令和7年2月17日、第11回IERセミナーを開催しました <大学院生、鳥居特任教授、ヨシェンコ教授>

日時2025年2月17日(月)13:30~15:00
場所環境放射能研究所本棟6F大会議室/オンライン(Zoom)
発表者星笙太(共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻 博士前期課程1年)
鳥居建男 特任教授
ヴァシル・ヨシェンコ 教授
(発表順)
演題請戸川水系におけるヤマメの食性と137Cs濃度の季節変化(星)
群ロボットを用いた多視点からの放射線イメージング技術(鳥居)
IER森林研究の進展(ヨシェンコ)
参加人数16名

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

2月3日(月)に開催した令和6年度第11回IERセミナーでは、星笙太さん(博士前期課程1年)、鳥居建男特任教授、ヴァシル・ヨシェンコ教授が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら16名が参加しました。

和田研究室の星さんは、2011年の福島第一原子力発電所事故が請戸川のヤマメに与えた影響について発表しました。本研究では、2023年6月から2024年6月にかけて、ヤマメの食性および137Cs濃度の季節変化について調査しました。小出谷川では、ヤマメは夏にアリを、秋にはハエの幼虫を主に捕食していました。一方、大柿下では、夏と秋の両方で主にアリを捕食していました。137Cs濃度は秋に4~6倍に上昇し、特に1歳個体でその傾向が顕著でした。これらの結果は、季節的な食性の変化がヤマメの137Cs濃度に大きく影響を与えることを示唆しています。

鳥居特任教授は、放射線源の空間的な広がりをイメージングする研究として、群知能技術を活用し、複数の単純なロボットが動き回って放射線源分布を推定する手法を研究しています。セミナーでは、建物内を移動する複数の放射線検出器搭載ロボットが、相互に情報を交換しながら放射線源分布のマップを作成するシステムについて発表しました。シミュレーションおよび実験を通じて、現在の研究成果と今後の展望を示しました。

ヨシェンコ教授は、チョルノービリと福島で行われた森林研究の最新の進展について発表しました。チョルノービリでの共同研究では、降下物から30年後の森林生態系における90Srと137Csの典型的な分布が明らかになりました。137Csは主に表土層に局在するのに対し、90Srは最大1mの深さまで移動し、森林生態系内の総量のうち最大50%が地上部の生物量に蓄積されることが分かりました。また、本研究で得られた90Srの総合的な転送係数は、IAEAの推奨値を大幅に上回ることが報告されました。さらに、ヨシェンコ教授は、日本のスギの樹幹における137CsとKの分布に関する現在進行中の研究の初期結果についても発表しました。

発表後には、質疑応答が行われました。

星さんが発表している様子
鳥居特任教授が発表している様子
ヨシェンコ教授が発表している様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子