もうすぐご帰国の予定ですが、今後、どのように福島と関わっていかれる予定ですか?
私は、1年に2ヵ月間だけ福島に来て研究するというサイクルで3年にわたって福島と関わってきました。本務はロシアのカザン大学とモスクワ大学であり、現在、ロシア政府の予算による大型科学プロジェクトのリーダーを務めています。そのほかにも、ロシア国内のプロジェクトや国際的なプロジェクトに関わっており、博士課程の学生数人の指導教官でもあります。帰国後ももちろん環境放射能研究所とは協力関係を継続していきます。福島で収集したデータやサンプルの分析もまだ残っていますし、研究グループとして福島での研究の成果を論文として発表していくことも考えています。また日露間の共同研究プロジェクトもありますので、そういったプロジェクトに応募してまた福島と関わる可能性もあると思います。
最後に、日本や福島についてどんな印象を持たれましたか?
私の友人でモスクワ大学に勤める科学者が10年ほど前、京都に1年間滞在し、そのときの印象を1冊の本にまとめました。彼は、日本の文化や伝統、自然、人々のことをとても温かな言葉で綴っています。私は、東日本大震災や福島原発事故の後という非常に大変な時期に、通算で半年程度滞在しただけですが、彼と同じ印象を持っています。ただ、彼のように文才がないので本は書けませんが、日本の人たちはとても親切で、礼儀正しく、勤勉で、それが伝統や自然を守っているのだなと思いました。春の桜は見事でしたし、公園をはじめ、個人宅の庭などもきれいに手入れされていて感心しました。温泉もたくさんあって、癒しと健康にとてもいいと思いました。コーカサス地方やパミール高原の温泉にも入ったことがありますが、日本の温泉は単なるお風呂の域を超えていると思います。ロシアへの帰国前に妻と息子が来日し、一緒に日本国内を旅行することになっています。福島とは違った日本の別の面を見られるのを楽しみにしています。
2016年4月 環境放射能研究所 会議室にてインタビュー