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IER活動記

令和2年度

令和2年10月26日(月) 第6回IERセミナーを開催しました。

日 時 令和2年10月26日(月)14:00~14:45
発表者 塚田 祥文 教授
演題 Transfer of 137Cs and 90Sr from soil to potato: Interpretation on linking from global fallout in Aomori to accidental released in Chernobyl and Fukushima.
(土壌からじゃがいもへのセシウム137およびストロンチウム90の移行:青森のグローバルフォールアウトからチェルノブイリ・福島の原発事故由来の放射性物質までの関連性の解釈)

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究内容の研鑽を目的に、所属研究者による研究成果報告を「IERセミナー」として定期的に行っています。第6回IERセミナーでは、環境放射生態学が専門で陸圏環境での放射性核種の動態を研究する塚田 祥文教授が、ウクライナのチェルノブイリにおける土壌からじゃがいもへのセシウム137(137Cs)とストロンチウム90(90Sr)の移行に関する研究成果を発表しました。研究者や大学院生ら21名(ウェブ聴講者含む)が参加しました。

チェルノブイリのじゃがいも試験圃場 チェルノブイリのじゃがいも試験圃場

ウクライナではじゃがいもが主食のひとつですが、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故から30年以上が経過した今でも、未だに原発から30km圏内の立入禁止区域では、活動が厳しく規制され農業の再開には至っていません。

2019年のSATREPSプロジェクトにおいて、塚田教授はウクライナの研究者と協力してチェルノブイリ立入禁止区域の4地点において試験圃場を整備し、土壌からじゃがいもへの137Cs および90Sr の移行について調査しました。

土壌の放射性核種が大気圏核実験由来*の青森や原発事故由来の福島での調査結果と比較した結果、放射性核種が土壌からじゃがいもへ移行する割合は、土壌に含まれるカリウムやカルシウム濃度に左右されることや地質の違いによることなどがわかりました。塚田教授は、そうした移行メカニズムの解明により、 大気圏核実験由来であっても事故由来であってもじゃがいも中の放射能濃度を高精度に、簡易に求めることが可能な方法を示しました。

土壌から作物への放射性核種の移行は、普段の食生活や食の安全に関わる身近な課題ともいえます。今後さらなる研究成果が期待されています。

注)環境中に存在する放射性核種のなかには、主に1950~60年代の大気圏核実験により放出され地球全域に降下したものがあり、グローバルフォールアウト(地球規模の放射性降下物)と呼ばれています。

塚田教授
IERセミナーで研究成果を報告する塚田教授

令和2年10月8日(木) 福島県立福島高等学校の皆さんが来学しました。

福島県立福島高等学校1年生40名の皆さんと先生方2名が来学しました。
福島高等学校は文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクールに指定されており、そのプログラムの一環として、研究に触れること、大学を知ることなどを目的に本学を訪れました。

はじめに、福島大学や共生システム理工学類の概要、研究紹介などの講義がありました。続いて、IERから難波 謙二所長、アレクセイ コノプリョフ特任教授、石庭 寛子特任助教の3名の研究者が、それぞれ15分ほどの講話を通してIERでの研究内容を紹介しました。研究者としての歩みや研究対象の野生動物、フィールドワークの話など、それぞれに印象的な内容が語られ、高校生の皆さんは一様に真剣なまなざしでメモをとりながら耳を傾けていました。

その後は、二つのグループに分かれてIER分析棟に移動し、分析装置の設置された実験室などを見学していただきました。分析棟には、試料から放射線を検出するゲルマニウム半導体検出器や、全種類の元素の質量分析が可能なICP質量分析装置などの大型機器が多数設置されており、IER研究者による分析機器についての説明に興味深そうに聞き入っていました。また、研究の裏話に笑みがこぼれる場面もありました。

高校生の皆さんは、それぞれに進路や将来への目標をお持ちのことと思います。今回の見学が、福島大学での学びに関心を深めていただくきっかけになればと願っています。

コノプリョフ特任教授 石庭特任助教
コノプリョフ特任教授(左)、石庭特任助教(右)らの研究紹介を熱心に聞き入る高校生の皆さん

参加者 質疑応答
高田特任准教授(左)や難波所長(右)らがIER分析棟を案内しました

令和2年10月3日(土)、4日(日) 「環境放射能学セミナー in 伝承館 ~環境影響や廃炉技術の最先端から将来の復興知を育む~」を開催しました。

日 時 令和2年10月3日(土)、10月4日(日)
場 所 東日本大震災・原子力災害伝承館 (福島県双葉町)

福島大学環境放射能研究所(IER)は、9月20日に福島県双葉町に開館した東日本大震災・原子力災害伝承館(以下、伝承館)において、福島県内の学生を対象に「環境放射能学セミナーin 伝承館~環境影響や廃炉技術の最先端から将来の復興知を育む~」を開催しました。本セミナーは、⼤学等の復興知を活⽤した福島イノベーション・コースト構想促進事業(「復興知」事業*)の令和2年度採択事業において、IERが事業主体の長崎大学と連携して人材育成プログラムの一環として行うものです。

伝承館館長 高村教授 参加者に語りかける伝承館館長 高村昇教授

セミナーには、環境放射能学や廃炉技術を専攻する、または学びたいと考えている福島大学および福島工業高等専門学校の24名の学生が参加しました。伝承館館長 高村 昇教授(IER副所長、長崎大学福島未来創造支援研究センター センター長)は初日の開会のあいさつで、「原発事故という不幸な出来事を糧にして伝承して学ぶことが次世代への備えとなる」と伝承館設立の意義について説明するとともに「事故後10年間の福島での環境放射能という分野の取り組みについてセミナーを通して学んでほしい」と参加者に呼びかけました。

中間貯蔵施設見学 中間貯蔵施設の見学

2日間のプログラムでは、IERに所属する8名の研究者が最新の研究成果を紹介したほか、伝承館展示や中間貯蔵施設および復興再生事業が進む双葉駅周辺の見学、学生による研究発表やグループディスカッションなどの活動を行いました。学生たちは、各分野の研究者の話に真剣に耳を傾けて最先端の研究について学んだほか、各施設見学では、担当者の方々から直接話を聞き、原発事故の記憶と現実に向き合いました。セミナー終盤のグループディスカッションでは、一連の発表や施設見学から印象に残ったキーワードを学生全員が挙げ、感じたことや問題意識を共有しました。

グループディスカッション グループディスカッションの様子

参加した学生からは、「伝承館展示見学から、津波や原発事故の被災者の辛い経験が生々しく伝わってきた」「被災者の現状や問題を理解することができた」「同じ学生という立場の自由な意見を多く聞くことができた」「これからのモチベーションを高めることができた」といった感想が挙げられ、それぞれの気づきに考えを巡らせている様子でした。

今回のセミナーでは、福島の環境放射能研究や被災地の復興について、学生の方々により関心を広げていただくことができたと同時に、研究所としても学生の率直な声を直接聞くことができた貴重な機会となりました。IERでは、今後も研究成果の発表や学生との交流の機会を創出し、福島県や浜通り地域の復興に資する活動を継続して参りたいと考えています。

(*注)「復興知」事業について
(公財)福島イノベーション・コースト構想推進機構により、福島県復興に資する知を浜通り地域等に誘導・集積するため、浜通り市町村等において組織的に教育研究活動を行う大学等を支援する学術研究活動支援事業(「復興知」事業)が実施されています。

集合写真
参加者集合写真
研究者による研究紹介タイトル 発表者
放射線被ばくと甲状腺 ~フィールド研究への誘い(いざない)~ 東日本大震災・原子力災害伝承館 館長
福島大学 環境放射能研究所 副所長
長崎大学 福島未来創造支援研究センター センター長
高村 昇
福島大学での環境放射能研究 福島大学 環境放射能研究所 所長
福島大学 共生システム理工学類 教授
難波 謙二
福島第一原子力発電所事故後の遠隔モニタリングと廃炉に向けた放射線の“可視化”技術 福島大学 環境放射能研究所 特任教授
鳥居 建男
Selective removal of radionuclides from liquid waste
(廃液からの放射性核種の除去)
福島大学 環境放射能研究所 准教授
イスマイル ラハマン
福島第一原発の汚染水分析のために地元化学者が挑んだ9年間の奮闘と廃炉技術が切り開く新しい未来へ  福島大学 環境放射能研究所
福島大学 共生システム理工学類 教授
高貝 慶隆
海と川の魚は語る ~双葉町の調査から分かってきたこと~ 福島大学 環境放射能研究所 准教授
和田 敏裕
海水の放射能の推移と今後の復興に向けて 福島大学 環境放射能研究所 特任准教授
高田 兵衛
アカネズミのセシウム汚染と新たな技術を用いた影響評価の試み 福島大学 環境放射能研究所 特任助教
石庭 寛子

令和2年10月2日(金) IER特別セミナーを開催しました。

日 時 令和2年10月2日(金)14:00~15:10
発表者 百島 則幸 氏(九州大学名誉教授、(一財)九州環境管理協会理事長)
演題 環境トリチウムについて

環境放射能研究所(IER)では、外部から講師を招いたIER特別セミナーを不定期に開催しています。今年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響でこれまで開催することができませんでしたが、10月2日に初めてのIER特別セミナーを開催することができました。サーモカメラによる体温計測、会場の机や椅子の消毒、参加者のマスク着用、手指の消毒等の感染防止対策の上、実施されました。

今回のセミナーは(一社)福島県環境測定放射能計測協会に共催いただき、講演者として九州大学名誉教授で(一財)九州環境管理協会理事長でもいらっしゃる百島則幸先生をお迎えしました。「環境トリチウムについて」をテーマとしたセミナーには、38名が会場に参加し、オンラインでも15名の参加がありました。

講演は70分という短い時間ではありましたが、講演の内容はトリチウムの生成メカニズム、環境動態、原子力発電所からの放出量、環境中の濃度と多岐に渡り、福島第一原発のトリチウム水が問題となっている中、非常に参考になる事が多く、参加者は皆熱心に傾聴していました。


百島則幸教授
講演する百島則幸先生

令和2年9月30日(水) 第5回IERセミナーを開催しました。

日 時 令和2年9月30日(水)14:00~16:00

第5回IERセミナーでは、今年度に修士課程を修了予定の院生6名(福島大学大学院共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻修士課程2年)が、それぞれの研究課題の進捗について中間報告を行いました。発表は英語で行われ、学生や教員ら28名が参加しました。

発表後には、指導教員のほか、他分野の研究者からも意見やアドバイスが多く出され、院生の皆さんは質疑応答にも丁寧に応じていました。発表を行った修士課程2年の皆さんは、IERに環境放射能学専攻修士課程が開設された平成31年4月に入学した第一期生です。修士課程修了を控え、それぞれの研究の集大成に向けて頑張ってほしいと思います。

演題 1) Radiocesium concentrations in experimentally cultured carp, other fish, and sediments of an irrigation pond in Koriyama City (薄 実咲)

2) Studies on the effective dose for public based on air dose rate (遠藤 佑哉)

3) Detection of 60Co released from the 2011 Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident (沖澤 悠輔)

4) Accumlation of radiocaesium in bryophytes (大槻 知恵子)

5) Temporal variation in 137Cs in the Niida river catchment during rainstorm events (新井田 拓也)

6) Evaluation of vegetation index in Abukuma river basin for estimation of soil erosion (イデア ロア)

第5回IERセミナー
修士課程2年生による研究課題の中間報告が行われた

令和2年9月28日(月) 第4回IERセミナーを開催しました。

日 時 令和2年9月28日(月)14:00~14:30
発表者 高田 兵衛 特任准教授 
演題 Suspended particle−water interactions increase dissolved 137Cs activities in the nearshore seawater during Typhoon Hagibis.
(台風時の土砂流出による福島沿岸域の海水中セシウム137濃度上昇:粒子からの溶脱作用について)

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究内容の研鑽を目的に、所属研究者による研究成果報告を「IERセミナー」として定期的に行っています。

第4回IERセミナーでは、研究者や大学院生ら25名の参加のもと、海洋化学・地球化学が専門の高田兵衛特任准教授が「台風時の土砂流出による福島沿岸域の海水中セシウム137濃度上昇:粒子からの溶脱作用について」と題して発表を行いました。

福島県沿岸部では、海水中のセシウム137濃度が事故前よりも高い値を維持しています。 高田特任准教授は、この状況を説明する要因の一つとして河川からの影響を考えました。そこで、令和元年6月から10月に採取された福島県沿岸部の海水を調べたところ、令和元年10月の台風19号通過後の溶存態セシウム137濃度が通過前に比べて上昇していることが分かりました。今回の海水サンプルの分析結果と過去の室内実験との解析により、これは台風通過時に多量の土砂に含まれるセシウム137が海水に溶けだしたことが原因であると考えられました。 さらに、モデルによる検証においても河川からの影響を反映した結果となりました。

これらの研究成果に関して、高田特任准教授は9月2日に福島大学定例記者会見で発表を行い、新聞各紙およびNHKニュースで取り上げられるなどの反響がありました。(令和2年9月2日 プレス発表資料「令和元年10 月の台風19 号による土砂流出が福島沿岸の溶存態放射性セシウム濃度を上昇させた一因と評価」
 参加者は発表を熱心に聞き入り、質疑応答では質問やコメントが活発に交わされました。


高田特任准教授 発表の様子
研究成果を発表する高田兵衛特任准教授

参加者 質疑応答
セミナー参加者の様子(左)発表後には質問やコメントが活発に交わされた(右)

令和2年9月15日(火) 第3回IERセミナーを開催しました。

日 時 令和2年9月15日(火)14:00~16:00
発表者 森高 祥太 (共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻修士課程2年)
ドノヴァン アンダーソン (共生システム理工学研究科 共生システム理工学専攻博士課程3年)
演題 1) Seasonal fluctuation of Cs-137 concentration and water quality in Abukuma River revealed by long-term monitoring (森高)
2) The 2011 Tohoku disaster’s impact on wild boar populations within Fukushima Prefecture: Genetic and radiological contamination (アンダーソン)
                          

第3回IERセミナーでは、今年度卒業予定の大学院生が、それぞれの修士・博士論文に関する研究課題の進捗について英語でプレゼンテーションし、中間報告を行いました。セミナーには、学生や教員ら28名が参加しました。

最初に、河川水の放射性セシウムの動態について研究する森高さん(修士2年)が、8年間の長期観測データの分析結果に基づき、阿武隈川河川水のセシウム137濃度および水質の季節変化に関する研究についての中間報告を行いました。その中で、阿武隈川河川水の溶存態セシウム137濃度が夏に増加し冬に減少することや、その季節変化と水稲栽培で行う代掻きや落葉からの溶存態セシウム137の溶出との関係について研究成果を発表しました。

次に、放射線生態学、遺伝学、および放射線生物学の研究をする米国出身の国費留学生ドノヴァン アンダーソンさん(博士3年)が、2011年東日本大震災・原子力災害による福島県内のイノシシへの影響について、遺伝子および放射線研究の両側面から研究成果を発表しました。アンダーソンさんの研究では福島県内のイノシシ338頭の調査を行い、帰還困難区域におけるイノシシと飼育ブタとの交雑による遺伝子移入の問題が発生していることや、染色体異常などの放射線による影響は確認されなかったことなどの研究成果が報告されました。

質疑応答では、院生への質問、研究へのアドバイスが飛び交い、それぞれの研究の集大成に向けて有意義なセミナーとなりました。


森高さん アンダーソンさん
修士課程の森高さん(左)と博士課程のアンダーソンさん(右)がそれぞれの研究課題の進捗を報告

セミナー参加者 院生へのアドバイス
熱心に聞き入る参加者(左)発表後には質問やアドバイスが交わされた(右)


令和2年8月31日(月) 第2回IERセミナーを開催しました。

日 時 令和2年8月31日(月)14:00~16:00
発表者 脇山義史 講師
マーク ジェレズニヤク 特任教授
演題 1) Dynamics of 137Cs in the Abukuma river catchment due to the typhoon Hagibis.(脇山)

2) Distributed modeling of radionuclide washing out from the watersheds in solute and with suspended sediments: case studies Abukuma River, Fukushima Prefecture and Pripyat Dnieper river system, Ukraine (ジェレズニヤク)
                          

環境放射能研究所(IER)では、所属教員同士の交流、研究内容の研鑽を目的に、所属教員による研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。今年度2回目となる今回のIERセミナーは、新型コロナウイルス感染防止に引き続き十分に留意しながら、27名の参加(ウェブ聴講者含む)のもと行われました。

初めに水文地形学が専門の脇山講師が、昨年の台風19号通過にともなう福島県阿武隈川集水域におけるセシウム137の動態について発表をしました。昨年10月に日本列島を通過した台風19号は河川の氾濫など各地に甚大な被害をもたらしました。脇山講師は、この台風による出水期間中に阿武隈川下流の地点で河川水の採水・分析を行い、流域全体から流出したセシウム137の量を推定しました。また、2018年10月と2019年10~11月に流域内6か所の氾濫原で行ったセシウム137の深度分布調査の結果からは、台風19号によって氾濫原上のセシウム137の空間分布が変化したことが示唆されました。

次の発表者ジェレズニヤク特任教授は、放射能水文学が専門でチェルノブイリ事故や福島第一原子力発電所事故後の地表水の放射性核種輸送モデルなどを主に研究しています。セミナーでは、河川流域から河川水に溶けた状態で、あるいは土砂堆積物に付着して流出する放射性核種の分布モデルについて、福島県の阿武隈川とウクライナのドニエプル川の事例研究にもとづいて発表しました。二人の発表後には、参加したIERの研究者から質問やコメントが寄せられ意見交換が行われました。


脇山講師 ジェレズニヤク特任教授
発表する脇山講師(左)とジェレズニヤク特任教授(右)

ゲルマニウム半導体検出器について説明を受ける生徒の皆さん 塚田教授、小山教授と生徒の皆さんで記念撮影
IERセミナーにて質疑応答の様子。IER研究者による意見交換が行われた(左・右)


令和2年8月3日(月) 福島県立安積高等学校の皆さんが来所しました。

福島県立安積高等学校1年生5名の皆さんが見学に訪れました。
安積高校は文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクールに指定されており、取り組みのひとつである「地域創生」をテーマにした授業の一環として、放射線の農作物への影響や風評被害への対策について生徒さん自身より問合せをいただいたのが今回の見学のきっかけとなりました。

生徒の皆さんの希望にお答えし、当研究所の塚田祥文教授が放射性物質の農作物への影響について、食農学類の小山良太教授が風評被害への取り組みについて講義をされました。

土壌から稲への放射性セシウムの移行メカニズムなどについて説明した塚田教授の講義の中には、かなり専門的な内容も含まれていましたが、皆さん真剣な表情でメモをとっている様子が印象的でした。また小山教授は震災から9年以上が経過し、現在の福島県産和牛や米の低価格の原因が単なる風評被害にとどまらず、市場の構造的な問題となっていることについてお話をされました。

最後に当研究所が保有するゲルマニウム半導体検出器を見学いただきました。様々な試料がどのように分析されるのか、イメージを持っていただくことができたようです。

小学校入学直前に東日本大震災を経験された生徒の皆さんは当時の事をあまり覚えていないということですが、今回の見学が地元・福島の課題に目を向けると同時に、科学的な視点も身に付けるきっかけとなれば幸いです。


塚田教授 小山教授による講義
塚田教授(左)と小山教授(右)による講義 

ゲルマニウム半導体検出器について説明を受ける生徒の皆さん 塚田教授、小山教授と生徒の皆さんで記念撮影
ゲルマニウム半導体検出器について説明を受ける生徒の皆さん(左)
塚田教授、小山教授と生徒の皆さんで記念撮影(右)


令和2年7月27日(月) 令和2年度第1回IERセミナーを開催しました。

日 時 令和2年7月27日(月)14:00~16:00
発表者 難波謙二 所長
五十嵐康記 特任助教
演題 1) Estimation of catchment scale water balance at Chernobyl in Ukraine using long-term field observations and model simulations.(五十嵐)

2) Strengthening of the environmental radiation control and legislative basis in Ukraine for the environmental remediation of radioactively contaminated sites.
(難波)
                          

環境放射能研究所(IER)では、所属教員による研究成果報告を「IERセミナー」として定期的に行っています。これは所属教員同士の交流、研究内容の研鑽を目的に開催するもので、今年度1回目となる今回のIERセミナーは、IERが2017年から他研究機関と共同で、ウクライナで展開しているSATREPSチェルノブイリプロジェクト(詳細はこちらから)に関連して、本プロジェクト代表研究者の難波所長および、プロジェクト参加研究者の五十嵐特任助教が発表を行いました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で遅れてのスタートを切った今年度初回のセミナーは、充分な換気とマスク着用、参加者間の距離を保つなど、感染防止のための配慮のもと行われ、33名の参加(ウェブでの聴講者を含む)がありました。

森林水文学が専門の五十嵐特任助教は、河川流量の長期観測データとモデルシミュレーションを活用したウクライナ・チェルノブイリにおける集水域の水収支評価について発表しました。五十嵐特任助教はこれまでのチェルノブイリプロジェクト研究で、チェルノブイリ規制区域の河川中のストロンチウム90(Sr-90)濃度の長期変化のモデル化に成功。Sr-90は河川流量と明瞭な関係があることを明らかにし、7月1日のプレスリリースでその研究成果を発表しました。今回の発表では、Sr-90を含む放射性物質の流出量の評価に大きく寄与する河川流量を正確に推定し、今後、気候変動などの影響を受け将来的にどのような変化が想定されるかを示しました。

続いて、難波所長がSATREPSチェルノブイリプロジェクトの中間報告として発表を行いました。IER所属教員のほとんどが参加し5年間にわたり実施される本プロジェクトは折り返し地点を過ぎたところです。現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響でこれまでのような現地調査が困難になっていますが、これまでに構築したウクライナ研究機関との協力体制により研究活動を進めています。広範囲に及ぶプロジェクトの研究対象を網羅した発表に参加者は興味深く聞き入っていました。



発表を行う五十嵐特任助教 難波所長
発表を行う五十嵐特任助教(左)と難波所長(右)

IERセミナーの様子 質疑応答の様子
IERセミナーの様子(左) 質疑応答の様子(右)