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IER活動記

令和2年度

令和2年8月31日(月) 今年度第2回IERセミナーを開催しました。

日 時 令和2年8月31日(月)14:00~16:00
発表者 脇山義史 講師
マーク ジェレズニヤク 特任教授
演題 1) Dynamics of 137Cs in the Abukuma river catchment due to the typhoon Hagibis.(脇山)

2) Distributed modeling of radionuclide washing out from the watersheds in solute and with suspended sediments: case studies Abukuma River, Fukushima Prefecture and Pripyat Dnieper river system, Ukraine (ジェレズニヤク)
                          

 環境放射能研究所(IER)では、所属教員同士の交流、研究内容の研鑽を目的に、所属教員による研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。今年度2回目となる今回のIERセミナーは、新型コロナウイルス感染防止に引き続き十分に留意しながら、27名の参加(ウェブ聴講者含む)のもと行われました。

 初めに水文地形学が専門の脇山講師が、昨年の台風19号通過にともなう福島県阿武隈川集水域におけるセシウム137の動態について発表をしました。昨年10月に日本列島を通過した台風19号は河川の氾濫など各地に甚大な被害をもたらしました。脇山講師は、この台風による出水期間中に阿武隈川下流の地点で河川水の採水・分析を行い、流域全体から流出したセシウム137の量を推定しました。また、2018年10月と2019年10~11月に流域内6か所の氾濫原で行ったセシウム137の深度分布調査の結果からは、台風19号によって氾濫原上のセシウム137の空間分布が変化したことが示唆されました。

 次の発表者ジェレズニヤク特任教授は、放射能水文学が専門でチェルノブイリ事故や福島第一原子力発電所事故後の地表水の放射性核種輸送モデルなどを主に研究しています。セミナーでは、河川流域から河川水に溶けた状態で、あるいは土砂堆積物に付着して流出する放射性核種の分布モデルについて、福島県の阿武隈川とウクライナのドニエプル川の事例研究にもとづいて発表しました。二人の発表後には、参加したIERの研究者から質問やコメントが寄せられ意見交換が行われました。



脇山講師 ジェレズニヤク特任教授
発表する脇山講師(左)とジェレズニヤク特任教授(右)

ゲルマニウム半導体検出器について説明を受ける生徒の皆さん 塚田教授、小山教授と生徒の皆さんで記念撮影
IERセミナーにて質疑応答の様子。IER研究者による意見交換が行われた。(左・右)

令和2年8月3日(月) 福島県立安積高等学校の皆さんが来所しました。

 福島県立安積高等学校1年生5名の皆さんが見学に訪れました。
 安積高校は文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクールに指定されており、取り組みのひとつである「地域創生」をテーマにした授業の一環として、放射線の農作物への影響や風評被害への対策について生徒さん自身より問合せをいただいたのが今回の見学のきっかけとなりました。

 生徒の皆さんの希望にお答えし、当研究所の塚田祥文教授が放射性物質の農作物への影響について、食農学類の小山良太教授が風評被害への取り組みについて講義をされました。

 土壌から稲への放射性セシウムの移行メカニズムなどについて説明した塚田教授の講義の中には、かなり専門的な内容も含まれていましたが、皆さん真剣な表情でメモをとっている様子が印象的でした。また小山教授は震災から9年以上が経過し、現在の福島県産和牛や米の低価格の原因が単なる風評被害にとどまらず、市場の構造的な問題となっていることについてお話をされました。

 最後に当研究所が保有するゲルマニウム半導体検出器を見学いただきました。様々な試料がどのように分析されるのか、イメージを持っていただくことができたようです。

 小学校入学直前に東日本大震災を経験された生徒の皆さんは当時の事をあまり覚えていないということですが、今回の見学が地元・福島の課題に目を向けると同時に、科学的な視点も身に付けるきっかけとなれば幸いです。



塚田教授 小山教授による講義
塚田教授(左)と小山教授(右)による講義 

ゲルマニウム半導体検出器について説明を受ける生徒の皆さん 塚田教授、小山教授と生徒の皆さんで記念撮影
ゲルマニウム半導体検出器について説明を受ける生徒の皆さん(左)
塚田教授、小山教授と生徒の皆さんで記念撮影(右)

令和2年7月27日(月) 今年度第1回IERセミナーを開催しました。

日 時 令和2年7月27日(月)14:00~16:00
発表者 難波謙二 所長
五十嵐康記 特任助教
演題 1) Estimation of catchment scale water balance at Chernobyl in Ukraine using long-term field observations and model simulations.(五十嵐)

2) Strengthening of the environmental radiation control and legislative basis in Ukraine for the environmental remediation of radioactively contaminated sites.
(難波)
                          

 環境放射能研究所(IER)では、所属教員による研究成果報告を「IERセミナー」として定期的に行っています。これは所属教員同士の交流、研究内容の研鑽を目的に開催するもので、今年度1回目となる今回のIERセミナーは、IERが2017年から他研究機関と共同で、ウクライナで展開しているSATREPSチェルノブイリプロジェクト(詳細はこちらから)に関連して、本プロジェクト代表研究者の難波所長および、プロジェクト参加研究者の五十嵐特任助教が発表を行いました。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で遅れてのスタートを切った今年度初回のセミナーは、充分な換気とマスク着用、参加者間の距離を保つなど、感染防止のための配慮のもと行われ、33名の参加(ウェブでの聴講者を含む)がありました。

 森林水文学が専門の五十嵐特任助教は、河川流量の長期観測データとモデルシミュレーションを活用したウクライナ・チェルノブイリにおける集水域の水収支評価について発表しました。五十嵐特任助教はこれまでのチェルノブイリプロジェクト研究で、チェルノブイリ規制区域の河川中のストロンチウム90(Sr-90)濃度の長期変化のモデル化に成功。Sr-90は河川流量と明瞭な関係があることを明らかにし、7月1日のプレスリリースでその研究成果を発表しました。今回の発表では、Sr-90を含む放射性物質の流出量の評価に大きく寄与する河川流量を正確に推定し、今後、気候変動などの影響を受け将来的にどのような変化が想定されるかを示しました。

 続いて、難波所長がSATREPSチェルノブイリプロジェクトの中間報告として発表を行いました。IER所属教員のほとんどが参加し5年間にわたり実施される本プロジェクトは折り返し地点を過ぎたところです。現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響でこれまでのような現地調査が困難になっていますが、これまでに構築したウクライナ研究機関との協力体制により研究活動を進めています。広範囲に及ぶプロジェクトの研究対象を網羅した発表に参加者は興味深く聞き入っていました。



発表を行う五十嵐特任助教 難波所長
発表を行う五十嵐特任助教(左)と難波所長(右)

IERセミナーの様子 質疑応答の様子
IERセミナーの様子(左) 質疑応答の様子(右)