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大学院生インタビュー

森高祥太さん

森高 祥太 もりたか しょうた さん

共生システム理工学研究科環境放射能学専攻 修士課程2年
福島県立喜多方高等学校(喜多方市)出身


福島大学共生システム理工学研究科環境放射能学専攻に入学した理由を教えてください。

インタビューに答える森高さん

 小さな頃から川遊びが好きで、川の研究をしたいと思っていました。そこで大学では、川を含む自然の中の物質の動きを研究しようと考え、福島大学共生システム理工学類に入学しました。大学3年生の前期に受講した難波先生(環境放射能研究所長:2020年~)の授業のなかで、水質分析や大腸菌の計数などの土壌浄化学実験が面白かったのが決め手となり、3年生後期からは難波研究室に所属しました。調査や研究機関への訪問、シンポジウムへの参加といった研究活動を通して福島の放射性物質の問題について考えるようになり、卒業論文では河川水の放射性セシウムの動態を研究しました。この研究では自然中の物質の動きの解明と福島の放射能問題の両方について取り組むことができるため、大学で終わるのではなく大学院に進学しようと決めました。調査に行ったり分析をしたりすることが楽しく自分の性に合っていたのです。


研究内容と、その研究の面白さについて教えてください。

分析機器を操作。

 卒業論文の内容を発展させる形で、阿武隈川を対象として引き続き河川水の放射性セシウムの動態について研究をしています。河川水の放射性セシウムは原発事故から長期的に減少していますが、季節により増加と減少を繰り返しています。いくつかの自然現象や人為的な要因が複雑に絡み合い、こうした結果が表れているのですが、分析結果からどのような現象が起こったのか、また濃度変化の要因として考えられる現象からどのような分析をすればよいのかといったことを考えることがこの研究の面白さです。福島県は面積の約7割が森林ですが、森林は除染がされていない所が多く、樹木の落葉が河川水の放射性セシウム濃度にも影響を及ぼしているという説もあります。そういった因果関係を明らかにするため、先生方にアドバイスをいただきながら調査分析を進めています。


大学院生としてどのような毎日を過ごしていますか。

阿武隈川の採水調査

 大学院に進んでからは研究目標がより明確になり、先生方のサポートもあり充実していると実感しています。大学院では扱える分析機器も増え、楽しみも増えました。私の研究では週に一回、阿武隈川の調査ポイントで水を採取する調査をしているので、一週間ごとに区切りを設けて、週ごとの小さな目標を達成できるよう、メリハリをつけるようにしています。調査の日は朝から夕方まで調査をし、調査のない日は複数の分析機器を使って様々な分析を行い、週末に一週間の成果をまとめています。

研究室で和田教授に指導を受ける

 一見単調にも思えますが、そのなかで担当教員の先生や研究室の学類生の調査と実験の手伝いが少しずつ加わり、刺激的な日々を過ごしています。調査でいろいろな場所へ行けるのも楽しいですし、毎週見ている川の水質の小さな変化に気づき、自分の目で見たことと後の分析結果から得るデータがリンクしているということを発見するのも楽しい瞬間です。IERセミナーや学会発表などで自分の研究を発表する機会もあり、英語での発表やその準備は大変ですが、他の方に自分の研究成果を聴いてもらえるのは良い機会になります。


大学院での経験を将来どのように活かしたいと思いますか。

 来年度から原子力研究開発の仕事に就く予定です。現在福島も抱える廃炉問題に貢献したいという気持ちと、大学院で放射能測定や環境測定のため様々な分析機器の使い方を習得したことを武器に、今後も様々な分析機器を扱っていきたいと考えた末に選びました。大学院で学んだ分析機器の扱いを習得する際のノウハウを活かして新たな機器も扱えるようになると考えています。

 また仕事以外の場面でも、環境放射能について誤解を持つ人たちに正しい知識を身に付けてもらえるように、福島の環境放射能や食の安全・美味しさなどについて説明を続けていこうと考えています。地元の友人であっても県内の汚染状況をよく知らないままに環境中の放射能を恐れていたり、調査で出会った方の中にはいまだに風評被害に苦しんでいる食品生産者の方もいたりしたからです。


最後に、受験を考えている方に、環境放射能学専攻の魅力を伝えてください。

 環境放射能学専攻では環境中の放射性物質を軸に様々な分野の視点で研究を進めています。放射性物質の動きを捉えるためには、放射性物質が含まれる生物やその周辺環境への理解も必要です。私の研究では放射性セシウム濃度の季節変動の要因を解明するために森林から河川への物質の供給を捉えることを目標にしています。

 実は放射性物質は、物質の動きを捉えるためにはとても便利なもので、独自のアプローチで環境への理解を深めることができることは本専攻の魅力だと思います。放射性物質の調査がきっかけとなり魚の新たな生態がわかってくるなど、面白い発見にもつながることがあります。様々な専門分野を横断できる実習も魅力です。修士1年の実習では、森林の放射能観測では山木屋(川俣町)、ため池の底泥採取では双葉町と大熊町、魚の観測では檜原湖(裏磐梯)へそれぞれ出かけ、IERの各専門分野の先生方の専門知識・豆知識に触れることができ、とても興味深かったです。生物の代謝や物質の循環などの理解に興味がある方にも環境放射能学専攻を知ってもらいたいです。


内容は2020年7月インタビュー時のものです。