Zoom)
日英同時通訳付き。Zoomは会場の音声のみ。
講義プログラム
1. この講義の経緯と趣旨について
   ・ミロスラフ・ピナック氏(Head of Radiation Safety and Monitoring Section, IAEA)
2. 「放射線安全に関する情報発信」
   ・ジョー・バージ氏(Associate Stakeholder Involvement Officer, IAEA)
   ・サラ・ムーア氏(Administrative Associate, IAEA)
3. 「使用済み燃料の管理、処分、特に地層処分」
   ・ジェラルド・ブルーノ氏(Head of the Radioactive Waste & Spent Fuel Management, IAEA)
   ・フランソワ・ベスニュ氏(Expert, IAEA)
4. 質疑応答
参加人数37名(福島大学教員、大学院生、学類生、行政関係者)
司会進行桑原氏(福島県 環境創造センター)

令和7年12月8日(月)、国際原子力機関(IAEA)の専門家であるミロスラフ・ピナック氏、ジョー・バージ氏、サラ・ムーア氏、ジェラルド・ブルーノ氏、フランソワ・ベスニュ氏を講師としてお迎えし、IER特別セミナー(IAEA講義)を開催しました。当日はオンライン聴講を含め、行政関係者、研究者、大学院・学類生ら37名が参加しました。本セミナーは、IAEAと福島県との協定に基づいてIAEAの専門家が県内大学等で行う一連の講義のひとつとして、IERで行われました。

講義に先立ち当研究所の難波所長が挨拶をした後、IAEAのミロスラフ・ピナック放射線安全・監視課⾧から本講義の開催経緯と趣旨を含むご挨拶と講師紹介をいただきました。

最初の講義では、バージ氏とムーア氏が放射性廃棄物の安全性について一般の人々に効果的に伝えるための方法を紹介しました。両氏は、放射性廃棄物に関するあいまいな情報が、不安、好奇心、混乱といったさまざまな感情的反応を引き起こしうることを示し、情報の不明確さや情報提供の遅れなどにより、人々の信頼を損なう可能性がある点を強調しました。コミュニケーションにおける主な課題としては、人々が科学的根拠よりも見えない放射線への恐怖といった感情に依存しがちであること、専門家が専門用語を多用しがちであることなどが挙げられます。

両氏は、専門的な詳しい情報を伝えるよりも、平易な言葉を使用して安全性や健康、環境への実際的な影響に焦点を当てることを強調しました。また、IAEAで開発したRadiation Safety Navigator(放射線安全ナビゲーター)というオンラインツールを紹介し、すぐに使える説明文、コミュニケーションのヒント、インフォグラフィックスのような視覚的素材が提供されていると説明しました。さらに、対話型の演習を通じて、複雑な概念をわかりやすいメッセージに変換する方法を提示し、専門家が透明性の高いコミュニケーションを実践することで、一般の人々の信頼を築くためのツールとして活用できることを示しました。

続いて、ブルーノ氏とベスニュ氏の講義では、放射性廃棄物は「使い道のなくなった放射性物質」を意味すると説明しました。IAEAでは放射性廃棄物を規制免除廃棄物から高レベル廃棄物まで6つのカテゴリに分類しており、それぞれに特定の処分方法を求めています。処分における安全機能の中心となるのは、生物圏からの隔離と有害物質の封じ込めです。処分施設は、低レベル廃棄物用の簡素な地表施設から、高放射線量で半減期の長い高レベル廃棄物用の深地層処分場まで多岐にわたります。安全確保のための重要な原則は、一つのバリアが機能しなくても他のバリアによって補償される多重バリアという概念です。ブルーノ氏は、長期的な安全性を実証するには、施設のさまざまな特性を考慮に入れ、数十万年にわたる通常時および事故時のシナリオの詳細なモデル化が必要になると述べました。

講義の後には、研究者や学生から活発な質問がありました。たとえば、放射性廃棄物に関するもの以外にも、一般の人々とのコミュニケーションをサポートするようなツールはあるのかどうかや、放射性廃棄物の処分場として適した場所が世界的に見ても少ない状況で、放射性廃棄物を自国で保管できない場合についてのIAEAの見解などが話題となりました。

会場の様子
バージ氏とムーア氏による講義
バージ氏とムーア氏による講義
ブルーノ氏による講義
質疑応答の様子
質疑応答の様子